表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女と狐の墓参り  作者: 揺満雪花
花の街
7/29

ブランシュと天

ブランシュの回想です。

ぼくの家は花の街でも一番大きな服屋で、花の街随一のお金持ち。

そこに四人きょうだいの末っ子として生まれたぼくは、上三人が姉なのもあって、姉のお下がりばかり着ていた。

フリルのついたブラウス、ピンクのリボン、ひらひらのスカートやワンピース。ブラウスはともかく、ほかはあまり男の子がいないような服ばかり。

それでもぼくは可愛い服やぬいぐるみ、可愛い小物も大好きだった。


今なら、皆がぼくを避けた理由がわかる。『男の子がスカートを履くのは変』だなんて、当時のぼくは知らなかった。家族には似合うと褒められていたし、もともとぼくの顔は女の子みたいだって、女の子に間違われてばっかりだったし。それが男の子だって分かった途端、皆気持ち悪いってぼくのことを避けだしたんだ。


ショックだった。ぼくはただ好きな格好をしていただけなのに。

でも、避けられようが、気持ち悪いって言われようが、可愛い格好はしていたかった。


でも、あんまり見られたくは無くなって、男の子として着るのは家の中だけにした。

外ではかつらをかぶって、女の子のふりをした。

そうすれば、可愛いって褒めてくれるから。誰もぼくが男の子だって気づかない。皆、可愛い顔をして、スカートを履いた男の子なんていないと信じてるから。


でも、天さんは違った。

ぼくの家の服屋にやって来た天さんは、たまたまそこにいたぼくに気づいて、母さんに言ったんだ。


「素敵な格好の息子さんですね」

って!


その後、ぼくのところに来て沢山服を、ぼくを褒めてくれた。

その日、ぼくは母さんに作ってもらったレースとフリル、リボンが沢山ついたワンピースを着ていた。かつらはかぶっていなかったけど、男の子が到底するはずの無い格好のぼくを、躊躇無く褒めてくれて、嬉しかった。


どうしてこんなに褒めてくれるんだろう。

顔が見たいと言われて、恥ずかしくてあげられなかった顔を頑張ってあげると、綺麗な青と目が合った。

慌てて目線を下げると、次に見えたのは赤。

どうやら、口紅を塗っている見たいだった。

「口紅……」

「あぁ、これですか?素敵でしょう。父様には男が化粧をするものではないと言われましたが、似合えば何でも良いでしょう?」


ああ、強い。仲間はずれや陰口に怯えて、ありのままで外に出られないぼくとは大違いだ。

「変ですか?」

「い、いえ!とっても素敵、だと思います!」

「ふふ、ありがとうございます。……そろそろ行かなきゃ。また会えると良いですね、素敵な花の妖精さん」

そう言い残して、狐の耳と尻尾を揺らしながら去っていった。


さ、最後まで格好いいひと……!

ぼくも、ああなりたいな。あんな風に強くて、綺麗で、素敵なひとに。


「ぼくも、お化粧してみようかな……」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ