表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女と狐の墓参り  作者: 長尾いのり
大樹と三つ葉のクローバー
31/43

三精霊達との再会

「あっ、帰ってきた!」

「帰ってきたー!」

「おかえり、みんな!」


 水面に上がってすぐ、ノニエルが飛んできた。口々に戻ってきたことの喜びを叫びながら、くるくると四人の周りを飛び回る。


 呆れたような顔のリアと、ほっとしたような表情の天。探求者とメリクスーラは嬉しそうにノニエルを眺めていた。

 暫くすると、ノニエルがメリクスーラの周りに集まってくる。それぞれ目配せしながら、ユダが口を開いた。


「あのね、メリューさま」

「何だ?」

「私たち、メリューさまの病気、治せなかった」


 大きな瞳いっぱいに涙をためて、ユダは俯いた。その声には深い悲しみと悔しさが滲んでいて、聞いている方も辛くなってくる。

 メリクスーラは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに優しく微笑んだ。


「我の病気は、そう簡単に治る物でもない。お前たちは、何も悪くないぞ」

「っ、でも!リアたちはすぐに治しちゃったじゃない!私たちがいくら頑張っても無理だったのに!」


 顔を上げて泣き出すユダをあやすように撫でるメリクスーラ。ユダの言葉を聞いて、リアは呆れた表情のまま呟いた。


「私が一体どのくらいこの世にいると思ってるの。何度か見たことあるし、治療法も知ってる。知識の差だよ」


 ぽんと空中に本を浮かべて、それをウェレに渡した。そのままユダに渡さなかったのは、彼女なりの気遣いだろう。


「はい、瘴気病の資料。次はコレ見て何とかして」


 ついでと言わんばかりに鳥籠も渡して、使い方を説明した。

 その途中で、ユダ以外のふたりの顔も、みるみる泣き出しそうに歪んでいく。それを見てギョッとしたリアは、慌ててふたりの頭を撫でた。


「え、ちょっと、どうしたの?」

「り、りあ、ごめ、ごめんなさいぃ……!」

「なぁに、どうしたの。別に悪いことしてないでしょ?」

「あたしたち、その……。むりやり、あのこ、つれてっちゃった」


 ヴィーが指差したのは、事の推移を見守っていた天。指先を追って見ていたリアは、はぁ、とため息を吐いた。


「そういうの、私じゃなくてあいつに直接言いなよ」

「……あと、わたし達ね、リアに謝らなきゃいけない事があるのー」


 俯いて、小さく震えながらウェレが言う。三妖精は特に何をやらかした訳でも無さそうだし、やらかしてたとしても、リアは人命や何やらに関係がない限りは気にしない方針だった。ただ、別に良いよなんて口にはしながら、何を謝りたいのかは気になっていた。


「……あたしたち、うんめいをかきかえたの」

「え''っ」


 流石に予想していなかった告白に、リアは思わず悲鳴に近い声を上げた。


「なんで!?それ、だいぶアウトなんだけど!」

「「ごめんなさい!」」

『なになに、どうしたの?』


 声を聞きつけた探求者もやって来て、ウェレとヴィーの話をよく聞いてみる。曰く、本来天とリアは大樹までは辿り着かない運命だったらしい。しかし、このまま放って置けばこの地の世界樹の分木(メリクスーラ)は病に負けて生命を維持出来なくなってしまう。そんな時に、ふたりを見付けたのだと言った。


「リアを見付けたときね、びびっときたのー。だって、昔来てくれた時は、とってもすごい魔法を見せてくれたでしょー?」

「……そんなの見せたっけ」

「あたしもみた。それに、いっぱいほんよんでたでしょ」

「そうだっけ」

『ちょっと君、記憶が曖昧すぎるよ』


 あまりにぼんやりとした返事に、探求者はとうとう突っ込みを入れた。ビシッと言われても、リアはしょうがないと首を振るばかりだった。そんなふたりをよそに、ウェレは話を続ける。


「あの子が持ってた本、すごい物なの。世界の遺物かもー」


 あの子、と言うのは天の事だろう。あの本はそんなに凄いものなのか、とリアは軽く衝撃を受けたようだった。


「あの中に、きっと何か書いてある。そう思ったらね、わたし達、ここに呼び寄せずにはいられなかったのー」

「リアは、あのほんのなかみしってる?」

「え、知らないけど。読めないもん」


 えー、とがっかりした様子のウェレとヴィーを宥めつつ、そんなことを言われるとなんだか気になってきた。探求者も同様に、少しそわそわしている。


 リアは天を呼んで、あの本を見せて貰う事にした。ワクワク顔の三人を置いて、天のもとへ近付く。


「ねー、天ー。本出して?」

「あれですか?少し待っていて下さい」


 鞄の中を手で探って、わりとすぐにお目当ての本は出てきた。

 どうぞ、と渡された本をその場で開いても、やっぱり何も書かれていない。リアには白紙のページが延々と続いているように見えた。


(……あれ?)


 ふと、白紙の中に黒が見えたような気がして、ページを捲る手を止める。そのページまで戻ると、やはり文字が書いてあった。

 同じページをじっと見つめるリアを不思議に思ったのか、天もページを覗き込む。


「何が書いてあるんですか?」

「……ちょっと待って」


 なんだなんだと待っていた三人も寄ってくる。累計五人である一ページを覗き込む光景、はっきり言ってかなりおかしな事になっているだろう。


『あれー、これってなんかの予言?』

「違う筈だけど……。こんなの見たこと無いし」

「じゃあ何ー?」

「ふしぎなことば。ほかのぺーじもみせて」

「良いけど、あるかなぁ」


 ヴィーに急かされるままページを捲る。やはり彼女の目にも何も写らないようで、白紙が続くのを不思議そうに眺めていた。


「なにもかいてない。あそこだけなの?」

「私の目には、びっしりと文章が書かれているのが見えますがね。どうやら他人には見えないようで」

「狐のお兄さん、内容分かるのー?」

「残念ながら、殆ど分かりません」

「なんだー」


  ちぇ、と言い出しそうなウェレを横目でチラリと見て、ヴィーは「すこしかりていい?」と許可を取ってから本を受け取って駆け出した。

 彼女が向かった先にいたのは、メリクスーラ。おそらく、世界樹の分木なら読めるかもと思ったのだろう。


 一言二言声を掛けて本をメリクスーラに差し出す。横からユダも覗き込んできた。

 ペラペラとページを捲っていたメリクスーラは、ふとあるページで手を止めた。

 それを指で指し示したあと、ユダとヴィーに何か耳打ちをして、またページを捲り始める。


 すぐに駆け寄ってきたふたりは、口々に言った。


「「あれ、神様のものだって!」」

ちなみに、メリクスーラさんの性別は特に決めておりません。むしろ性別なんて無いんじゃないかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ