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魔女と狐の墓参り  作者: 長尾いのり
大樹と三つ葉のクローバー
21/43

不思議な切り株

前に書いた内容とちょっと矛盾があるかもしれない。そっとスルーしてくださいm(_ _)m

 まさかこの鍵の持ち主が人ではないなんて、天は想像もしていなかった。

 しかし、鍵から伸びた線ははっきりと切り株に繋がっている。これを見れば、持ち主は誰か、なんてものは一目瞭然だった。


 呆然とする天の横に、スッとクロエが進み出た。


「おめでとうございます、天さん。これで調査は終了です。結果などは、後日改めて」


 その声に、はっとする。そうだ。忘れかけていたが、これはクロエによる調査なのだった。


 さて、持ち主を見つけたはいいが、これをどうすれば良いのか。元に戻す?いや、相手が人だったらそれでいいのかもしれないが、いかんせん持ち主は切り株だ。人でないどころか、意志疎通もできない植物。

 助けを求めてクロエを見ると、彼女はなんてこともなさそうに言った。


「そちらは、どうぞご自由に。持ち主に返すもよし、自分で持っていてもよしです」


 そんなことを言われたら、ほとんど返すしか道がない。しかし、この切り株にどうやって返せば良いのか分からず、天はそっと切り株の上に鍵を置いた。

 その途端、力が抜ける。どうやら、クロエに会ってから今まで力が入りっぱなしだったようだ。

 切り株に体重を預けるように倒れ込んだ天を見て、クロエが心配そうに手を差し伸べた。


「大丈夫ですか?捕まってください」

「……すみません」


 クロエの手を借りて天が立ち上がると、空から何か小さなものが落ちてくることに気が付いた。


「……雨?」


 さっきまで晴れていたのに、と不思議そうなクロエが、そっと天の手を離す。そのまま、両手を空に向かって掲げた。まるで、雨を受け止めるように。

 しばらくそうしていたが、ふとクロエが天に目を向ける。


「……帰りかた、分かります?」


 どこか虚ろな目をしたクロエだったが、そこはちゃんとしているようだ。


「はい、分かりますよ。お気遣いありがとうございます」

「いえ……それなら、もう解散にしましょう」


 それでは、ともう一度空へ視線を戻すクロエ。少し心配になったが、天はリアのところへ戻ることにした。まだ彼女があそこにいるのかは不明だが。


(多分、もういないでしょうね)


 戻ってみると、案の定リアはいなかった。その代わりに、緑色の蝶がクローバーに止まっていた。天が近づくと、その蝶はふわりと飛び立っていった。それと同時に、声が聞こえる。この場に居ないはずの、リアの声だった。


『これ聞いたら、戻ってきて。今、ちょっと大変なことになってる。場所は……』


 その声が告げた場所は、どうやら酒場のようだった。なんでったってこんな昼間から、なんて思いはしたが、なにかあったのかもしれない。とりあえず、向かって見ることにした。


 ここから向かうには、このクローバー原を抜けていった方が早い。そう判断して、天は駆け出した。


 途中で、ふとさっきの切り株が目に留まった。クロエはもうおらず、雨も上がっていた。少し緑がちらついたように感じたが、どうせクローバーが乗っただけだろうと思って、前を向く。この切り株より、リアの方が気になる。一瞬止めた足を再び動かして、指定された場所へ向かった。



 そして、冒頭に戻る。結局、リアの言っていた「大変なこと」は、この警邏隊の隊長に絡まれていることだった。それを知って、ガクリと天が項垂れたのは言うまでもない。


「ふぅん、大変だったんだね」


 話を聞き終えたリアが、労るように天の頭を撫でる。少し照れるが、なんとなく疲れが癒えていくような気がして、抵抗しないでおいた。


「これ、もう帰っていい?」

「お?いきなりだな。そういや、宿は取ってあるのか?」

「うん。じゃあね」


 いきなり、リアが席を立った。テーブルに数枚硬貨を置いて、天の手を引いて酒場を後にする。後ろで隊長が軽く手を振っていたが、リアは無視していた。


「ごめん、勝手に連れ出しちゃった」


 暫く歩いた後、振り返ったリアは何処かバツの悪そうな声で言った。相変わらず顔は見えないから、声で判断するしかない。


「いえ、それは大丈夫なのですが。……これは一体どこに向かっているんですか?」

「さっきのとこ。火の鳥、置いてっちゃったから」


 そういえば。色々と会ったせいで、あんなにインパクトの強い存在を忘れていた。


 元の場所に帰してやるのだろうか、なんて天の考えは、リアの行動によって容易く改められた。

 リアは火の鳥の透明化を解いたあと、あろうことかそのまま従属契約を結んでしまった。


「え、ちょっと!何してるんですか!?」

「従属契約だけど。この子ね、元々住んでたところの環境が悪くなって飛び出したところで捕まっちゃったみたいなの。どうせだったら、一緒にいた方がいいかなーなんて。あ、大丈夫だよ。他の子達は普段自由にしてもらってるし、この子にもそうしてもらう予定だから」


 話しながらリアはさっさと火の鳥の首にリボンを巻き、ぽんと軽く火の鳥を叩いた。


「これでよし。もう行っていいよ、悪かったね」


 その声を聞き届けて、火の鳥は飛び立った。切られた羽も綺麗に治っている。

 その姿を見て、何故だか泣きそうになってしまった。そんな天に、リアが不思議そうに首を傾げた。


「よし、これで私の用事は終了。天は?なんかある?」

「……私は……」


 あの、鍵の持ち主の所へ。

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