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魔女と狐の墓参り  作者: 長尾いのり
大樹と三つ葉のクローバー
19/43

体質

「いやぁ、すごいお手柄だったなァ、坊っちゃん!」

「ははは……」


職人の街・ヘルメの一角にある酒場にて。

とある狐の獣人の少年が大柄な男に肩を組まれて、困ったように笑っていた。


彼のそばにいつもいる幼い見た目の少女は目の前のことなどフル無視で酒を飲んでおり、助けてはくれないようだった。

ただ一応、大柄な男に少年が酒を飲まされそうになったときには、「こいつ未成年」と助け船を出してくれはしたが。


「坊っちゃんがその体質なのは昔からか?」

「えぇまあ、そうですね」

「……?何の話?」

「なんだ、聞いてねェのか。ようし、いっちょ俺が話してやろう!」


げ、という声が聞こえそうな程顔を顰めたのがリアの仮面越しでもわかった。

男は既に酔いが回っているらしく、そんなリアの様子は気にせずに語り始めた。




「こちら、ヘルメ区警邏隊です。密猟者と見られる人物が発見されたとの通報で参りました……この方、ですよね?随分手酷くやられているようですが……」


駆けつけてきた警邏隊のリーダーらしき人が困惑したように天に声を掛けた。


「はい、この男です。私が来た時には既にこの状態でしたので、どうしてこうなったのかは……」


さらりと嘘をつく。この世には物事を円滑に進めるために方便が必要な時もあるのだ。火の鳥のことを知られる訳にもいかないので、こうするしかなかったというのも理由のひとつだ。


「確かに、この男は巷で噂になっている密猟者と特徴が一致しています。隊長、連れて行きましょう」


拘束された男を調べていた警邏隊員が報告すると、天の目の前の隊員がそちらを振り向き、頷いた。

やはり、天と話していた男が隊長だったようだ。

横目でチラリとリアを見ると、別の隊員と話しているようだった。案外近くにいるのに、会話の内容は聞こえない。魔法で消音でもしているのだろうか。


「それにしても、どうやって密猟者を見つけんですか?」

「そこにいる彼女が、銀色の物体と緑色の液体を使って見つけ出したんですよ」

「緑色の液体?……魔力増幅剤か。それで?それを使ってどうやって見つけ出したんですが?」

「黄色の線が現れたので、それを辿って」


途端、隊長が目を見開く。


「嘘だろ」


その後、すぐに信じられないとばかりに頭を振って、ポケットから小さな石を取り出した。


「おい、坊ちゃん。この石が何かわかるか?」


天はじっとその石を見た。何の変哲もない石のように見えるが、その表面は鈍く光っている。先程も見た、鉄磁鉱だ。


見えたまま答えると、隊長は呆然としたように呟いた。


「お前には何が見えているんだ……俺にはただの石にしか見えん」

「かなり特徴的だと思いますが。こんなふうに輝く石なんてそうそうありませんよ」


その反応に驚いて、さらに言葉を重ねる。付け足した言葉を聞いて、今度は軽く天を仰いだ隊長。


「おい坊ちゃん、お前は魔法が使えるか?」

「いえ、単身では使えません。魔法石や魔道具があれば別ですが」

「そうか……」


隊長は近くにいた隊員に一言二言伝えて、天に向き直った。


「あのな、坊ちゃん。おそらくだが、お前は特殊な目をしているんだ。詳しいことは分からんが、魔法が使えないのはそれが原因かもな」


真剣な眼差しで天に伝えた隊長は、ふっと笑って天の肩に手を置いた。


「今詳しいやつを呼んでるから、少し待ってろ」


はあ、と生返事を返すと、隊長は処理があるからと言って、縛られた男と警邏隊を連れて帰っていった。


普通の人には、あの輝きは見えないのか?しかし、リアは見えているようだったし、あの隊長だけが見えていない可能性もある。今すぐリアに聞きたかったが、生憎リアはまだ話し込んでいる。天は大人しく『詳しいやつ』を待つしかなかった。




「お待たせしましたー。あなたが『魔法の瞳』を持っている方ですか?あたし、警邏隊で判別官をしているクロエといいます」


暫くして、判別官だと言う少女が天に声を掛けた。

黒髪を高い位置でまとめた兎耳の少女はクロエと名乗り、にこやかに挨拶をした。


「早速ですが、少しだけ調査にお付き合いくださいね。あ、あなたの名前は?」

「天と言います。よろしくお願いします、クロエさん」


あえて名前だけを伝えた。クロエも名前だけだったし、何より一応『二人旅』中の貴族の息子なので。

特にクロエはそこを気にしていないらしく、調査の内容を説明しだした。

曰く、今からするのは「バリエステロ」という警邏隊の仕事らしい。


「内容としては、道具の魔力の残穢を利用して犯罪者を見つけ出す。これだけです」


にこりとクロエは笑って言ったが、これのどこが調査なのか。そんな戸惑いを感じたのか、クロエは詳細が書かれた紙を取り出し、読み上げ始めた。


「この調査の目的は、あなたの能力が本当に魔法の瞳のものなのか、どのくらいの力があるのか、を調べるために行うものです。……あぁ、そういえば、魔法の瞳がどういったものかご存知ですか?」

「いえ、あまり」

「そうですか。なら、そこからご説明させていただきますね」

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