表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女と狐の墓参り  作者: 長尾いのり
花の街
12/43

解決策

「いけると思うってったって、フローラ、衣装だよ?あんの?」

「あるわよ、今すぐ持って来させるわ。『本物の』花乙女の衣装、用意しようじゃないの」


ブランシュをあやしていた天は、本物のという部分に引っかかったが、今はそこじゃないとスルーした。嗚咽混じりにブランシュの声に集中して、彼に泣き止んでもらえるようにしなくては。


「ぼくっ、いままで、ひっく、がんばってぇ、きた、のにぃ……!」

「はい、きっとそうなのでしょうね」

「なのにっ、衣装っ……!みんなも、こないしぃ!うぅ……」

「大丈夫ですよ、きっと。リアさん達が代わりの何かを考えてくれています」

そう言って天が視線を向けた先には、言い争う女子達がいた。


「だーかーらー!わたしたちで劇を完成させるのよ!」

「んなこと言ったって!私、台詞とか知らないもん!」

「そんなもん適当で良いわよ、姉さんもアンナも台詞知らないもの。フローラさんだってそうでしょ?」

「そうよ、なんなら踊ってるだけでいいの。実際、あのこ達はあんまり喋らないのよ。それに、わたしハリアラーミス(女神の母)ならできるわ。おかあさまだもの!」

「ならあんた達だけでやればいいでしょ!私まで巻き込まないで」

「じゃあリアは小さな妖精(ラ・リーゼ)役ね!」

「ちょっと!」


「あれ、ほんとにだいじょうぶかなぁ……」

「ま、まあ、何とかなるでしょう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うーん、私にこれ似合わないでしょ……だいたい、小さな妖精(ラ・リーゼ)にこの髪色ってどうなの?」

「大丈夫よぉ。よく似合ってるわ」

床に付きそうなほど長い銀髪を高いところでひとつにまとめ、ベールを着けたリアは、ならべてある衣装を前に立ち尽くしていた。

ミッシェルが勧めているのは、薔薇のように真っ赤な花のドレス。スカートの部分が花びらの形で作られているそれは、どうやらお気に召さなかったらしい。


もともとあまり派手な格好を好まない性質のリアだが、舞台衣装が派手になることには承知している。にしても派手すぎだ。ミッシェルの言う通り、彼女の長く伸びた銀髪に、深紅のドレスはよく似合っていた。あれこれ代替案を差し出すミッシェルを無視してリアが選んだのは、青いワンピースだった。


膝丈程のそれは、形はシンプルなものだったが、所々に金糸で入れられた花びらの刺繍や裾にあしらわれた青いフリルなんかのお陰で立派な衣装へと相成っていた。


「はい、私選んだから次は……って、もう決めてんのね」

フローラは草木のような緑色の、1枚の布でできているようなドレス。

ミッシェルは、薄紅色の花のようなワンピース。それとは別に持っているのは、姉妹達の分だろう。


「ねえ、ブランシュ。人は何とかした。けど、人だけ。時間無いから、練習するよ」

「……っ、う、うん……!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


またグスグスと泣き出したブランシュをなだめ、劇の練習がスタートした。


「まず、台本とかある?全体の流れも把握したい」

「あぁ、そんなものあるかしら?」

「あるよ!主役はきちんと台詞があるし……とにかく、どこかにあるはず!」


ブランシュが部屋の隅に無造作に積み上げられていた箱の中をしばらくかき回し、ようやく見つけたと言わんばかりに、くしゃくしゃになった台本を掴んで掲げた。

「あった、これ!」

「……管理どうなってんの」


とはいえ、紙がよれていようと文字は読むことができる。破れていなかったことが救いだ。

フローラとリアが揃って台本を覗き込む。

その内容は何てことない、花の街に伝わる花乙女の伝承を舞台風にアレンジしたものだった。


「うん、よし。わかった、一回やってみようか」

「えっ、いきなり?どうしよう、できるかしら」

「さっきまであんなに自信満々だったじゃん。できるよ。フローラならできる。てか、フローラにしかできない」

「……っ、ええ、とにかく、やってみなければ」

「その意気よ!さあ、始めましょう!」



少女たち(と少年)がわちゃわちゃと盛り上がっている間、得にやることもなくなってしまった狐の少年がひとり。

「皆さん、楽しそうですねぇ……」


流石にあの中へ入っていく勇気はない。しかし、このままここでぼうっと練習を眺めているのもなんだか違う気がしてならない。


結局、彼は破れた衣装を手に取り、部屋を出ていった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ