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魔女と狐の墓参り  作者: 長尾いのり
花の街
11/43

花祭り

「天、行こ」

「はい」

本日晴天、雲ひとつない。無事に花祭りは開催された。

「あら、リア、声をかけるのは天くんだけ?」

「フローラは勝手に付いてくるでしょ。別に……あ、ちょっと待ってて」

何を見付けたのか、ふたりを置いて駆け出していったリア。


何かを両手に持って、すぐに戻ってきた。

手にしたものを見て、フローラは呆れて口を開いた。

「もう、リアったら。さっき朝御飯をいただいたばかりじゃない」

「そんなこと言われても。フローラ、お腹いっぱいなの?一応ふたりの分も買ったんだけど、いらない?」

「……いるけれど!」


片手に2本ずつ持った串焼きをフローラに1本手渡した。

天にも目線で問いかけ、天が頷くとリアは1本差し出した。

天が受けとると、リアが手にしている串焼きは2本。どうやらひとりで2本食べるつもりらしい。


「ん、これ美味しいですね。いくらだったんですか」

「1本銅貨1枚。お祭りって物価高い印象だけど、ここ安くて良いね」

リアは銅貨を渡そうとする天を制して、奢りだと笑った。


ふたりがそんな会話をしている間、フローラはモグモグと串焼きを頬張っていた。

「ねえ、リア。あっちのも美味しそう……」

「あれぇ、さっき朝ごはん食べたばっかじゃないのー?」

「もう、意地悪ねぇ!」

「ハイハイ、意地悪さんですよーだ。で、何が美味しそうだって?」

あれ、とフローラが指差した方向には、飴の屋台があった。


「飴?」

「あぁ、蜂蜜飴ですかね。そこまで甘さもくどくなくて、美味しいですよ」

ふっと笑って天が言った。あらかわいい、なんてリアは思う。こういうところは年相応の少年なんだ、なんて安心した。


「よし、天がそこまで言うんだったら買ってみよっか。すみませーん、飴3つ下さい」

「はいよ」

屋台のおじさんは溶けた琥珀色の飴をくるくると棒に巻いて、氷で軽く冷やしてリアに渡した。

「おお、パフォーマンス」

「あらあら、とっても綺麗ねぇ」

「溶け出す前に、食べましょうか」

軽く固めてあるだけなので、置いておいたらすぐに溶けてしまう。

3人同時に蜂蜜飴を口にいれると、リアとフローラはぱっと顔を見合わせた。


「おいしー!甘、私これ好きかも!」

「えぇ、本当に!蜂蜜をそのまま食べるより、よっぽど美味しいわ!」

ひとりだけ蜂蜜飴を食べたことのある天は、しみじみと味わっていた。

「……久し振りに食べましたが、やはり美味しいですねぇ」


そこからしばらく無言で飴を食べ、一番に食べ終えたフローラが全員分の飲み物を買うと言ってきた。

「さっき、そこで飲み物を売っているのを見付けたのよ。わたし、串焼きも飴も奢ってもらってしまったから、せめて」

「別に良いのに。ねえ?」

飴の代金は天が払った。「先程のお礼です」なんて言われて、リアはせっかくカッコつけたのに、とむくれていた。幸いにも、飴で機嫌は治ったようだが。


フローラが見付けた飲み物の屋台は、果物の果汁で花の蜜を割ったジュースを販売していた。

リアはオレンジ、天はベリーの果汁を選び、花の蜜は店主のおすすめで作ってもらった。

フローラは拘りがあるようで、葡萄の果汁と夜何花の蜜でジュースを作って貰っていた。


「美味しいわ〜」

「だね。……そだ、ブランシュに持ってってあげよう」

ブランシュはこういったものが好きだったはずだ、とリアはジュースを差し入れに持っていくことに決めた。

果汁や花の蜜の好みもあるので、ついでとばかりに三人でブランシュがいるはずの集会所へいくことに。

==========================================

集会所に近づくにつれ、祭りの喧騒は静まっていく。……しかし、それとは別のざわめきが大きくなっていった。


「おい、冗談だろ!?」

不意に聞こえてきた叫び声に、リアがぴくりと反応する。

「何かトラブルでもあったかね」

ぴょんぴょんと跳ねるように集会所へ走り出すリアを、ふたりは慌てて追いかけた。


「ど、どうしよ……」

一足先に集会所に転がり込んだリアが見たのは、花の精霊の衣装を抱えてうずくまるブランシュとそれを取り囲む彼の姉と大人たち。

「何かあったの?」

「あ、リアさん……。こ、これ、どうしよう……!」

「んー?」

ブランシュが広げて見せた衣装は、大きく引き裂かれていた。

自然に破れたとかではなく、明らかに人為的にやられている。

「ありゃー、やられたねぇ。どうしよう、私元の形知らないから戻せないや」

そう告げると、ブランシュの顔が今にも泣き出しそうに歪む。


そこへ、リアを追いかけてきたふたりが追いついた。

「やっと追いつきました……。おや、どうかされましたか、ブランシュさん」

「あ、天さんん……!」

ついにブランシュは泣き出してしまった。

「あらあら、何があったのかしら」

「それがねぇ……」

とても話せる状態では無いブランシュの代わりに、ミッシェルが事情を説明しだした。


曰く、集会所に来た時には衣装はボロボロで、彼と一緒に劇をするはずの女の子達が誰一人として来ず、大変な状態なのだとか。

「そっかあ、それは大変」

「それだったら、わたし、何か出来る気がする。劇が出来れば良い訳でしょう?花の精霊の話はわたしもよく知っているし、衣装だってわたしの服を貸すわ。ブランシュくんとは背格好も似ているし、いけると思うの」


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