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98 もっさり王子の花贈り

閲覧ありがとうございます

引き気味に見ていると、ネクス殿下がもっさり王子に

「せっかく花贈りの時期だ。お前も私のを参考に婚約者候補のルキアーナ嬢に花をプレゼントしてみろ。私が採点してやろう。」

と提案してきた。


「え…。」


「本当ですか? 是非お願いします!」

意気込むもっさり王子に嫌な予感。


キラキラチカチカ超豪華生花パート2ができそうだ。


「いや、結構です。大丈夫です。」


手を伸ばして制止すると、ネクス殿下が腕を組んで、

「ラトが可哀想だろう。せっかくやる気になっているのに。」


「う……。」


そう言われると辛い。


けど、嫌な予感しかしないだろう。


困惑気味に見るが、珍しくもっさり王子がやる気だ。


「兄上少し時間いただけますか?必ず兄上の()()豪華ですごい物を用意してきます!」


「ああ、いいだろう。」


毒クラゲの返事を聞いて、もっさり王子は壁を裂いて消えた。


「ふふん。」


なんでそんなに得意気なんだ?


「あいつも王子だからな、それなりに豪華な物は用意できるだろう。しかし前もって手配ができてないから、私には届かないだろう。いかに準備が必要か学んで来年から活かせるだろう。」


ああ、そういう。


けど、2個も同じようにケバケバしい花要らんがな。


ちょっとズレた感性の毒クラゲにどうしたものかと思っていると、空気が揺らいだ。


お、意外に早い。


まだグダグダ言ってる毒クラゲの背後の空間が裂けていく。

「あ。」

私が指をさすと、ネクス殿下が振り返った。


「早かったな。流石に時間がなかった…か……。」


グッともっさり王子の頭が出たと思ったら、同時にウネウネ蠢く影が見え始めた。


「うええええ……。」

気持ち悪さに後退る。


「お、おい、おい、おおおおお…。」

毒クラゲも何か異常を感じて下がってくる。


もっさり王子が何かを手にして出てきたが、まさに持っているのがダークな緑と茶色のまだら模様の食虫植物。


しかもめっちゃでかい。


王子の頭に食いつこうとしているのを、冷静に手で叩いている。


「え〜、な、は、花は? それは花か⁈ は、花贈り? 足⁈ 」


閉じられた植物の間から動物らしき足も出てるよ…。


もう後ずさるしかない。

毒クラゲも下がりすぎて私のすぐ目の前まで来ている。


「なんだ、何を持ってきた、それはなんだ⁈ お、押すな!」

背中を押して隠れる。


毒クラゲも完全にパニック。


もっさり王子はこっちに近づきながら、

「ツブキョシイクトヒです! 大きく人が真似できない植物を持って参りました。」

いつになく張り切った声。


「ば、だ、こっちに向かうな! 止まるんだ!」


グァパスっと開いた植物の口がネクス殿下の顔のそばで止まる。


ぽたっ、ぽたっ。

粘い黄色の液体が垂れて落ちる。


地味に床から煙。

ヒイイ……。


ツブキョシ…何て?


ぎゅっとネクス殿下の背中の服を握る。


殿下も真っ青だ。


「これではダメでしたか。もっと意表をついた物の方が良かったでしょうか。あ、色味がもっとある方が………でも毒性も強くなりますから、うーん、触れければ贈っても大丈夫ですかね。」


凶悪な食虫植物を抱っこして、もっさり王子が首を傾げる姿が1番異質に感じた。


「は…ああ…うん。……もう少し大人しい……花が…喜ばれるかな。」

毒クラゲの声も息絶え絶えだ。


「わ、私ももらうならもう少し小さくカラフルでかわいい物が嬉しいです!」

隠れたままきっちり意見は言う。


そっと殿下の背中から覗くと、食虫植物を見上げるもっさり王子が見えた。


「かわいい……です…よ。子牛……を…よろこ…んで……食べて……くれ…ま…す。」


あの足、牛? 牛??


衝撃に2人とも目が丸くなる。


「かわいいが、す、少し違うようだぞ!」

しどろもどろにネクス殿下が注意する。


もっさり王子は一回りほど小さくなると、

「そう……です…か。僕…には…難しい……よう…です。」

ユラユラ揺れた。


「そ、そうだな。まだ、まだ、ラトには早かったようだ。もっと学んでから贈る方がいいだろう。

早くその植物も元に返してやれ。植物も急な場所で驚いている。」


なんだか意味のわからない説得を毒クラゲがしている。


「よく分かりますね。流石だな〜。この食虫植物は明るい所が苦手なので、離宮でも地下に置いているのです。では、戻して参ります。兄上、少し持っていてもらえますか? 空間を開けますので。」


「何⁈ わ、私が持つのか? そ、そこのテーブルに置いたらいい、だ、だろう?」

動揺して毒クラゲがテーブルを指さす。


「え、良いのですか? 兄上の花がありますが。」


「いい、いい、大丈夫だ。」


不思議そうにしながらもっさり王子が食虫植物をテーブルに置いた。


もっさり王子が空間を裂き始めると同時に、食虫植物が殿下が用意した生花に食らいつき、むっしゃむっしゃ食べ出した。


「「……………。」」


うわー、めっちゃ食べてる。

なんでも食べる、動物の足もいつに間にか無くなってる……。


2人とも遠い目になっていると、

「では、ああ、やっぱり兄上の花が…。」

もっさり王子が嘆いた。


「いい、いい、大丈夫だ。」

両手を前に出して、もっさり王子を安心させる。


「そうですか。すみません、兄上。では持ち帰ります。」


そう言うと、もっさり王子はヒョイっと食虫植物を持ち上げて空間に消えていった。


静かになった部屋で、腰が抜けそうだ。


なんだ、あの凶悪な食虫植物は。

飼ってるのか?

なんで持ってるの?


頭をぐるぐる食虫植物が回る。


毒クラゲも自分が持ってきた生花を見て呆然としている。


もう食われて溶けてボロボロだ。


「なんかすごかった……もうお気持ちだけで、ありがとうございました。」


すっかり疲れ切って頭を下げると、握り締めすぎてボロボロになった魔術師さんにもらった花束が目に入り、余計にがっくりきたのだった。







読んでいただき、ありがたく思います


なんか感性のズレた兄弟よね


よければ評価やブックマークをよろしくお願いします

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