97 花贈り
閲覧ありがとうございます
今朝の兄は変だったな。
朝食時いつもすごい速さで食べ物を口に入れていくのに、私を見たままスープこぼしたり、肉を掲げたままパン齧ってたり。
疲れてんのかな〜。
騎士の仕事したりしてる中で、ルキアーナちゃん助けるために駆けつけたりしてたしな。
過剰業務よね。
疲れも溜まるだろう。
帰りに騎士団に寄ってみようかね。
王宮廊下を歩いて庭園が見えてくる。
3月になってめっきり温かくなってきた。
あんなに寒かったのに、雪が溶けてきた。
春の蕾ものぞかせ始めて、庭園の色が優しく感じる。
「ほわ〜春だ……。」
遠くに焦点が合っていたのに、目の前に亀裂…。
だんだん下へ伸びて、真っ黒の人が出てくる。
お馴染みすぎて驚きもしない。
春の情緒ぶち壊しだ。
もっとこうなんかあるだろう、角の見えにくいところに出現するとか。
私に照準を合わせて無駄を省いて現れるのがもっさり王子っぽいけどさ。
空間閉じて無言で立つ王子を見ながら。
「おはようございます、殿下。」
一応簡易的に膝を折って挨拶をする。
手を合わせモジモジ、くねくね。
「……………………………おは…よ…。」
今日も声出るまで長かった。
よし!と体を起こすと、
「では行きましょう。」
身を翻して歩き出した。
♢♢
「あ、あの。」
通りすぎる際に魔術師ローブを繕った人に声をかけられた。
顔を向けると、赤茶色の髪に水色の瞳の線の細い男性が立っていた。
わずがに目線を彷徨わせて落ち着きがない。
「どうかされましたか?」
体調不良かもしれないと下から伺うと、
「うわ。」
腕で顔下半分隠した。
不審……。
それ以上近寄らず見つめると、男性は短く息をはいて。
「これを!」
と言って後ろから小さな花束を出してきた。
黄色いまん丸な花が3本に白い小花で周りを囲っていて、とても可愛かった。
「かわいい!」
思わず顔が綻ぶと、男性はさらに私にと花束を出してきた。
「あの北の地ではありがとうございました。そのお礼です!」
そのセリフに記憶が蘇ってきた。
「ああ、料理の時近くにいて火を飛ばしてくれた顔色の悪かった魔術師さん!」
思わず指差すと、
「ふふ。はい。」
笑った。
「あ、指さして、すみません。」
指をしまうと、
「大丈夫です。それで、これを。」
「いただいてもいいのですか?」
首を傾げると、
「お礼がしたかったのです。救われましたから、あの時は本当にしんどくて、もうダメかもしれないと思ってました。まさかルキアーナ様が来られるとは思いませんでした。ちょうど花贈りの時期ですし、良ければですが。」
これは、もらってもいいのだろうか?
オリビアさんには花贈りとは男性が意中の女性に想いをのせて花を贈ると聞いたのだが。
男性はどう見ても30代、ルキアーナちゃん12歳、犯罪レベル。
この世界には義理チョコならぬ義理花束とかあるのだろうか………。
後ろを振り返ってみる。
明後日の方を向いて面倒くさそうにもっさり王子は立っていた。
うん、参考になりそうにない。
どうしたものかと視線を戻していると、
「あら〜、もう花贈りの季節なのですね〜。」
横からカリミナさんが現れて、男性が持っていた花束を取った。
「あっ。」
男性は驚いた表情。
それに構わずカリミナさんは花を顔に寄せる。
フッ。
丸い黄色の花とカリミナさんのアフロがそっくりだ。
思わず笑いが出てしまった。
カリミナさんはニッコリ笑うと、
「これは特別な物ではないですよね。殿下を差し置いてでは問題ですよ〜?」
魔術師さんに詰め寄った。
「滅相もないです。お礼です!お礼!」
慌てて魔術師の男性は手をあたふたさせた。
「なら、大丈夫ですね。ですってルキアーナ様、受け取ってあげてください。」
そう言って私に花束を握らせてくれた。
ぱあああ。
嬉しくて、頬が上がる。
「ありがとうございます。嬉しいです。」
そう魔術師さんとカリミナさんに言うと2人はニッコリ笑ってくれた。
「良かったですね。以後行動には気をつけましょうね〜。」
そう言ってカリミナさんは魔術師さんの背を押した。
「はい、ありがとうございました。」
それに便乗するように魔術師さんは駆けていった。
「ふふ。」
嬉しくて笑っているとカリミナさんが、
「花贈りは告白の意がありますから、しっかり意を確認する必要がありますからね。」
なるほど、やっぱりそうか。
うんうん頷いておく。
「けど花はもらうと嬉しいです。かわいい。義理花束があると良いんですけどね。」
「義理花束。」
「そうです。先月お渡しした日頃の感謝を込めて贈ったチョコレートみたいに、親愛みたいな感謝の意を込めた贈り物の事です。」
「それ良いですね、そうしたら先月のお返しができますね!」
ポンと手を叩いて、カリミナさんが喜んでくれた。
そうなんだ、そういう贈り物って友達同士でしたい。
「わー嬉しい。楽しみにしてます。」
2人で手を取り合ってぴょんぴょん飛び合い、手を振って別れた。
♢♢
そして今。
私は講義室で固まった。
私がいつも席についているテーブルの上に、芸術は爆発だ〜と言わんばかりに生けた豪華な花花花!
どうしたんだ、これは。
色使い、種類、すごいなぁ。
更におかしいくらいキラキラキラキラ。
目がチカチカしてきて、もう嫌がらせレベル。
手に持っていた小さな花束がなんか萎縮した気がした。
そうしてフリーズしていると、
「感動して言葉も出ないか。」
得意げな声が響いた。
まるで花がしゃべったようだった。
「兄上!」
もっさり王子が生花に寄っていくと、向こうからネクス殿下の姿が出てきた。
全然見えなかった。
花が輝きすぎて逆光………いや、今日の殿下の服も輝いてるから同化してたのか……。
「これは?」
引き攣りながら一応聞く。
「毎年贈っているだろう。花贈りの花だ。」
腕を組んで、当然とばかりに殿下が言う。
「…………。」
毎年これを贈っていたのか?
ルキアーナちゃん困惑しただろうな。
小さい頃からだから慣れてたかな?
「微妙……。」
思わず口からこぼれた。
「なんだと?」
「失礼だ!」
2人から批判の声。
「あ、声に出てた。すみません、ありがとうございます。」
私がそう言うと、指を振りながら注意してきた。
「そういう所だぞ。これの良さがわからないとは。王太子妃になるんだ、もっと情緒を磨け!」
いや、何言ってんだ、毒クラゲは!
情緒だと?
「いや、花になんで宝石が散らしてあるんですか! 豪華すぎて引きますよ! 花はそんな物なくても、それ自体が素晴らしいのです。プレゼントにしても高価すぎて、情緒も何もないですよ。」
毒クラゲの感性が分からず反論すると。
「は、子供だな。この豪華さがわからないとは。」
と言って馬鹿にされた。
世の女性はこれが嬉しいのか?
こんな宝石撒き散らすとか、前の世界でも経験した事ない。
価値観の違いにめまいがしそうだ。
私が黙ったので、ネクス殿下は勝ち誇った顔をしてもっさり王子を見た。
「いいか、ラト。贈り物とは豪華に誰にも真似できない物を用意すると喜ばれる。お前も参考にするといい。」
「はい!」
いつになくはっきりいい返事をもっさり王子が返す。
いや、なんの指導……。やめた方が……。
眉間に皺を寄せるが兄・自慢気、弟・感銘気味。
変な兄弟……。
困惑を隠せないのだった。
閲覧してもらえて嬉しいです
花贈りの花も第一王子はやっぱり派手(笑)
よければ評価やブックマークをよろしくお願いします




