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94 治癒魔法?

閲覧ありがとうございます

朝、いつものように王宮に向かう。


すると急に外が騒がしくなり馬車の速度が落ちた。


「どうしたのでしょう?」

不安そうなルーラが外を覗く。


ガヤガヤと人の怒鳴り声と金属音が聞こえ、

「お嬢様、中から鍵をかけて中央で頭を低くしておいてください!」

護衛の叫ぶ声がして、ルーラが咄嗟に動き鍵をかける。


「賊です!」


ルーラの声に窓から覗くと、馬に跨った黒装束の人が何人も見えた。


頭にも黒い布を巻き付けているから人相がよくわからない。


見えるのは目だけだけど、目つきから本気だ。


護衛騎士が懸命に対峙している。

完全に馬車が止まってしまった。


この間の誘拐と言い、相手もルキアーナちゃんを害そうと必死になってきているようだ。

どうしてそこまで?


私が平和な世界で暮らしていたからか、理解できない。

命を何度も奪おうとしてくる執念、いや敵は多数かもしれない。

それだけ命を奪う罪を負う以上に、ルキアーナちゃんが居なくなる事で得れる価値の方が魅力的という事……。


ガンっという音に意識が戻る。


窓に剣が打ち付けられたようだが、魔法効果か全く割れる気配がない。


防弾仕様〜。


感動と驚きが混在しながら床にしゃがみこみ、頭を抱える。

その上からルーラが包んでくれる。


みんなが守ってくれている事がありがたい。


怖い事が起きているのに私はイマイチ、ピンときておらず、不思議と怖いとあまり感じなかった。


ギンギン、ガンガン、剣のぶつかり合う不快な音が響きあう。


「ルキアーナー!」


遠くから耳馴染みのある声が聞こえてきた。

何度も名前を呼んでいる。

ルキアーナちゃんのお兄さん!


「お兄様!」


咄嗟に立ち上がろうとすると、

「お嬢様危ないです!」

ルーラが腕を取る。


「大丈夫、お兄様よ!」


ニコリと笑うとルーラもハッとして外を見た。


「ああ、本当にザイナス様!」

ホッとルーラが息を吐く。


床に膝をついて窓を覗くと、兄が大きな体格を活かして、黒装束を馬からどんどん叩き落としていた。


ドサっと黒装束の人が落ちて、馬が嘶く。


下では護衛騎士が捕縛していく。


あっという間に黒装束は皆捕まった。


大きな音が全く聞こえなくなって静けさが馬車の中に広がる。


ドンドンドン


馬車のドアが勢いよく叩かれ。

「ルキアーナ無事か? 鍵を開けれるか?」


兄の声にゆっくりルーラが鍵を開けた。


バンとこちらに配慮しないドアの開け具合に、笑いが出る。


「はい、大丈夫ですけど。ドアが壊れますよ?」


「ワハハ、このくらいで壊れるようでは強度が足りないな。また技術屋に作り直しを要請せねばな。」

ニカっと笑って兄が入ってきた。


そんな兄にホッとする。


「よく分かりましたね。」


私が言うと、兄が騎士服の胸元の鉱石を振った。


「緑に光った。騎士団にいたから、この時間なら王宮に向かって来ていると踏んで馬を飛ばして来た。」


「モフの石!」

目を見開く。


「ああ、馬車の屋根にダシンゴムがつけてある。危険察知が早くて助かる。」

私の頭を兄が撫でながら天井を見る。


気付かぬうちにモフは馬車に居着いていたようだ。


私も天井を見上げると兄と目が合った。


兄は私の脇に手を挟むと持ち上げて立たせた。

「軽いな、ルキアーナは。しっかり食べるんだぞ。」


そして私を馬車の座面に座らせ、兄はドアから顔を出した。


「私の馬を頼む。私はルキアーナに付き添う。馬車を王宮へ。」


指示を飛ばすとドアを閉めて、私の隣に腰を下ろした。


兄が座ると、途端に椅子に余裕が無くなった。


「今回は間に合った。」

大きな膝だと思って見ていたら、そんな声が降ってきた。


兄を見上げると、兄は穏やかに私を見つめていた。


ああ、お兄さんはルキアーナちゃんの誘拐の時も1番に駆けつけてくれていた。

誘拐された事悔んでいたな。


「ありがとうございます、お兄様。お兄様がいるから安心です。」


ニッコリ笑って見せると、上を見上げた兄が、

「ダシンゴムのおかげだ。次は必ず守ると約束したからな。」

綺麗な横顔だった。


白金色の短髪に父と同じルビー瞳。


と肩の後ろの辺りの騎士服が破れている事に気づいた。


「お兄様破れて…。」

手を伸ばして触れると、指が濡れた。


「血が出てます!」

指にたくさんの血が付いてびっくりした。


「そうか? 痛くないぞ。大したことはないのだろう。それより、手が汚れただろう、早く拭くといい。」


顔を向け傷口を見ようとするが、兄から傷が見えないようだ。


座面に膝をついて、兄の肩に手を置いてよく見ると、長さ4、5センチほどの切り傷になって服が血で濡れていた。


スパッと切れている。

「痛いですよ〜。」

顔を顰めてしまう。


「ルーラ救急箱は?」

「いらん、いらん。」

兄が手を振る


「ございます。こちらを。」

ルーラがガーゼを渡してくれた。


折って傷に当てる。


「いっ……。」

兄の肩が揺れた。


「ほら、痛いでしょう。怪我させてごめんなさい。ありがとう、お兄様。」

兄は口元に手を当てて顔を逸らす。


滲んでくる血を見ていたら、急に怖くなってきた。


剣で……触れたら切れる本物の剣で打ち合いをして戦っていたんだ……。

切り掛かってくる黒装束の姿を思い出し鳥肌がたった。


窓の外を見る。


護衛騎士も腕や太ももを雑に布で縛っていたり、傷口をそのままにしている者もいた。


息を詰めて視線を戻すと、無言でガーゼをテープで止めた。

そしてそのままガーゼを見つめる。


ルキアーナちゃんの為に負った傷。

本気の斬り合いをする世界なんだ……。


改めて実感が湧いた瞬間だった。

恐怖と安堵で複雑。


ルーラは救急箱の整理整頓している。


今…。

「止血するのに抑えますね。」

不自然にならないように努める。


右の手のひらをガーゼに当てて、重い魔力を手に集めて出していく。


少しガーゼが光っているが、ルーラからは兄の肩で見えないだろう。


「はは、ルキアーナの手は温かいな。」

兄が笑う。


傷が治ったかよくわからない。

けど素知らぬ顔をして力を出し続けるのが限界、もういいだろう。


「ふう。」

力を抜いて手を離した。


「ありがとうな。」

兄が笑って頭をさすった。


安易な行動だけど、傷を治さずにいれなかった。


傷を負っても守る兄に感謝しかない。


護衛とは本当に危険な業務で、守ってもらえるのはありがたい事なのだと実感しながらも馬車は無事に王宮に着いた。


護衛騎士達に恐縮されながらも感謝はしっかり伝えた。


兄とは互いに手を振り合って別れ、私は教養を受けに兄は騎士団に向かったのだった。


  ♢♢


騎士団本部。


「ただいま戻りました。」

兄が敬礼すると、団長のダリウスが顔を上げた。


「その表情を見るとルキアーナ様は無事なようだな。」


「はい、無事です。ありがとうございました。」

直角に腰を折ると、団長が笑った。


「どうした、賊如きに怪我したのか?」


兄は罰が悪そうに頭を掻きながら起き上がった。


「気付かぬうちに切られていたようです。」


「毒が仕込んであったら、不味かったな。いつも言っているがもっと冷静さが必要だぞ。」


意地の悪そうな表情に、ザイナスも苦笑い。

「はい、面目ないです。とりあえず騎士服を着替えます。」


団長、副団長はこの部屋にロッカーがある。


ザイナスはロッカーを開けると新しい騎士服を出した。


着ていた騎士服を脱いで側の椅子にかけると、ガーゼも一緒に床に落ちた。


「雑な手当だな。」

近くに来ていた団長がガーゼを拾う。


「ありがとうございます。ルキアーナが手当てをしてくれたんですよ。」

新しい騎士服を持ちながらザイナスが嬉しそうに笑う。


「それは貼っとかないといけないな。貼ってやる後ろを向け!」


「お願いします。」

背中を向けると、団長がガーゼを彷徨わす。


「どこに傷があったんだったか? 右? 左? 肩甲骨辺りだったよな?」


「はい、右です。でも大した傷じゃないのですよ。触れないと痛みも無いですから。」


騎士服を持ったまま貼られるのを待つが、いつまで待っても貼られない。


「団長?」

振り向くとガーゼを見つめる団長がいた。


「なあ、ザイナス。ルキアーナ様は治癒魔法が使えるか?」


「ははは、何言ってるんですか。ルキアーナは魔力たっぷりですが、魔法はからっきしです。治癒なんて使えませんよ。」

豪快に笑った。


しかし団長は真剣。


「肩に傷は見当たらないぞ?」


あまりに団長が真剣なので、ザイナスも眉を寄せる。

「そんなはずは……。」


騎士服を離して指で痛みのあった場所に触れてみるが、傷らしい凹凸に触れない。

傷は何処にもなかった。


団長の持つガーゼには血の跡。


思わず団長と見つめ合ってしまう。


眉を顰めるザイナスに団長は表情を緩め肩を叩いた。


「顔が怖いぞ。傷が無くて良かったじゃないか。これは確証じゃない。ルキアーナ様も気付いて無いかもしれない。しばらく他言無用で様子を見よう。これは必要なさそうだから捨てるぞ。」


「……ああ、はい。」

ザイナスは半ば呆然としながら団長がガーゼをゴミ箱に入れるのを見つめて、騎士服を拾って着た。


妹に魔法が……?


今までのことを省みても、この今の状況を飲み込めないザイナスなのだった。





読んでもらえて嬉しいです


ルキアーナちゃんのお兄さん困惑するよね


おもしろければ、評価やブックマークをよろしくお願いします

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