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91 チョコ作りは物騒

閲覧してもらえて嬉しいです

もっさり王子の離宮には、あまり使った形跡のない広い調理場があった。


どれも新品のまま。


ピカピカすぎる備え付け器材とチョコの材料、そして近すぎるもっさり王子。


20人立ってもゆったり広い調理場なのに、何故か腕が当たりそうな距離に立っている。


今日は距離感バグってないか?と疑問を持ちながらエプロンをつける。


そして魔法陣が描かれた鍋敷のような円盤の上に魔石を置く。


魔法陣に赤い光が広がり赤い魔法陣に変わった。


これでこの鍋敷が温まるらしい。


温まりすぎてもいけないので魔石を取り外す。


魔法陣は赤色を保っている。


触れると人肌程度に温かい。


よし!


魔法陣の上にボウルを置いて生クリームを入れて温める。


なんせ私ももっさり王子も魔法が使えない。


魔力の扱いにも難がある。


加温と冷却の魔法陣と魔石は必須だ。


調理場の使い方がわからない上に、魔法も碌に使えない2人が調理するのは無謀だもんね。


生クリームが人肌になってきたら、ラム酒も入れる。


そして香りが立ってきたら、あらかじめ公爵家の調理人に細かく切ってもらっていたチョコも投入する。


今回は生チョコを作ろうとしているのだ。


甘くいい香りが辺りを漂う。


しかし邪魔だな。

顔が歪む。


だって私が動くたびに手元のもっさり髪が動くのだ。


手を見過ぎではなかろうか?

したいのだろうか?


「殿下あまり近いと髪の毛が入ってしまうのですが。」

苦言を呈すると、顎がこっちを向いた。


「手……つっこ……む…?」


手?

ああ、ハンバーグは手を突っ込んで混ぜてたから、混ぜるのは手だと思ったのかな?


今回は溶けたらバットに流して、上からドライフルーツやナッツを散らして固めるだけだ。

あとは固まってからカットするだけ。


「いいえ。今回の調理では手はチョコに触れません。」

木べらを揺らして答えると、もっさり髪がゆらゆら左右に動いた。


「手……つっこ……ん……で…。」


え、やだよ。

眉間に皺がよる。


「ハンバーグじゃないから、手は入れません。」

首を振る。


「ば…ばーん……ばーん………は?」

両手を広げて見せるもっさり王子に困惑する。


言ってる意味がわからない。


バーンとは?

首を傾げる。


もっさり王子はものすごくチョコを見ている。


まあ、いいか、意味がわからないのはいつもの事だ。


続けて混ぜると程よく粘りも出てきて、いい感じに艶が出てきた。


よしよしと思ってバットを用意して、ボウルを加温魔法陣から下ろす。


今度は冷やす魔法陣に魔石を置く。


うっすら水色に魔法陣が光ると魔石を外してバットを乗せる。


冷えてきたバットにボウルを傾けていく。

「チョコを固めていきますよ。美味しそうな匂いがしますね。」


もっさり王子がバットに広がるチョコを眺めてる。


全部移して、ドライフルーツとナッツを持つ。


「どっちをチョコに入れますか? どちらも美味しいですよ?」


もっさり王子に見せると、バットを指さした。


「……手……入れて……。」


「………なんで私が手形とるんですか。手は入れません。」


目を座らせて言うと、パパっとドライフルーツとナッツの袋を取られて、手首を掴まれた。


「わ。」


瞬間、ピチッとオペ手袋がまた肘から手先まで覆った。


ルキアーナちゃん?

手を見るが何もないので、いつものルキアーナちゃんの膜だとわかる。


「…あ……あ……ああ………。」


途端にもっさり王子が狼狽え始めた。


「何?何?どうしたの?」


もっさり王子に聞くが、わなわなしているだけだ。


そして急に私の手首を持ったまま、ブンブン振り始めた。


「いや、何も付いてないですよ⁈」


「……出な……い……出ろ………。」


「離してください! 手首痛いです。」

何度も振るから、手首がガクンガクン動く。


何がしたいんだ、もっさり王子!


王子の手を掴んで離そうとしても、やっぱり男の子意外に力があり外れない。


「ちょ、離してください。」


手を引こうとすると、今度は左手人差し指を伸ばしてきた。


「皮膚を……と…かす……。」


「え、なんで⁈ 物騒!やめて!」


互いに互いの手首を掴んで力の限り阻害するから組み手のよう。


なんで皮膚を溶かされるんだ?

意味不明な恐怖に必死に抵抗する。


「…も…やめ……あき…ら…めて……。」


「それは殿下でしょう‼︎ 私諦めたら皮膚溶けるんですよ⁈ おかしいじゃないですか!」

顔を真っ赤にして怒る。


力と力が拮抗して互いに体が震える。


けど長期戦は不利だ、ルキアーナちゃんにそこまでの筋力がない!


こうなったら、えい!


思いっきりもっさり王子の顎に頭突きをかます。


ごちっ‼︎

「アガッ⁈」


「いったっ〜。」


お互い手が離れて、うずくまる。


めちゃくちゃ頭頂部が痛い。


涙が浮かび、オペ手袋も消えた気がしたが、痛さでそれどころじゃない。


もっさり王子も両手で顎を押さえて呻きながらうずくまっている。

へちゃげた黒いカエルのようだ。


「で、殿下が悪い…ですから…ね!」


一応捨て台詞を吐いておく。


頭を摩りながらヨロヨロ起き上がると、テーブルの上に黒い物体があった。


「モップ様!」

突然のモップ様の出現にテンション爆上がり。


「お元気でしたか?」

顔を覗き込みながら、ふわふわな毛にうずうずする。


「触れても良いでしょうか?」

モップ様が首を傾げたので、勝手に許可されたと思って抱っこする。

「失礼致します。」


ふわふわもふもふ。


「幸せ〜。」


モップ様の頭に顔を当てて、毛の柔らかさを堪能する。


完全にもっさり王子を忘れていた。


急に手を掴まれ、バットの中へ。


「ギャっ!」


モップ様を落としそうになるわ、手はむにょんっと生暖かく微妙な感触。


見ると手にべっとりチョコが付いていた。


ぬちょん、ぬちょ、ぬちょん。

何度も突っ込まれ、手がチョコまみれに。


「もっさり王子! こらっ‼︎」


手を振り切ると、もっさり王子がビクンと固まった。


「も……も……も?」


「何なんですか!」


叫んだ途端チョコまみれの手にモップ様が飛びついた。

「うえええええ⁈」

最早意味がわからない連続で目が白黒してきた。


目をしぱしぱ瞬かせてると、もっさり王子がハッとしたように。


「モップズルい、こっちは僕の……。」


チョコバットに王子が手を伸ばした途端、モップ様の頭から真っ黒の手が何本も広がりチョコバットを覆って頭に吸い込んだ。


「あああああ…………モップ、ズルいよ〜。」


怖っ。

ダークなクリオネの様な食の仕方に恐怖で固まる。


そして私の手もよく見ると、黒いモゾモゾしたものに覆われていて全く手が見えない。


ゾワワわわ。


鳥肌が立ち、手がどうなっているのか………感触はモップ様の毛なのに見た目が悍ましく恐怖で震える。


「な、な、どう、な、……。」


言葉にもならなく、されるがまま。


項垂れるもっさり王子は引っ付いたモップ様を引き剥がそうと、引っ張ってぐちぐち文句言ってる。


「自分ばかりズルい、僕のなのに、僕が欲しかったのに、僕が作ったのに………。」


モップ様ももっさり王子も自由で、もう何が何だかわからず、されるがままの状態が精一杯だった。


しばらくするとチョコの形跡がすっかり無くなった。


せっかく作ってたのに……なんなの?

2人ともチョコ大好きなの?

途中だったんだけど……。


もっさり王子は嘆き悲しみ、私は呆然と困惑、そして手元には1つのチョコも残らず、行きと同様身一つで屋敷に帰る羽目になったのだった。


む、無駄な時間すぎる………なんだったんだ。







今回も読んでくれて、ありがとうございます


不思議パワー知りたかったけど、残念だったねもっさり王子


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 王子に常識はないの? 平民のがましなレベルな話なのだが…
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