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90 なんで見たいの?

閲覧ありがとうございます

ブックマーク100件 めちゃくちゃ嬉しいものですね

本当ありがとうございます

もう2月。


バレンタインが来る。


随分先だと思っていたけど、まあまあ色んな人が色んな事をしてくれるから早かったな。


こっちとしては暇でもなかったし、すぐ楽しめるのはありがたい。


この世界にはバレンタインっていうイベントがないけど、これなら私だけでもできそうだから勝手にやってしまおうと前々から決めていた。


やっぱり楽しい事をしていかないと、ルキアーナちゃんのやる気も出ないと思う。


とりあえず似たイベントがあってもいけないし、年間イベントがわからないので、記憶喪失設定を発動させ、イベントを覚えていないんですう〜とオリビアさんに聞いてみた。


するとこちらの世界のイベントを教えてくれた。


と言ってもイベントなんてほとんどなかった。


イベント的な祝いなんて誕生日、婚約、結婚、くらい。


ひな祭り、こどもの日、母の日、父の日、ハロウィン、クリスマス、などいうものはなーんにもなかった。


前の世界はイベント多かったんだな〜。


ありがたかったんだな〜楽しかったな〜と懐かしく寂しくなったのは仕方ない事だと思う。


貴族は社交シーズンがあり、春から秋まで茶会だの夜会だのたくさん参加しないといけない。


だから、それ以上の行事は不要なんだって。


むしろ反対に忙しいくらいらしい。


出会いを求めて良縁を家同士で求める。


それはそれは必死なイベントなんだとか。


ルキアーナちゃんは王子らのおかげである意味不要な集まりだから、王宮主催以外出なくていいらしい。


あとまだ子供だしね。


毒花達も王子を射止めたいが、いい出会いを逃すこともできないから良家の令嬢はせっせと夜会に出向く。


家を背負ってる令嬢って大変なんだなと改めて思う。


結婚しなければしないで許される世界、よかったな〜。


ついつい前を思い出して、思いを馳せてしまう。


平民も合わせて共通な年行事は、3月にある花贈りと4月の花祭りと秋の豊穣祭くらい。


花祭りは貴族集まれの号令の祭りでもあり、春が来た事を盛大に祝うので家を溢れるほどの花で着飾るらしい。


花で溢れると聞くと楽しみだ。


秋の豊穣祭は各領地で催しが違うので、旅行にも向いているらしい。


去年は私の体調も考慮して、旅行は控えてたんだって。


残念。


今年は行って楽しめたらなって思う。


そして差し当たり近い花贈り。


花贈りというのは、3月に男性から意中の女性に花を贈るというものだ。


季節的に春が来る事と、告白して春が来る事、カップルの人は春のように咲き誇るよう想いは色褪せないなどをかけてのイベントらしい。


妙齢の男性、女性にとっては一大イベントらしい。


まあまあそれはバレンタインと趣旨が近い。


なんならホワイトデーっぽいし、それならやっぱりバレンタインやりたい。


花贈りの前に、日頃の感謝を込めてチョコレートを手作りして2月にプレゼントしたいと、オリビアさんに相談してみた。


もちろん男性に好意を伝える云々は面倒なので抜きで説明した。


父やオリビアさんにも感謝を返したいと話すと、抱きしめられ、これでもかと製菓用チョコを用意してくれた。


お菓子が久々に自分で作れる。


しかもチョコ、いつぶりだろうな。


バレンタインにチョコ作るとか。


何を作ろうかとワクワクする。

そして手作りを考えるとウキウキしてくる。


廊下でスキップ気味に歩いていると、もっさり王子が首を傾げたまま音もなくすうっと寄ってきた。


「そ…わ…そわ……し…てる……何故?」


普段なら警戒するのに浮かれていた。


「お菓子を休みに作るんです。それが楽しみで。」


素直に答えると、傾いていた王子がビシっとまっすぐになり。


「いつ!」


目の前にもっさり髪が回り込んできて、更にいつになく大きな声にびっくりした。


「ギャっ!」


驚いて後ろに体を引くと、黒ロープで転けないようにぐるぐる巻きにされた。


「早く言って!」


驚かせた上にぐるぐる巻きで、理不尽。


「この日曜日です。」

「見…たい。」


被るように返答した王子に意味がわからない。


「はい?」


首を傾げると。


「見…たい。」


再度同じ事を言われた。


なんで見たいんだ?

ハンバーグ作りを見るのが面白かったのか?


「でも公爵家で作るのですが。」


「ダメ…見れ…ない。」


目の前で腕でバツを作る。


「そう言われても……。」


体を抜け出そうとモゾモゾ動きながら、困って眉を下げると、

「離宮……で作っ…たら…いい。好き…に使え……る。」

もっともっさり髪が寄ってきた。


もう顔に触れる寸前だ。


近い。


ほんのり草と石鹸の匂いがする。


ちゃんと清潔にできてるんだな〜全然関係ない事に気付いてホッとした。


変な少年だが、無事に大きくなれて良かったねと急に思う。


は〜やれやれ、だいぶおばさん絆されてる。


料理に興味が出たのね。


はいはい、しょうがないな。


「分かりました。」


ため息をつきつつ、苦笑いで肩をすくめたのだった。


  ♢♢


そう言って解放されたのがこの間。


許可したのを後悔した。


さっき王宮へ行く準備を屋敷の調理場でしていたら、結界が割れ砕け、壁が急に裂けて黒いロープが何本も伸びて出てきた。


もちろん多く料理人がいる中、もっさり王子が現れるわけがない。


ただ不気味に蠢くロープが次々荷物を裂けた壁に取り込んでいく。


その異様な光景に、調理師たちが阿鼻叫喚で逃げ惑った。


「落ち着いて、大丈夫!」


って言っても、見た目が悪すぎて説得力がなく、パニックは続いた。


最後の一個が吸い込まれ、壁が元に戻るまで酷い時間だった。


遠い目をした私は悪くないと思う。


私が持っていくのを大人しく待っていてくれたらいいのに、手伝おうとしてくれてるのだろうけど、これでは怯えられる元だろうと思う。


なんかやり方が間違ってるよね…。


感覚のズレたもっさり王子にため息が出ながら、身一つで王宮に馬車で向かったのだった。







今回も読んでくれて嬉しいです


最近のもっさり王子は黒ロープの扱い上手になったよね

自分の手足のように使えて便利


よければ評価やブックマークをよろしくお願いします

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