8 魔力が流れない訳
閲覧ありがとうございます。
いつもの晩餐の後、父に応接室に来る様に言われた。
なんとなく、あの昼の図書室の鍵が開かない件だと思った。
私はルキアーナちゃんだけど、中身は違う。契約した魔石って言ってたし、開けれなかったからルキアーナ偽物説が出ていたらどうしようかと不安になる。
気分が乗らないが、中に入らないとダメだろうなと応接室のドアを見つめる。
「ふう………。」
深呼吸して意を決してドアをノックする。
すぐ父の返事が聞こえて、中に入る。
ソファには父とサンタール医師、そして見知らぬ男性が1人座っていた。
「ルキアーナ参りました。」
ドレスを摘んで挨拶する。
「こちらにおいで。」
父の手招きと、サンタール医師と見知らぬ男性が立ち上がり迎えてくれる。
初めて見る男性は父と同じくらい背があり、艶々の濃青色の長い髪を一つにまとめ、同じく青瞳をして理知的な眼鏡をかけていた。
イケメンばかりだな。
父に続き眩しい。
サンタみたいな、サンタール医師にホッとする。
近付いて父の隣に立つ。
「これが、娘のルキアーナです。ルキアーナ、こちらは王宮魔道師団の師団長をしておられる、マレフィセント・エーデル侯爵殿だ。」
「ルキアーナ・ノア・ウィンテリアです。」
膝を少し曲げて挨拶する。
王宮魔道師さんなのね。魔法の世界!
しかも魔女マレフィセントと同じ名前。覚えやすい。
エーデル侯爵様は私の目の前で胸に手を当てて、ニッコリ挨拶してくれる。
「宰相閣下にはいつもお世話になっております。マレフィセント・エーデルです。今日はお招きありがとうございます。」
招いた覚えがない。父を見上げると、
「サンタール医師から聞いた。魔力についてエーデル侯爵の意見も聞きたくて、私が招いたのだ。」
やっぱり、そうですよね〜。
そう思ってた。
「早速ですが、魔力を確認するために、お手に触れても?」
屈んで見つめてくる。
イケメン耐性ないので、近いし触られるとか、無理。
思わず手を後ろに隠してしまう。
クスクス。「振られてしまいました。」
笑って首を窄めても、絵になるな。
「ルキアーナ、お前のためだぞ。エーデル侯爵は魔法に関しては王国一で、魔力も底なしと言われている方だ。安心しなさい。」
父に背を少し押される。
「はい。」
しぶしぶ手を差し出すと、エーデル侯爵は苦笑しながら、
「本当にお可愛らしい。」
と言って手を取った。
恥ずかしくて、思わず手を引っ込めるように力が入る。
けど、力が入ってない様にみえて、手が抜ける気配がなかった。
エーデル侯爵の青い瞳と視線が合う。
瞳が光った瞬間、体中をぞわりと何かが走った。
気持ち悪い‼︎
「い…いや………」
フルフル首を振るがその間も手から何かが体の中に侵入して、這いずり回っている感じで、気分が悪い。体の中を悪い虫が、蠢いてるような気持ち悪さが半端ない。
涙が出てくる。
もう全身はぐるぐる回ったと思う頃、気持ち悪さが一気に消失して膝から力が抜けた。
力強く抱き止められる。
ブルっと身震いして目を閉じて、浅い息を吐く。
頭の上でエーデル侯爵の声がする
「無理強いして、すみません。ルキアーナ様の魔力に抵抗があり、凝ってはないのですが、魔力にバラツキと言いますか。チグハグで流れが悪そうでしたので、私の魔力を流し、攪拌させてもらいました。ご気分が悪かったと思います。今は混ざり合って潤滑に回っているはずです。」
私の涙を指で拭ってくれる。
「大丈夫か?」
跪いた父が顔を覗き込む。
ぎゅっと服を握ったまま、こくんと小さく頷く。
「は〜こんなすごく濃厚な魔力初めて触れました。そして、しがみつく、なんと可愛らしい事か。」
そのセリフに一気に離れようと足に力を入れたら、父にもエーデル侯爵から体を剥がされた。
握りしめてたのは侯爵様の服だったのか、気づいたら顔に血が昇って行く。
きっと真っ赤だ。
「エーデル殿、過度な接触は困りますな!」
私を背に隠してから、目を細めて射抜くように父が言う。
「これはこれは、大変失礼しました。」
悪びれた様子なく、腰を折って頭を下げるが、目は私と合っていた。
「宰相閣下が溺愛するはずです。これは籠に入れて守るに越した事はないです。力になれる事は何なりと、悪い虫は払ってみせましょう。」
色気ダダ漏れて、目が光る。
これは近づいたら、いけない人だ。
サッと父の後ろに顔も隠す。
「ゔゔん、頼る事があった時は、またお願いしよう。それで、どうでしたかな?」
エーデル侯爵は顔を上げると、思案する様に父に言った。
「魔力が凝って流れにくくなって、魔毒が邪魔しているのかと思っていたのですが、そうではありませんでした。ひとまず魔力暴走もなさそうですし。うーん…………なんと言いますか。ありえないのですが、芳醇な魔力に異なる魔力がわずかに点在していたような、言うなれば2種類の魔力が存在していて阻害しあっていたような感じでした。」
ギクっ
「魔力の質は魂由来ですから、1魔力しかないはずです。恐怖体験で魔力が淀むとは聞いたこともないですし、急に2種類の魔力が出来るのは考えにくいですな。」
サンタール医師も自前の髭に触れながら首を傾げる。
ギクギクっ
そうかもしれない、ルキアーナちゃんの中に私が入って共存してしまったのだから、あり得る。
私のあるかないかわからない魔力が邪魔していたに違いない。
父の後ろで小さくなる。
「今は大丈夫になったのだろうか?」
父が聞くと、エーデル侯爵はしっかり頷いた。
「はい、混じりあって一体化に近くなったと思います。膨大な豊潤魔力にやわらかい魔力が細かく混じり、とても美しい魔力になりました。魔力も流せると思います。」
父の後ろで手を見つめる。
確かに何か体を巡っているように感じるような感じないような? 血行が良くなった?
少し暖かい薄い膜に体が覆われた感じだ。
よく分からん。
さらにエーデル侯爵は続ける。
「ルキアーナ様、申し訳無いのですが、もう一度手をかしてもらえませんか?」
ヴッ⁈
またあの気持ち悪いの?
不審そうに父の後ろからエーデル侯爵を見上げる。
「侯爵殿、先程過度な接触は避けるように言ったはずでは?」
父の聞いたことのない低い声にビックリする。
見上げて見た父の目は冷たい。けど、それに臆した感じのないエーデル侯爵。
「魔力が流れるようになった今、流し方をお教えしておいた方が良いと思うのですが。先ほどの気持ち悪い事にはなりませんし。」
父は片眉を顰めたが、もっともだと思ったのか私を見下ろした。
確かに魔力の扱い方は知りたいし、今なら分かる気がした。
それに心配していたルキアーナ偽物説も出てないようだし、ちょっと危なそうな人だけど、気持ち悪くないなら。
父と目を合わせて頷く。
エーデル侯爵の前におずおず出ようとして、一歩踏み出したら世界が回った。
そこから記憶がない。
閲覧していただき、ありがとうございました。
若干ロリコンチックなエーデル侯爵登場!
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