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88 悩める医師

いつも閲覧ありがとうございます

今日も元気よくお勉強で王宮に来ている。


後ろから付いてくるもっさり王子の有能さにちょいちょい驚くが、つかず離れず歩くこの距離感にも違和感なく慣れてきた。


そして今日は寒いけど嫌がるもっさり王子を無視して休憩時間に東の庭園にやってきた。


なぜかというと、マナーの先生からこの時期だけここの庭園が氷と雪の幻想的な庭園になると聞いたから。


すごく美しかったとうっとりする先生を見ていたら、行きたくなった。


入ってすぐ。


「うわ〜!」


綺麗さに目を奪われた。


見えた噴水は湧き上がる水と滴る水が凍って芸術作品のよう。


木の幹や花は氷で覆われて艶やかに光り、葉は雪を纏っており、とても綺麗だった。


「すごい綺麗ですね。」


振り返ってもっさり王子に言うと、王子はめっちゃ寒そうに内股猫背で震えていた。


それはそれは寒そうに縮んで、

「そ…かな…さむ……かえ…ろ…う。」


えー、もう?

今来たのに。


スンっと目が座る。


帰りたがる王子にテンションダダ下がりだ。


些細な抵抗で、もう少しいたいからベンチを探した。


けど、見つけたベンチは座るには勇気がいる代物だった。


氷でできている。


間違いなく冷たいよね。


でも座って写真撮ったら映えるよね。


座ったルキアーナちゃんを想像して、いいっと心の中でガッツポーズしていたら、奥のベンチに先客がいるのが見えた。


先客は足を投げ出している。


誰だ?


近づいて覗くと白衣に短髪ピンク頭。


頭を下げて、珍しい格好だな、ルンバール先生。


首を傾げて更に近寄っていく。


霜を踏んで小さくパキパキ音が鳴る。


音に気付いてルンバール医師が顔を上げると、目を見開き姿勢を正した。


「ルキアーナ様!とネイク様。」

立って胸に手を当てて礼をしてくる。


「先生も休憩ですか?」


さっきの姿は見なかった事にして、無邪気な感じで聞いてみる。


「はい、少し気分転換に。」


その表情はいつものはつらつとした感じが薄い。


本当は聞かない方がいいのだろうけど、気になった。


「どうかされたのですか?」


ルンバール医師は遠くを見ながらゆっくりベンチに座り直した。


「少し考え事を。」


たった一言でも、白い息が舞う。


何か寂しそうにも感じる。


「考え事をするには寒すぎませんか?」


私が言うと、ルンバール医師前を見たまま。


「寒いくらいが丁度いいです。頭を冷やしているのです。」


「頭を冷やす…。」


冷えすぎでは?

何かの懺悔?


眉を顰めていると、やるせなさそうな顔をした。


「私はね、私は北の地の討伐の際に診断を誤ったんですよ。それで皆を危険に晒してしまいました。ですから少し頭を……。あの時………ルキアーナ様が判断してくれなければ、いえ、救っていただき、本当に感謝しているのです。」


感謝しているのだろうけど苦しそうに見える。


「それは良かったです。でもこの間のは、原因がわからない事案で仕方がな…「それでも私はカリミナさんと協力して治癒していくべきだったのです。」」


私の言葉をかき消すように言ったルンバール医師の声は震えていた。


「………。」


あ〜、まあね。


厳しいかもしれないが、それはそうと思ってしまう自分もいて、言葉が出なかった。


でも呪いとかもある世界だし、医療の発展が少し遅い世界だし、そりゃあ判断が難しくても仕方ないんじゃないのかな。


確かに今回のあれは感染だし、1人ずつでも隔離して治していけばよかった。


そんなに難しくはなかった。


けど、それは私だからだ。


だって私の世界には似たような感染、インフルエンザがあった。


経験してきているから、治療法や対処法が分かる。


だから出来ただけで、経験がなければ、未知の物は病か、呪いかって判別は難しいよ。


どのくらいで広がって、いつ倒れるかわからないのだから。


けどさ〜、判別できなくても、こっちの世界には対応とか関係なく魔法があるじゃん、万能な治癒魔法。


ズルい治療法だと思う。


なんでも治せるんだから。


まあ、万能治癒魔法も制限はあるよ。

使えるのは治癒師だけだし、治癒師の技量で使える魔法量も決まっている。


それを踏まえて考えるに、ようは治癒魔法の使い時を間違えただけ。

もう少し手前で治癒魔法を使い始めてたら、感染の規模は小さかったとは思う。


「も、もう経験したのですから、これから同じような事案では早めに対応できますよ。」

次に希望を持って発した。


「私は辺境の出なのです。」


「は、辺境?」


急にルンバール医師の発した言葉に反応できず繰り返す。


そんな私にルンバール医師は眉を下げて微笑んだ。


「そう、私の家系は治癒師が多いのです。そこで私という男児が生まれてしまい、薬師に。なかなか一族から認められず薬屋で働きました。薬やポーションを作る事が得意で王宮にも御したんです。そうしたら医局長にいい腕だと言われて医師という道を推されて進んだのです。患者の症状を診て、診断して薬を作る。とてもやりがいを感じ、自分の居場所を見つけた気がしました。」


瞳が輝いて話すルンバール医師の顔は、本当に医師という職が好きなのだと伝わった。


「けど、私は判断できなかった。知らない病とはいえ対応を誤り遅れました。私が討伐隊の命を預かっているのに、危険に晒し。守れなかった。ルキアーナ様が来てくださらなければ、最悪な事もありえた。」


懺悔するようにルンバール医師が頭を抱えた。


責任感が強すぎるんだな。


「そして医師である自分まで倒れてしまった。医師失格です。……ですから、ここで皆を支える自信が……医師を続ける自信がなくなってしまって……。こんな自分には医師は向いてないなと考えたり、なら薬屋に戻ろうかと考えたり。」


めちゃくちゃ弱気。


私こういうグジグジ言う人、無理。


「自信……、必要ですかね?」


少し冷めた目で見ると、ルンバール医師が怯んだのがわかった。


「え?」


「仕事って自信満々でやっている人の方が少ないですよ。医療なんて初めての病気、知らない病気なんていくらでもありますよ。でもその中でみんな手探りでも患者のために頑張っているんです。それを投げ出すのであれば、いいんじゃないですか? 真摯に向き合ってもらえないなら医師として信頼できませんから。正しい判断は医師ならば求められるでしょう。迅速な治療も求めてられるでしょう。今回治癒に時間はかかりましたし、先生も確かに病で倒れました。医師は無敵ではなく、皆と同じ人間です。病に倒れる事もあります。それを失格だなんて……。ルンバール先生は危険を自分が一手に引き受けて、カリミナさんを守っていたのでしょう? 未知の事に1人で対応するのは、それはそれは怖かったと思います。そもそも医療はチームで行う物です。でもたった1人しか赴いておらず土台無理な事なのに、それでもその判断が出来たから皆が助かったのですよ? 治癒師であるカリミナさんまで倒れていたら救えませんでしたから。私は先生の判断が間違っていたとは思いません!」


はあはあ、白い息を吐きながら一気に思いを伝えた。


ルンバール医師は目を見開いたまま固まっていた。


一言も先生は返さない。


「私は私の不思議現象の解明に奔走してくれたり……まだ解決してないですけど。あと、治癒魔法の新たな検証に取り組んだり、なんでも真剣に向き合ってくれるから、信頼できる医師だなと思っています。そんな先生だから安心して診察が受けれるのです。でも、今の先生に本音は言いづらいですね。先生の心がしんどい時に頑張れとは言いません。でも本当にここから離れたいのかは、よく考えて下さいね。ここから離れる時は逃げるのではなく、行った先でこれをするから!と決めてからにして下さいね。でないと格好悪いですから!」


フンと身を翻すとドスドス歩いて行った。


もっさり王子の存在をすっかり忘れていて、歩いてる時に急に見えてビクッとしたがそのまま歩いた。


後ろから王子が黙ってついてきた。


何も言わず。


そして王宮の建物に入った瞬間、

「説教……大……好き………。」

と、もっさり王子につぶやかれ。


「だよね〜。」


廊下で膝を付いて項垂れたのだった。








読んでもらえて嬉しいです

なんとか投稿できた


今回はルンバール医師に千笑が喝を(笑)


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