87 従者に向いてます
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もっさり王子が従者として馴染んだ。
相手は通りすぎる時、私に挨拶をするが、基本従者に挨拶する人はいない。
誰も見ないし声もかけてこない事が最高な環境のようで、だいぶ猫背が治ってきている。
おかげで霞目マントがお役ごめんとなった。
違和感を感じ続けているのは私だけか?
連れて歩くことに全く慣れない。
なんで一緒に歩いているんだろうと、ふとした時に自問してしまう。
今日もなんでと思ったところだ。
上の空で王宮の廊下の角を曲がりかけた時。
「邪魔ですわ!」
ドンと肩をどつかれた。
反動で横に倒れ………
なかった。
お腹を見ると黒ロープが巻き付いていた。
おお、もっさり王子!
触りもしないが助けてくれた。
「ぎゃー!」
ぶつかった相手は奇声を上げて尻餅をついた。
斜めの体制のまま見ると、ブルーに輝く鱗の様なドレスを召したベラドンナさんだった。
もっさり王子と黒ロープを交互に指さしながらアワアワ言ってる。
うん、びっくりするよね。
「あ、あ、き、気持ち悪い従者を連れて歩くものではないですわ! それに、そ、それ、なんですの? 気持ち悪い……。」
指を震わせている。
「殿下ありがとうございます。」
コソッと礼を言うと、ちゃんと立たせて黒ロープを消してくれた。
「ベラドンナ様、危ないですよ。曲がり角は人がいる場合があるのですから。」
ベラドンナさんに手を出しながら注意すると、手を叩かれた。
「いりませんわ。気をつけるのはルキアーナ様もでしょう? もっとよく見て歩きませんと王太子妃が恥ずかしくてよ。」
あなたもですがと思う。
ベラドンナさんはぱっぱとドレスの裾を直すと、キッと私を睨み。
「まだ王宮に居ますの? しつこいですわね、子供は聞き分けも大事でしてよ。それにその従者も気持ち悪いですわね。全く品位を疑いますわ。ふん!」
もっさり王子を一瞥すると光が蠢くドレスを翻して行ってしまった。
相変わらずだ。
……けどもっさり王子に気持ち悪いは不敬だが……。
チラッと王子を見ると、王子も私を見ていたようで。
「………だ…れ。」
誰と言われても、毒クラゲラブのギラギラ女子。
「確か、ベラドンナ・アルカロイド?……さん…だった……かと。」
こっちの世界の人の名前を覚えるの嫌い、長い。
自信なく答えると、
「ああ……外務……大…臣……の…娘…か。」
意外にもっさり王子は知ってるようだ。
「ご存じなのですか?」
「き…ぞく……名鑑……全部………覚え…て…る。」
ああ、それで名前を。
って、すごいね、あんな分厚い名鑑。
なかなか覚えれないよ。
「なん…なの…あ…の…人?」
「キロネックス殿下が好きなんですよ。殿下の側にいたくて、私を嫌っているのです。」
そう答えると、揺れていたもっさり王子が固まった。
「兄上の側にいるのは僕。あんなのが寄ったら兄上に良くない、害悪は消さなくちゃ。この世から。」
そう言って進み出した。
物騒‼︎
咄嗟にもっさり王子の服を掴んで止める。
「ダメですって!」
王子は大きいからなかなか足を止めてくれない。
私の方が引きずられる。
構わず角を曲がり、ズンズンベラドンナさんに近づいていく。
勘弁してよ。
「大丈夫、大丈夫。キロネックス殿下は相手にしてませんから、多分? 絶対第二王子殿下の方が1番側に望まれてますよおおお〜。」
そこまで叫ばせて、やっと止まった。
「そう…1番……1番……。」
グネグネ動いてる。
はあ〜しんど。
力を入れすぎた手を振りながら、
「道がはずれてしまったじゃないですか! もう、行きますよ。」
もっさり王子に手招きしながらダンスホールへ向かったのだった。
♢♢
ところが今日はまた毒花が生息していた。
ダンスレッスンが終わり講義室に向かっていると、柱の影から足が出てきた。
これ、この感じ前も、青い、真っ青なヒールが見える。
見えてるんだよ、スローモーションで見える色白な足。
でも、咄嗟に避けれない。
引っかかる寸前目を瞑る。
もう、引っかかっ…
グッと腹が締まり体が止まった。
目を開くと、またお腹に巻かれた黒ロープ。
足が上がったまま、引っかかる手前で止まってる。
顔を上げると、足を伸ばしてるサーフランさんと目が合った。
「あ、あ、……どうも。」
私は前傾姿勢で倒れる寸前のままだが、苦笑いになる。
サーフランさんは顔が引き攣って、足が仕舞えてない。
「足、足。」
指さして言うと、サーフランさんは顔を逸せて足を素早くしまった。
「な、何かしら?」
いや、とぼけ方。
「いいえ。」
「何よ、従者なんて付けて、公爵家の財力を見せつけているの? でも、プッ、つけるならもっと見目麗しい方を付ければいいのに〜。 ちょっと気持ち悪い方ですね。ルキアーナ様にはピッタリですわ。」
言いたい放題言われた。
そしてふふんと笑うとご機嫌そうに去っていった。
サーフランさんに背を向けて、もっさり王子を覗き込む。
「殿下、重ね重ね、ありがとうございました。それと大丈夫ですか?」
人を笑って馬鹿にするとかありえない。
不安気に聞くと、気になってないのか首を傾げながら、ちゃんと立たせてくれた。
「何…が……?」
何がって結構ひどい言われようだったよ?
聞いてなかったのかな?
私の方が首を傾げてしまう。
「あれ…は?」
サーフランさんが去った方を見ている気がした。
あの人も毒クラゲ推しだった……言うべからずだ。
「あ〜、私が好きではないようです……。名前は忘れました。」
明後日の方を向いて言う。
「家紋……コ…ルヒ……チン男爵……の…娘。………サーフ…ラン。」
え、怖っ。
家紋でわかるんだね。
なんか気をつけよう。
眉を顰めていると。
「い…つも……こん…な?」
もっさり王子が指をモジモジさせてきた。
ん?
ああ、毒花達!
「ああ、まあ、今日は重なりましたね。でも、たまにこんな時がありますかね〜。」
苦笑いして頭を掻く。
「ふ〜ん……へ〜……。」
真っ黒の体を大きくゆっくり左右に揺らす。
なんとなくオーラが怖いんですけど?
そのまま不気味な動きのもっさり王子の側に居続けるのは耐えれず、後退りして講義室に向かったのだった。
♢♢
今日は毒花2輪に出会ったから、もう変な事は起きないだろうと思って油断していた。
お手洗いに行くのにもっさり王子に。
「お花を摘みに行ってきます。」
って言ったら通用せず、
「つい…て……いく。」
と言ってフラ〜っと付いてきた。
「いや、お花、お花を!」
「だい…じょ…う…ぶ。」
「や、お花、おは、トイレ、トイレの事です! お手洗い行くの!」
赤い顔して叫ぶと。
「ああ、…ど…う…ぞ。」
平坦に返された。
くっと思いながら、もっさり王子を置いて離れた途端、後ろから掴まれ、目隠しされて、何かを嗅がされた。
揺れる振動に意識が浮上して驚いた。
暗い。
何も見えない。
「どこ?」
慌てて目隠しを取ったが、やはりここは窓もなく暗い。
目線の先にドアノブがあるのが見えて、ドアを開けようとするが鍵がかかっていた。
魔法ならルキアーナちゃんの能力でなんとかなったかもしれないが、鍵で閉められてるから押しても揺らしても全く開かない。
ドアノブがガチャガチャ言うだけ。
地味に原始的に閉じ込められた。
しかもずっと揺れている。
ゴトゴト聞こえるし、蹄のようなカポカポいう音が一定のリズムで聞こえる。
荷馬車みたいなやつか?
やばいな、またレッスン来なくて居なくなったとかって城が騒ぎになっちゃう。
それにこれって誘拐よね。
また別の殺し屋が雇われたのか?
ルキアーナちゃんの命が奪われる危険があるって事よね。
私もやばくない?
焦って、どんどんどん!
ドアを叩くが進む方向と反対方向にドアがある為、無意味に感じる。
「は〜。」
ドアに拳をついたまま、諦めてため息をつく。
「止まってドアが開いた時に逃げなくちゃ。」
グッとやる気を出して上を向いた瞬間。
「どこ…まで……トイレ……いく…の…?」
「ヒッ!」
真横から静かな囁き声がしてびっくりして飛び跳ねた。
「な…がい……早く……トイレ……おわ…って。」
更に暗がりから聞こえる。
顔を横に向けると、空間からもっさり髪が浮いていた。
「ギャ!」
びっくりして声を上げると、黒ロープでぐるぐるに巻かれて空間に引き込まれた。
「ひいいいい。」
「う…るさ…い。」
上から煩わしそうな声。
パッとロープを消すから、床に四つん這いになってしまったけど、見える黒いズボンと靴で相手がわかりホッとした。
「ありがとうございます。ごめんなさい、攫われると思ってなくて……。」
「外……やだ……勝手に……攫われ…?…と……トイレは?」
手を黒ロープで掴まれ立たされる。
「トイレじゃな……。」
「え……誘拐…?……さら……攫われた?………ねえ?」
動揺したような声をもっさり王子が出すがポカンとした。
だって見えた空間はテーブルマナーレッスンの部屋だった。
一瞬の移動に呆けてしまったが、すぐにノック音が聞こえて先生が入ってきた。
もっさり王子は何かぶつぶつ言っていたが、レッスンが始まったので私は動揺を隠して集中する事にした。
しかし本当に助かった。
この先生は時間にとても厳しいので、遅れていたら目の前のお茶やお菓子のお預けを食らって、長時間の説教を聞く羽目になっていた。
そして、それ以上に誘拐が回避できて良かった。
ルキアーナちゃんが無事!
今頃中に私がいないので、誘拐犯はびっくりしている事だろう。
助かったよ、もっさり王子。
ドアに控えてゆらゆら揺れてる王子を見て、心の中でめっちゃ手を合わせた。
そしてふと思った。
転びそうになればロープで救い、いなければ空間裂いて見つけてくれる。
怪我も遅刻も誘拐もない。
あれ?
これ………毒クラゲの言う通り、もっさり王子は従者として完璧なのでは?
王子ではなく従者に能力を開花させるもっさり王子なのだった。
読んでもらえて嬉しいです
もっさり王子なかなか有能〜
毎日投稿していたのですが、少し投稿がランダムになるかもしれません
なるべく投稿できたらと思っております
今後もよろしくお願いします
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