85 従者にしてもいいの?
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「最近経済学で金の換金率や各種職と給与形態などを熱心に学んでいるらしいな。」
そりゃね、最強の猛毒生物に会ったからね。
逃げる準備の為には知識がいるよね。
「そうですね。皆様の働きがどのような物があり、それに伴いどのように経済が成り立っているのか興味が湧いてきましたので。」
私の言葉にフンと鼻を鳴らす。
「逃げ口を探しているんだろう?」
嫌な瞳をして見つめてくる。
バレてるか。
「人生、誰しも道は1つではありませんから、いくらでも進む道は模索できます。」
お茶をこくりと飲む。
「まだそんな事を言っているのか。」
呆れ顔の殿下に目を細めて、
「まあ、側妃様に出会いましたから、逃げたくもなりますよ。」
本心を言うと、殿下はテーブルの上にあった手の拳を握った。
「無理……だぞ。」
絞るように出した声は小さかった。
声からだいぶ殿下も側妃様にやられてきているのかもと思った。
けど私はルキアーナちゃんを守りたい。
「殿下は息子なので無理かもしれませんが、私は違います。まだ何物にも縛られておりません。言いたくありませんが命を狙われるのは、私が居なくなっても他の誰かがそこに立てるという事です。能力を買われているのでしょうが、死んでしまえばそんな能力は無いも同じ。劣るけど次に能力の高い女子なら誰でもいいんです。なら黙って消えて知らない所で暮らしても大丈夫という事ですよ。能力ではなく私を見てくれる方と幸せになりたいですし。」
ルキアーナちゃんの幸せの構想を伝える。
ネクス殿下の目つきが鋭くなる。
「簡単に逃げれないぞ。王も母もお前に執着している。それに命は奪わせないと言った。」
簡単に逃げ出せるとは思っていない。
逃げるにしても力と知識が足りない。
したい事をする為には、学ばなくては。
その為に今はこの環境で我慢だ。
私は頷くと、
「わかっています。守るという事に関してはありがたく思っています。でも殿下方を選ぶまで時間がありますので、しっかり学ばせていただきますよ。その上で逃げるか、腹を括るか決めさせていただきます。」
道を決めるまで絶対に選ばないという意思を伝えた。
殿下の握った拳から音がした気がして、しばらく睨み合った。
均衡を破ったのは、ネクス殿下だった。
「そういえば従者が付いたらしいな。」
全く思ってもいない事を言われて理解できなかった。
「は?」
誰に従者?
意味がわからず聞き返す。
そんな私の顔を見て、ネクス殿下も首を傾げる。
「王宮を歩く際にルキアーナ嬢が従者を連れるようになったと耳にした。侍従か?」
「いいえ。侍従などおりません。」
「そんなはずないだろう。常々ルキアーナ嬢は護衛が少ないと思っていた。モフだけでは手薄いと感じていたから、侍従をつけるようにしたんだろう?」
モフ……まだ返した事聞いてないのか。
なんと言うべきか。
「黒い装いで目立たず、ルキアーナ嬢の後ろをついて回っていると聞いた。」
「………。」
もっさり王子。
なんと言うべきか。
あなたの弟はストーカーがしたいと言ってついて回ってますと言ってもいいのだろうか?
黙る私を見て、
「黒い装いということは魔術師か? それもいいだろう。」
勝手に言い募る。
「まあ、見た目は黒髪に黒服にグレーマントで魔術師っぽいですが……。」
上空を見つめてもっさり王子を思い浮かべる。
歯切れの悪い私に気付いたのか、
「まさか………いや……そんな事…………。」
言葉を濁して訝しげに見た。
頷くと、
「本当に……ラトなのか?」
今日一目を開いた。
まあ、びっくりするよね。
何がどうなったら、第二王子が令嬢の後をついて回っているのか。
変な光景だ。
ネクス殿下はカップのお茶を一口含むと、
「どうしてそうなった? そんなに仲良くなったのか?」
なんだか剣呑な声を出した。
仲良く?
それに首を傾げる。
「仲良くはわかりませんが、何か興味を持たれたようなのと、モフの代わりをするとおっしゃられて。」
経緯を簡潔に言う。
「は?」
カップを持ったまま殿下が固まった。
これには殿下にも謝ってもらわねば?
「ですから、私は第二王子殿下からモフで盗聴していた旨を聞かされて、流石にそのまま持ち続ける事も謀れたので、モフをお返ししたのです。けれどもその事を第二王子殿下は殿下に言うことが出来ず、ご自身がモフの代わりの監視をしておられるようです。」
少し睨み気味に言うと、殿下が少しきまりの悪そうな顔をした。
「盗聴できる事、知らなかったのですけど?」
目を細めて見つめる。
うぐっと殿下が息を詰めたが、知らぬは存ぜぬは通用しないぞと見つめ続ける。
観念したのか、殿下が深く息を吐いた。
「すまなかった。盗聴の報告は受け禁止させたが、そもそも、お前が勝手にラトを脅して北の地に行くのが悪いだろう!」
殊勝だったのは初めだけで、急に怒り出した。
は?
なんで急に私が怒られてんの?
「いや、それでも許可したらダメでしょう?」
「緊急事態だろう、あっちの状況がわからないのだ、使えるものは使う!」
「まあ、それも分かりますけど、それはそれ、これはこれですよね。ですのでお返し致しました!」
ツーンとそっぽを向く。
「危険だろう。何のために監視を付けたと。」
殿下のため息が聞こえた。
「ですので、殿下の意向もあって第二王子殿下が内緒で監視してくれているのだと思いますよ。」
「あいつは……。」
頭痛でもするのか片手でおでこを押さえている。
「怒らないであげて下さい。」
小さな声で言ってみる。
「なに?」
嫌そうな顔を上げてきた。
「監視はまあそうなのですが、理由はなんであれ、ご自身で城の中を歩き始めたのです。普通に歩けているわけではないですけど。離宮から出歩く事ができたのは良いことかと。」
ゴニョゴニョ言い訳じみて思っている事を言う。
目の前で考えるような表情で殿下が黙った。
なんか気まずいので、トロピカルフルーツにも手を出す。
甘くて美味しい。
次々に口に入れる。
喋りすぎて喉が潤う。
ここのフルーツめちゃくちゃ美味しいな。
夢中になって食べていると、
「わかった。」
急に声がして目をぱちくりさせてしまう。
えっとなんだっけ?
呆けていると、怒り気味に、
「盗聴は悪かった。ラトの事も理解した。しばらくそのまま弟に監視させるぞ。」
言って顔を背けられた。
その態度は謝ったのか?
譲歩しているつもりか?
眉を寄せてしまう。
「監視は殿下にこちらと彼方が離れていても会話できる物の作成をお願いしておりますので、それが出来上がるまでです。というか、もう監視ならネクス殿下の部下を誰か付けてもらった方がいいかと。おかしくないですかね? 私が第二王子殿下を連れているのは。」
今まで面倒みた数々を思い出してウンザリして言うと、おかしかったのかネクス殿下が意地の悪そうな顔をした。
「いいや、ちょうどいいではないか。弟を知るチャンスだぞ? しかも弟は顔を知られていないから、少々連れ歩いても問題ないぞ。対外アピールにもならんしな。あいつが人に慣れてくれるのなら、こちらも助かる。」
おかしいだろう?
それは私の役目じゃない、家族の役目だろう!
「はい? 私の役目じゃないですよ?」
「従者が誰か気になって聞くためには茶会を開いたが、そうかラトか。まあ、この際従者でも良い。連れ歩いて人に慣れさせてくれ。あいつなら監視役なんなら護衛も適任だな。」
ふんぞり返って腕を組んだ。
何を言ってるんだ、この毒クラゲは!
「いいように使うんじゃない!おかしいと思う!」
叫んだけど、ネクス殿下はおかしそうに笑うだけで、相手もしてくれなかった。
トロピカルな雰囲気で本来ならテンション爆上がりする所が、ちっとも楽しくない私なのだった。
もっさり王子の従者なんて、いらない〜!!
閲覧ありがとうございます
なんかもっさり王子がストーカーから従者になったね
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