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81 毒クラゲの母

閲覧ありがとうございます

ダンスレッスンの後ストーカー行為が続くのかと思ったが、もっさり王子がマントを掴んで震えた。


「…あ…あ……ああ…、のろ……呪……い…が……とけ…てる。」


膝から崩れ落ちた。


グレーのマントは光沢がなくなっているように見えた。


「ハッ……私か⁈」


「……きみ……い…がい…ない。」


恨めしそうな顔をしているんだろうなと思うような呻き声。


確かにめっちゃ掴んで王子から剥がしたね。


自分の両手を見つめる。


だってあのままだとオルドレ先生がずっと霞目だった。


「この…呪い…苦労し……たの…に。」


そう言うと王子は壁を裂いて何処かへ行ってしまった。


やっぱりマントないと歩けないようだ。


「やった〜1人だ〜。」


両手を上げて喜ぶ。


やっぱり1人はいい。

あんなでもずっと見られてたり付き纏われたら疲れるものだな。


なんとなく廊下の窓際に立つ。


今日は雪が降ってるんだね。

うっすら庭園が白くなっている。


「あ、医務室にオルドレ先生の事伝えておかなくちゃ。」


窓から離れて医務室に向いた時、遠くに煌びやかそうなドレスが見えた。


3人、いや4人。

体にグッと力が入ってしまう。


こっちの世界のドレス着た人はだいたいルキアーナちゃんの敵に見えてしまう。


だんだん近付いてくるにつれて先頭の人のドレスが一際輝いているのがわかる。


髪の色も白金色で光り、背も高くすらりと四肢が伸び、太くはないのだがとても迫力のあるスタイルをしていた。


途端に心臓が頻脈となって体が硬直した。


……え。


どうしたのこれ、ルキアーナちゃん?


あの近付いて来ているのは、側妃様よね。

褒賞式の時に見た。


動きにくい体を動かして、端に寄り膝を折って頭を下げる。


だんだん気配で側妃様達が近付いてきているのが分かる。


ドッドッドッ…。


心臓の音がすごい。


ルキアーナちゃん苦手だったのかな?


あれよね、側妃だから毒クラゲのお母さん。


名前なんだっけ。


覚えてないな、けどキツそうな美人だったはず。


……コツ。


ドレスが視界に入って止まった。


「あら、お久しぶりね。ルキアーナちゃん。体調はいかが?」


あの迫力から出ているとは思えないくらい、可愛らしく優しい声が降ってくる。


「お気遣いありがとうございます。ご機嫌麗しく、ご無沙汰しております。少しずつ回復しております。」

頭を下げたまま答える。


「褒賞式も見事だったわ。ネックスと揃って立っている姿はとても良かったわ。私の指導の賜物ね。よく披露してくれたわ。」


ネックス………隣に立ちたくはなかった。


「恐れ入ります。」


それだけ答えると、トンと肩に閉じられた扇子が置かれた。


ん?


チラッと見ると側妃様が扇子を当てていた。


「元気そうで本当に良かったわ。顔を合わせなかったから、心配してたのよ。王太子妃は健康も大事ですもの。歩けるようになって安心したわ。」


そう言った瞬間、扇子で肩を下に押される。


前屈みになりそうになるのをグッと踏ん張る。


この人……。


「回復してきたなら妃教育も再開ね。しっかり私が指導してあげるわ。私の言うことをしっかり聞いていれば大丈夫。あなたならできるわ。」


一言一言、言う毎に扇子に力がこもる。


元気なら何故会いに来ない?

私に教えを乞わない?

私がいないと、あなたは何もできないのよ?


押される毎に、副音声が聞こえるようだ……。


踏ん張れるが地味に肩が痛い。


「ありがとう…ございます。」


そう答えるのでいっぱい。


「あら、緊張しているの? 私とルキアーナちゃんの仲じゃない。ネックスとは仲良くしているかしら?」


急に扇子がなくなり、体が少しぐらついた。


けど今度は顎下に扇子を当てられ、顔を上げさせられる。


目の前にきつい美人顔があった。


朱色の瞳が弧を描いているが、黒いアイライナーがキツく引かれ目が強調されている。

赤い口紅が顔の派手さに拍車をかけていた。


白金の髪は美しく輝き、少しの乱れもなく綺麗に編まれている。


「相変わらず不気味な瞳ね。属性がないのに澄んで輝いて。」


眉を寄せて目をキツくしていったセリフは嫉妬だと思った。


自分より美しいのが許せないタイプ。

ルキアーナちゃんの瞳は本当に綺麗だもん。


「貴方が王太子を選ぶだなんて……。」


吐いた言葉に忌々しさが存分に含まれている。


「王が猶予を設けたとはいえ、16まで待たずネックスを選んでおしまいなさい。そうすれば貴方も良いことづくしでしょう。早くから王太子妃になれて、なんでも思い通りよ。意のまま。ネックスは素晴らしい王になるわ〜、あなたもネックスを支えれて幸せよ。第二王子なんて役立たずの屑なのだから、早く切り捨てたらいいのよ。勿体ぶる必要もないでしょうに。」


微笑みながらため息を吐くという芸当を見せてきた。


毒クラゲ以上に酷い言いようだ。


一歩ずつもっさり王子も頑張ってるんだぞと怒りが湧く。


イラついて目に怒りを浮かべると、

「何その瞳は、このわたくしに何か言いたいことがあるのかしら?」


扇子を左右に振られて顔が動く。


ま、言いたいことはあるが言っても仕方なさそうだ。


「いいえ。」


これでもかといい笑顔で返す。


一瞬側妃様が真顔になったが、すぐ笑って。


「いいのよ〜。私とルキアーナちゃんの仲なのだし、相談にのるわ。」


扇子で顎を上下させる。


顎離してほしい……。


「自分でしっかり考える事も必要ですので、側妃様を煩わせるような事は致しません。大切な事ですのでしっかり見極めてまいります。」


ルキアーナちゃんの夫なんだし、側妃様にとやかく言われたくない。


私がしっかり時間かけて見極めて、できれば逃げるから!


そういう思いをのせて言った言葉が気に食わなかったのか


「生真面目で融通がきかないのは変わらない!」

扇子を払った。


擦って顎が痛い。


少し顔を歪めると、嬉しそうに笑った。


そして真顔になると、

「見極めても結果は同じよ。時間の無駄になるわ。あなたにはネックスの子を産んでもらわないといけないのだから、どちらにしても結婚するの。なら早くに婚約してネックスの王太子を確実にした方が、あの子の為になるわ。あなたもその為に存在しているのよ。魔法も使えないあなたの価値は次代の王と聖女を産む事。分かるわよね?」


扇子でお腹を3度押してきた。


この人。

ルキアーナちゃんを道具としか思ってない。


「魔法は今学んでおりますし、まだ使える可能性があります。」


そう答えると、扇子を自分の頬に当てて、

「ああ、そういえば、王が許可していたわね。ついでに第二王子も学んでいるとか……。揃いも揃って無駄な事が好きね。欠陥品は優れた所だけ活かせばいいのよ。」


…………イラっ!


欠陥品⁈

何言ってんだ、このおばさん!


「人に欠陥品だなんて使う人がいた事に驚きます。殿下も頑張っていますよ?」


思わず言い返してしまった。


その瞬間、側妃様の目がスーッと細まり私を射抜いた。


「なに、口ごたえしているの? 誰に向かって言ってるの。あれを褒めるなんて許さないわ。」


冷たい声色に体が固まるが、

「訂正してください。殿下であろうと誰でも欠陥品なんて言われる人はこの世にはいません。」

譲れなかった。


「この! まだ言うの⁈」


カッとなった側妃様が扇子を振り上げた。


「なりません、側妃様!」


周りの人が悲鳴を上げると同時に私は顔を引いた。


この間の殿下の剣に比べれば遅い。

顔の前を扇子が通過して空振る。


そして素知らぬ顔をして立つ。


側妃様は目を開くと空振った事に腹を立てて、今度は腕を狙ってくる。


それもダンスのステップ同様後ろに飛んで避ける。


一瞬掠めた腕が熱く感じた。


意外にこちらの人ってドレスのせいか動きが鈍いのよね。


ルキアーナちゃんの服はマナーのおぼつかない私に合わせて身軽い物を着用している。


何度扇子を振っても当たらず、キーッと顔を真っ赤にしている。


スワロフスキーをこれでもかと散りばめているし、ドレープも多いドレスだから重そうだ。

キラキラ具合が毒クラゲそっくり。


しかも性格は更に良くない。


ルキアーナちゃんが苦手なのもわかる。

仲良くしたくないタイプだ。


絶対妃教育とか言ってルキアーナちゃんをいじめてたよね。


ブンブン何度も扇子振って何がしたいんだ。


周りの人を見てみなさいよ、みんな引いてるし顔が青くなってるよ。


そりゃそうよね。

ルキアーナちゃんの立場もまあまあ強いから。


ヒョイヒョイっと避けながら後ろに下がっていると、壁が突然開いて真っ黒な両手が出てきた。


「ぎゃー!お前は‼︎」

「「「キャー‼︎」」」


側妃様も周りの人も恐怖からか絶叫した。


けど私は声を出す前にその腕に捉えられて、空間に吸い込まれていったのだった。








今回も読んでもらえて嬉しいです


出てきました、毒クラゲ王子の母!


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