77 ハンバーグパワー
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ニコニコ食べるエーデル侯爵と、もそもそ食べるもっさり王子がとても対照的だ。
ほとんど食べてるし、美味しかったかな?
2人の食事を見ながら、もうなくなった手袋の感触を手を握りながら確認する。
「あまり変化を感じませんねぇ。」
エーデル侯爵が拳を握ったり開いたりする。
「やっぱりハンバーグではないんですよ。」
ホッとしていると、また後ろから手首を掴まれた。
そしてグイッと引っ張られ、
ぬちょ。
「わーっ!」
突然の感触にびっくりしていると、私に構わず手首を持ってるもっさり王子がハンバーグだねに私の手をぬちょぬちょ何度も突っ込む。
手がぬちょぬちょだ。
「何するんですか⁈」
ハッとして手を振り払う。
「……もって…かえ…る……。」
「あ、殿下!」
エーデル侯爵が手を伸ばすけど間に合わず、殿下がハンバーグ桶をもって空間から消えた。
「は?」
ハンバーグ気に入ったのか?
「焼いてないの持って帰って大丈夫でしょうか?」
ねちょねちょの手をグーパーしながら、心配になりエーデル侯爵に聞いてみる。
「どうでしょうか。焼く動作は見られてましたからね。自身でお焼きになって、落ち着いて召し上がりたいのかもしれません。」
首を傾けて壁を見つめてる。
「そうですよね、流石に生では食べないですよね。」
生はあたるから、食べるなよと心で願いながら後片付けに取り掛かったのだった。
結局、ハンバーグパワーが何だったのかわからなかったな〜。
ただのハンバーグだし、なんかあるなら大きすぎるみみずのせいだろう。
みみずパワーだな!
絶対そうだと思いながら、魔術師団本部を後にしたのだった。
♢♢
空間を潜って部屋に入る。
薄暗くたくさんの蔵書が積み重なった部屋。
スタスタ歩いて更に奥の部屋に入る。
テーブルに広がった紙達を払って床に落とす。
ヒラヒラ落ちる紙に構わずテーブルの上に桶を置く。
ハンバーグとは見たこともない食べ物だった。
食べ物は出来上がった物しか見た事がない。
料理が出来上がる過程を見ていて面白かった。
野菜や肉の形からどんどん変化して別物になるのが面白かった。
けどもっと面白かったのは、料理をしている時のあの子の手。
いつもは僕と真反対な理由で、魔力操作が苦手な子。
僕は魔力を出そうとしたら出過ぎるから、普段から出ないように漏れないように気をつけている。
でも彼女は自分で出す時は物凄く出しにくそうにするのに、無意識の時はわりに魔力が漏れてる。
気にしてもない。
僕は魔力が多いから、人の繕う魔力が見える。
だから彼女から漏れてる魔力が少し不思議な感じがしていた。
少ないから、はっきりとはわからないけど。
なんか僕の魔力に近いような……。
多分何か普通とは違うんだと思う。
でなければ、モップが食に利用したりしない。
おかしい、あの子は無属性のはずなのに。
何故微々と漏れる魔力が僕と近く感じるのか…。
闇も持ってない、何の属性も持たないのに。
だいたい漏れてる量が少なすぎるんだよ、余計にわからないじゃないか。
これでは今の僕の知識では、わからない。
そして……。
桶の淵に手をかける。
「料理してる途中に魔力が全く漏れてない事に気付いた……。」
そして、出来上がったハンバーグの皿を目の前に置かれた後から、また魔力が漏れ始めた。
食べてる間、ずっと見てた、小さな粒がポロ、ポロっと漏れてた。
師団長は気付いてなかった、夢中でハンバーグ食べてた。
もしその漏れた魔力にハンバーグパワーの元があったなら……。
この桶のハンバーグに変化があるかも。
まあ、無理やり手を突っ込ませただけだから、無いかもしれないけど。
盗聴していた時から気になっていた。
食べた後の皆の変化の声に、何故急に皆の能力が上がったのか。
そして実際ルキアーナ嬢がハンバーグを作る所が見れた。
普段の彼女と違う所、突然の魔力遮断。
わずかに漏れているだけだから、気付きにくいけど凝視していると、全く漏れて無いことに気付いた。
そんな事ある?
普段、魔力遮断の魔の字も知らない感じで、のほほんとしているのに。
料理の最中だけ魔力遮断するなんて。
考えれば考えるほど、この桶の肉が怪しい気がしてきた。
焼きたいけど、僕に魔法で火加減なんて無理だ。
使った途端、消し炭になってしまう。
「生でいいか。」
指で掬って口に入れる。
柔らかい肉に固い人参、辛い玉葱、それに少し生臭くてはっきり言って美味しくない。
もう1掬い、もう1掬いと口に運んでいく。
何口目からか、体の中心が温かく感じてきた。
「ん?」
お腹に手を当てて首を捻る。
何かが溜まってきてる感覚。
とりあえず何か魔法を使ってみるか。
いやまずいか、もしもがある。
空間を開けるだけにしよう。
指を目線の高さに上げ、30センチほどスっと下ろした。
ーーチュドドドオオーー…ンー……。
一瞬で黒い膜に覆われて後ろから前へ爆音と共に強風が吹き抜けた。
ガラガラと瓦礫の崩れる音がだんだん少なく小さくなっていく。
僕を覆った真っ黒な正体はモップだとわかる。
「ねえ、モップ、どうしたの?」
立ち尽くしたまま聞くと、背後から包みが消えていった。
徐々に見えた世界に、驚きすぎて目が落ちるかと思った。
空間を開いただけだったのに、目の前の部屋、隣、更に奥、続く部屋と屋根が全て消え失せて、ただ石ころが転がる床が続き、後は空だった。
「………はっ…。」
あのちょっと空間をと思ったのが、とんでもないサイズの空間が広がったようだ。
尋常じゃ無い威力に、一歩下がった。
テーブルすらない、ハンバーグも消えたようだ。
「は……はは……なにそれ。」
ただ冷たい空気が頬を撫でていく。
絶対あのハンバーグ……。
そしてルキアーナ嬢の手………奇想天外すぎる。
自分の想像がいつも追いつかない。
想像が乏しくて怒りさえ覚える。
無属性の魔力って何?
他人の魔力にこんなにも影響あるの?
威力ありすぎでしょ!
しばらくこの威力について考え、見える部屋に可笑しくて笑ってしまうのだった。
そして城に帰ってきた兄上が駆けつけるまで離宮を放置していたので、驚かれるやら怒られるやら心配されるやら兄上は忙しいな〜と眺めていたら、余計に怒られたのだった。
今回も面白いといいな
読んでもらえて嬉しいです
生のハンバーグ食べちゃダメじゃん
部屋が酷い事になってしまったよ
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