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76 料理に手袋しましょう

読んでもらえて嬉しいです

ありがとうございます

「さあ、どうぞ。こちらです。」


案内されたのは、魔導師団本部。


王宮内の調理場は王族の食事を司っているので、毒物の持ち込みの有無など管理が厳しく、誰でも出入りできるわけでは無いので、管理管轄がエーデル侯爵である魔導師団に来たのだ。


エーデル侯爵について歩いて行く。


初めて魔導師団の建物に来た。


裏には森が続き、色んな塔があり、屋根も尖っていたり、不思議な玉が浮かんでいたり、魔法を感じさせる場所だった。


魔女いそうな感じだな〜。

楽しくなってニコニコしてしまう。


ワクワクしながら建物に入ると、調理場は一階にあり、割に広かった。


料理人もいる中、エーデル侯爵が一角を用意してくれていた。


料理人達はハンバーグを作ってみたようで、実際創作した私にも興味津々だった。


そして作るのが決まっていたように、用意された材料にまさかの団長ナイフ。


「エーデル侯爵様、用意周到ですね?」


私が言うと、

「そうです。さっきまで検証しておりましたから。」

どこ吹く風というようにエーデル侯爵が笑う。


取り囲む料理人に周りの状況を見て、

「でもこれでは第二王子殿下は来る事ができないのではないですか?」


「そうですね。ですがこれだけ離れていれば、大丈夫ではないかと。」


そうかな?

と思っていると、私の後ろの壁の空気が揺らいだ。


本当だ、来た。


振り返ると、空間の裂け目がないただの壁。


あれ、来てない?


けど下で黒い物が動いた気がして、目線を落とすと………。

床上50センチほどが裂けて、もっさり王子が這い出してきていた。


「ギャ⁈⁈」


怖ッ、貞子。


またホラー映画のような出現に飛び退く。


そしてもっさり王子は体全て這い出ると、床に三角座り。


出てき方!

このやろうと睨む。


そんな私に我関せずのもっさり王子は呟く。

「ウツクフーラ・タレフ」

ブワンッと空気が揺らいだ。


「は?」


私が声を発すると、エーデル侯爵が笑いながら、

「ね、いらっしゃったでしょう。結界も張られましたので、料理人は近づけなくなりました」


指でアーチを描いて、結界があるのを教えてくれる。


全く見えんけど。


向こうにいる料理人の何人かは顔色が悪い。

結界が見えているんだろう。


耳打ちしあって、背を向けて仕事に取り掛かって行った。


「気絶ですか? 腹痛ですか?」

「腹痛ですね。」


おお、腹痛、それは嫌だね。


気の毒だが、このもっさり王子が人に慣れるまでごめんねと手を合わせる。


「では、お願いできますか?」


エーデル侯爵に仕方ないと心を決めて、頷いた。


そして調理台に一歩踏み出した瞬間、肘から下がピチッとオペ手袋がハマった気がした。


「え。」


オペ前医師のように顔の前に両手を上げてみる。


何も見えない、けど感触的には手袋ついてる。


ルキアーナちゃん?


「それは調理前の儀式ですか?」


後ろからエーデル侯爵の声がしてビクッとした。


「そ、そうです。調理前に自分の手が清潔か確認します。」

慌てて適当に答える。


「ほう、それはしておりませんでした。やはり実際見る事は大切ですね。」


………あの時はしてないけどね。


あの時と同じ感じの肉を見つめる。


これがみみず……。

マジで味は牛と豚の合挽と変わらなかった。


切り身の大きさを見て、やはりみみずではありえない大きさだと再認識する。


きっと大蛇、こっちでは大蛇をみみずって言うんだ。

大蛇、いや、大蛇でも嫌だけど、もう大蛇もみみずもこの大きさなら同じだ。


もういい、ルキアーナちゃん手袋も付いてる。


女は度胸!

これは前も触った!


気持ち悪い意識を遠くに飛ばして、私は団長ナイフを手に取ると、迷わずみみず肉を取ってだんだん切ってミンチにしていく。


力が入るのは仕方ないだろう。


「なるほど、確かに恨みがありそうなくらい細かく切り刻んでいくのですね。」


「………。」


恨みはない。


何故、毒クラゲと同じ事を言うんだ。


嫌なだけだから。


イラッとしながら、

「エーデル侯爵様は、人参と玉葱を細かくみじん切りにして桶に入れてください。」


団長ナイフで桶を指すと、エーデル侯爵はニコッと笑い、

「ムザキ・クカマーコ。」

指を振った。


シュッと音がしたと思ったら桶にみじん切りにされた人参と玉葱が入っていた。


「え…。」


意味がわからず、桶とエーデル侯爵を何度も見てしまう。


全然どうなったか見えなかったよ?

殿下の魔法の完成形がこれなの?


「みじん切りの魔法怖ッ!」


恐怖でナイフ持ったまま固まっていると、

「細かく刻めとおっしゃいましたので、ふふふ。お手が止まってますよ。」

艶やかに笑った。


恐るべし魔術師師団長の実力。


「………ばけもの……だ。」

下からもっさり王子の悪口が聞こえた。


「ふは……。」

思わず笑ってしまった。


「ラトルスネイク殿下?」

笑顔を貼り付けたエーデル侯爵がもっさり王子を見下ろす。


キュッと更に王子が小さくなる。


小さくなるもっさり王子が面白いが、続けて肉にナイフを打ちつけてミンチに。


桶に入れて、小麦粉、擦った胡椒、少し多めの塩を入れて、

「両手でしっかり混ぜます。」

手を入れるとひんやりして柔らかかった。


ぬちょぬちょ言わせてると、もっさり王子が調理場から顔を出した。


「て…………きも…ち……わる…く…ない……?」


イラ‥こっちも毒クラゲと同じような反応。


いいじゃない手で混ぜても。


怒り任せにしっかり捏ねて、楕円形に形を整えて、片手に打ちつけていく。


「ほお、打ち付ける事はしておりませんでした。」


「内部の空気を抜いているんです。形が崩れにくいですよ。では鉄板に火をお願いします。」


「炙り焼き「普通に両面焼いていきます。」」

エーデル侯爵に言葉を被せて笑いかける。


「はい。」


エーデル侯爵は指に灯した火をシュッと飛ばすと、鉄板を火が流れるように包んで一瞬で適温となった。


待ち時間なしの素敵な師団長レベル魔法。


ハンバーグを置いていくとジューっといい音がした。


次々置いていき焼いていく、もちろんひっくり返すのは団長ナイフ。


「はい、焼けましたよ。」


そう言って皿を置くと、ふわっと手が軽くなった。


……手袋が消えた。


急にガシッと手首を掴まれた、

「うえっ?」

驚いて振り向くともっさり王子が立って私の手首を掴んでいた。


近いし、どうしたの?


「手………。」


気付いた?


「君‥…の…て…すご……。」


ああ、料理に感動したのか。


ホッとして、

「殿下も食べてみてください。美味しいですよ。すごいでしょ、料理って。」

勧めると、私の手を表裏と見たかと思うと離した。


そして静かにそばの椅子に座ると、もそもそ食べ始めたのだった。








閲覧ありがとうございます


みみずでハンバーグできましたね

エーデル侯爵の魔法はすごいんですね


よければ評価やブックマークをよろしくお願いします

読んでもらえるのは、嬉しいな



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