74 黒は目立つ?目立たない?
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「広く知識を得る為には、たくさんの人と関わる事が大切です。私を見ていても、あまり知識は増えないですよ? まずは…。」
人と関われるようにするには。
うーんと腕を組み、
「まずは城内をしっかり歩けるようにしましょう。」
この間の離宮への道のりを思い出し、遠い目をして言うと、
「え……ええっ⁈」
ものすごく驚かれた。
何故?
そこからでしょ!
自分家くらい普通に歩けないと。
「人に話を聞く以前にその特訓からです。突然壁に存在していては余計にみんなを驚かせてしまいます。」
ゴトゴトゴト…。
「む…り。」
「無理と言いますが、殿下は人に会いたくないだけで、ただ歩くだけなら人に危害を加えることはないですよね? 私も今まで殿下の近くに行っても何か起きたことないですし。」
「…………………………。」
何故黙る。
「堂々と歩いたらいいのですよ。いわば城は殿下の家なのですから。」
「……無理……目が……こっち……むいて……いや…だ。」
泣いて消えそうな声。
仕方ないだろう、その王子の見た目なら、みんな見るわ。
みんな気になるわ。
「でも目と言いますが、殿下の髪型とその真っ黒な出立ちは、殿下を悪く思ってなくても見てしまいますよ?」
「髪……だい…じ、目が…あ…わず……す…む。」
ふむ、髪は最後の砦か。
でも。
髪切って、帽子を被らせる?
斜めに被るハット、誰?
目深に被るシルクハット、不審ね。
ニット帽はないし、キャップも深く被ったらって、存在してないね。
うーん、服装と合ってなくて、逆に不審。
髪切って、仮面を付けさせる?
仮面舞踏会のような? 派手だな。
オペラ座の怪人のような? 壁から出てきた時怖いな。
何を付けさせても、逆に目立ちそう。
後ろだけ短く切って、前髪そのままにしとく?
…………どっちが前かわからないね。
よし、髪は後回しだ。
「では髪がある事で安心できるのでしたら、また考えるとしましょう。服装はどうですか? 他の色も用意できると伺いましたけど、何故全身黒を着用しているのですか?」
「影に……まぎ…れ……るし…‥目立たない…と…いわ……れた。」
………誰に?
ものすごく目立つだろう。
肌色顎だけよ?
真っ黒すぎて、逆に目立ってる。
「あの、どなたに言われたのですか?」
わかる気がするが一応聞いてみる。
急に元気になり、
「兄上!」
ですよね〜。
あのキラキラからすれば、黒なんて地味で目立たないって本気で思っていそう。
もしくは自分が目立つ為とか。
アホ毒クラゲめ……弟が可哀想だろう。
「あの世の中、全身黒い生き物は少ないですよね? 意外に目立ちますよ? あと真っ黒すぎると喪を連想させますので、周りから気遣われたりと人目を引きやすくなります。」
振り返っても、もっさり王子はしっかり聞いているのか動揺しなかった。
「兄上が…嘘を?」
首を傾げる王子は、悲しげで子供のよう。
首を横に振り。
「いいえ、彩の中で黒が地味なのは本当です。派手にはなりません。彩を引き立てます。逆もまた然りですが。殿下の考えは分かりませんが、共にいる為に黒を勧めたのかもしれませんよ?」
そう言うと、もっさり王子は座ったまま、ヒョコヒョコ上下に動いた。
……喜びのダンス?
「では、ずっと黒でいい。」
「目立ちますよ? 目線を集めますよ?」
「い……いや……だ。」
「周りと同化する物の方が目立ちませんよ。」
そう言うと、徐にもっさり髪がブン、ブンと揺れて周りを見た。
「緑…ベージュ‥…しろ…黄………赤…茶…銀を…取り入れる。」
「いやいやいやいや、全部入れたら派手で、目立ちますよ!」
「……では……その場と同化…出来る…よう…服装の‥…色が…変化‥…して、同化‥…するには……。」
「…………。」
おいおい、それじゃ、カメレオン……。
ものすごく、どう術式組んで作るかぶつぶつ言ってる。
言葉って難しい。
「いえ、服の色が突然変化するのも、みなさん驚かれると思うので却下です。周りというのは、紳士方が着ておられる服装を参考にして、同じような色、形の物を着用してはどうですかと言っているのです。」
身振り手振りで伝える。
するともっさり王子は体をくねらせ、指をモジモジさせ。
「では、兄上と同じ物が着たいです。」
えー………。
兄好きね。
好きなのは分かるけど、アレはセンスがいけてない。
ド派手の部類なのに、アレはいいの?
目立つのが嫌と言うのはどこ行った?
若干引き気味に聞く。
「キロネックス殿下と同じだと、キロネックス殿下が目立たなくなりますがよろしいのですか?」
もっさり王子がピタッと止まり。
「だ、ダメ、兄上が1番目立たないと!」
良かった、そう言ってくれて。
「そうですよね、でしたら、エーデル侯爵様や私の父を参考にするのはどうですか? 割にシックでセンスよく目立ちにくい服装をしていると思います。」
イチオシを勧めてみる。
が、首を傾げられた。
何故?
「いつ…も何を…着ている……か覚え……ていない。」
記憶になかったらしい。
全然興味がなかったのね。
「もうじき、エーデル侯爵様がいらっしゃいますから、見てみてください。」
私はそう言うと前に向き直った。
今日はどんな服装で来られるかな〜。
城内を目立たず歩くには見た目も大事。
服装が落ち着いたら、できたらもっさり髪をなんとかしたいよね〜。
そういえば、殿下の顔を一度も拝んだ事がないな〜。
それはまた次だな。
髪をどうするか考えなくっちゃ。
そんな事を考えながら、エーデル侯爵を待ったのだった。
閲覧ありがとうございます
もっさり王子の真っ黒な原因は、お兄ちゃんでしたね
自分と同じ服装を勧めてないところをみると、自分が目立ちたかったよね
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