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70 僕のポジション

閲覧ありがとうございます

城の自室のバルコニーに降り立つと、弟が空間から現れた。


いつもながらよくわかるな。


帰還の気付きの異常な速さに驚く。


闇属性の特徴か空間変化に機敏だ。


「兄上、おかえりなさい。無事な帰還嬉しく思います。」

真っ黒な姿で駆け寄ってくる。


「ああ。」


ルキアーナ嬢の膝下に手を差し込みながら頷く。


そして振動を与えないようラルクから降りた。


「ルキアーナ嬢?」

弟が首を傾げる。


サラサラの銀髪が静かになびく。


「ああ、一緒に連れ帰り途中で眠った。」

腕に抱いたまま立ち上がる。


「ラルクありがとうな。また頼む。」

神獣に礼をすると、光の粒を残して消えた。


「あいつらと一緒に帰還させるのはまずかったのでな、先にルキアーナ嬢を回収した。本来あの場にはいない奴だからな。しかしこいつは今回かなり役に立った。だが、だいぶ無理をしたようだ。早く神獣を。」

ルキアーナ嬢の胸元にいる神獣を弟に向ける。


「は、はい!」

弟が神獣の胴体を両手で掴み、目線を合わせる。


「あ、また、ルキアーナ嬢の魔力食べてる!」


弟が不服そうな声をあげると、神獣は弟の手から体を捩って飛び、弟の顔を蹴った。


「いだっ!」


のけぞる弟に見向きもせず、神獣は空間を裂いた。


「モップ酷いよ〜。でも無事で良かったよ〜。」


弟の声に満足したのか、一瞬振り返り弟を見ると空間の中へ消えて行った。


弟は顔を両手で押さえたまま、

「客室でいいですか?」

と聞いた。


「ああ。」

短く答えると、弟は人差し指で縦に空間を裂いて客室と繋げた。


ルキアーナ嬢を抱えたまま潜ると、客室のベッドルームだった。


いつもながら驚く。

魔法とは違う特殊な能力。


そっとルキアーナ嬢をベッドに下ろすと、布団をかけた。

全く起きる様子がない。


「宰相を呼んでくる。それまでお前はドア入り口で待機していろ。万が一目を覚ました時、ルキアーナ嬢がどんな行動を取るかわかったものではないからな。」


そう弟に告げると、弟は頷き、抜き足差し足で移動し始めた。


その横をサッと過ぎ、部屋を後にしたのだった。


  ♢♢


兄上に見張り役を頼まれて、ドアの側に立つ。


……する事がない。


ベッドルームにはルキアーナ嬢がわずかに見える。


兄上に言われてから、ずっと盗聴していた。


本当に皆を助けて帰ってきた。


僕より小さい子、蝶よ花よと育てられた公爵令嬢があんな状況のわからない所に行って、何も出来ないと思っていた。


だからモップを同行させた、モップを通じてすぐ転移して帰ってくると思っていた。


けど帰って来なかった……。


中の人間の状況を知り、的確な治療指示を出して、さらに料理も作り皆の英気を養い、討伐は完了した。


まあ、討伐とか収束指示を出したのは兄上だけど。


けど、あの子が居なければ、討伐に向かった人間のほとんどが死んでいた可能性がある。


なんせ閉じ込めたのは僕だから。


空間に一歩踏み出して行った彼女の背中を思い出した。


自分は一歩も踏み出す必要性を感じてなかった。


ただ兄上に言われた事をする。

ただそれだけしか考えていなかった。


なのに、なんなのあの子、意味不明。


僕を脅してまで行って、魔獣に恐怖しながらも皆を心配し、元気になったと笑い。


そして兄上に中の者を見殺しにするな、しっかりしろ!というような説教までしていた。


自分のした事、彼女のした事、自分より年下の事、兄上と一緒に空を飛んだ事、兄上に抱えられた事、兄上に役に立つと思われた事全てにおいて腹立たしく感じた。


兄上の役に立つのは僕のはずなのに………。

兄上の隣は僕の席なのに……。


仄暗い感情でルキアーナ嬢に視線を送りながら、考える。


それに………彼女の度重なる見知らぬ単語の数々。


僕はね、知識だけは豊富なんだ。


篭って本を読むのは大好き、その世界に没頭できる。

この世界に読んでない本なんてほとんど無いんだよ?


それなのに知らない事を喋る。


自動調理器、コンロ、フードプロセッサー、ひこうき、どろん………ほらね、一度聞いただけで覚えてる。


これらって何?


それにハンバーグって?

自分で新しく考えて作ったの?

料理人でもないのに、そんな事できるの?


起きたら聞きたいことがたくさんある。


話しかけたくないし、近づきたくないけど、モフも改良しないといけないし、知らない事があるのは許されない、全部説明してもらうからね。


どの本に書いてあるのか、君が知っていて僕が知らないなんて、ありえない。


だって知識で兄上の役に立つのは僕だから。


君には負けない。


腹立たしさと、やる気がみなぎり、珍しく握った拳に爪が食い込んだのだった。









読んでもらえて嬉しいです


珍しくイライラしてるね、もっさり王子


よければ評価やブックマークしてもらえたら嬉しいです

ありがとうございます

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