65 陛下の別の顔
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この時間であれば、もうじき会議が終わるな。
今向かえば国王と宰相を捕まえれるだろう。
会議室が近づくとちょうどドアが開いて、大臣らが出てきた。
私に気付くと皆廊下の端に寄り、頭を下げる。
キツネやたぬきが多い大臣らに片手を挙げて、通り過ぎる。
「これはこれは第一王子殿下ではないですか。このような場所に珍しいですなぁ。」
キツネ筆頭の財務大臣が細い目をより細めて、ドアから出てきた。
すました顔を貫き、
「陛下と宰相に急ぎの報告だ。」
簡潔に答える。
「そうでしたか。陛下も宰相殿もまだ中におられます。」
頷き傍を通ろうと歩みを進めると、
「時に北の地に送った騎士からの連絡が途絶えたとか……今でさえ魔獣如きで時間と費用が少々かさばりすぎておりましょうに、指揮官の力量いかがなものなのでしょう。少々考えものとは思いませんか。」
耳元で囁いた。
抜け目のない、どこで情報を掴んでいる?
確か……息子は第四騎士団であったか。
「情報漏洩は重罪だぞ。」
睨みをきかすと、
「まさか、まさか、それはそうです。私も風の便りで聞いたまで、口さの無い者はいくらでもおって困ったものですな。面白くない話だと思いましてね、別の者に指揮を取れせていれば、此度の討伐は些細な事だったのではと。」
より瞳が弧を描き、嫌な笑いを浮かべた。
いつも格上げをと煩わしい。
「総指揮官は私になるが、私に向かって言っているのか?」
厳しい視線を送るとキツネ目で薄ら笑った。
「いえいえ、滅相もない事です。現場の指揮官に決まっております。わたくしが殿下に意見など烏滸がましい事です。おっと歩みを妨げ、申し訳ございませんでした。無事帰還して問えばよい話、歳をとればせっかちになって困りものです。はははは。」
笑って見えなくなる大臣に、苛立ちが募る。
お前の息子にザイナスらの代わりが出来るはずないだろう。
目線を戻し、重い息を吐くと歩みを進め部屋に入った。
会議室には陛下と宰相しかおらず、2人は手元の資料で議論していた。
私の入室に先に気付いたのは宰相だった。
「殿下、石が光り消えました。ルキアーナはまだ王宮で座学を受けていると思います。」
やはり気付いていたか。
王宮内に居ると思っているから焦りが少ないのだな。
「どうも誤認であったようです。詳細を今調べております。またラトルスネイクにはダシンゴムと鉱石の精度の見直しを命じました。」
宰相がホッと息をはくのを横目で見た陛下が、
「そうか、ルキアーナ嬢の安全をしっかり確認しておくように。」
と微笑んだ。
一応陛下の言葉に頷いておく。
流石に北の地に無理やり赴いたとは言えないな、そう考えている私に、
「殿下はルキアーナの安全……… まさか北の魔物討伐で何か? ザイナスらに何か?」
いつもは冷静な宰相だが、わずかに焦りを滲ませ顔色を変えた宰相は珍しく父の顔となっていた。
私が頷くと、
「報告を聞こう。」
父である陛下が私の方に体ごと向けた。
一礼して跪くと陛下の顔となった父に、
「北の地に向かった者達との連絡が途絶えて2日経ちました。」
そう報告すると宰相が息を呑んだ。
「増援したはずだが? それでも全滅したと? そんなに強い魔獣との報告は受けてはいなかったが?」
陛下が眉を顰める。
「おそらく魔獣ではなく、騎士も魔術師も皆同様の高熱に倒れたようです。」
「呪いか? エーデル師団長もか?」
今は治ったが、言うわけにいかないな。
「はい、連絡が取れないので、おそらく。」
私の返答に陛下は机に手を組み、顎を置いて眉間に皺を深く刻む。
「治癒師が同行しているはずだが?」
「治癒師も倒れたという事ですかね。」
宰相が青い顔をして片手で口元を覆う。
「北の地で高熱が蔓延した地がないか情報を探ります。魔獣被害はこれ以上起こらないよう手は打ちますが、当面は閉じ込めるだけになるでしょう。呪いの可能性がある以上、これ以上の増援はできません。しかし、此度出向いているのは師団長を含め第2騎士団団長、副団長率いる騎士達です。更に増援で送った魔術師と第3騎士団員もそう容易くくたばる者達ではございません。しばし猶予をいただきたくお願いに参りました。」
普段の父は穏やかだが、陛下としては臆病で冷酷だ。
原因のわからない不穏な事由は、原因を探るのは初めだけ。
解決に時間がかかり懸念材料が増えると判断した場合は、その事由と関わる全てを消し去る。
本当に消し去る。
何事も無かったように、全てが無くなる。
陛下にとって要らない物になれば、心など不要でただ割り切るだけなのだ。
陛下は私以上に騎士や魔術師、いや王城で働く者も国民も久しく駒としか思っていない。
自分が王である間は汚点になる事は決して許さない。
ただ安寧であったと言われ、功績を残したいだけ。
様々な事案でいくつも残酷に消し去ってきたのだ。
開かずの間騒動も、関わった令嬢の子爵・男爵皆表向きは領地返納させ他国にある大使館へ赴かせた事になっているが、実際は本当に消えた。
もういないのだ。
処刑同然に世から消されたのに、国民からは処刑しない王として存在している。
実際存在しなくなっている事を、知っている者は誰も口に出さない。
二の舞は避けたいから、要らない者にならないように。
そして一夜にして無に変えているのが弟。
いつも秘密裏に弟を使うよう私に命令する。
弟の能力を使えば、標的をブラックホールへ無空間へ消し去れる。
あたかも最初からいなかったように。
人であろうと街や村、建物であろうと、そしてそれを指示するのが私なら弟は喜んでする。
今回はそうはできない、あの地には友がおり優秀な部下もいる、そして秘密だがルキアーナ嬢も。
「私も情報収集に手を貸しましょう。陛下今しばらく時間を。」
宰相も資料を机に置き、私に並んだ。
「………1日だ。明日中に内部と連絡が取れなければ、判断を下す。」
陛下が猶予にもならない返答をした。
私と宰相が願って、猶予がたった1日である事に仄暗く笑いそうになり、思わず彼の地にルキアーナ嬢が居ることを言ってやろうかと思った。
しかし1日確保できて良かった。
ルキアーナ嬢のおかげでアイツらは復活した、直に連絡が来る。
全員救えるであろう事に安堵する。
「ありがとうございます。ではすぐに動きますが、もう一つお願いが。」
頭を下げたまま言う。
「なんだ。」
「内部と連絡が取れたら、私が北の地に赴く許可を。直接指揮を取り、収束させます。」
陛下はしばし考えているようで、無言が部屋を制した。
やがて陛下は息を吐くと、
「良いだろう。治癒師を同行させて、直ちに収束に尽力せよ。」
描いたシナリオ通りになった。
「ありがとうございます。では、取り急ぎ失礼いたします。」
再度頭を下げると、横から宰相が頭を下げた。
「殿下よろしくお願い致します。おって情報を持っていきます。」
「2人とももう行くがよい。」
陛下が私達に手を振る。
「「失礼いたします。」」
揃って会議室を後にしたのだった。
閲覧してもらえて嬉しいです
陛下の顔2つ。毒クラゲ王子交渉頑張って先手打てたね。
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