60 レッツクッキング
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インフルエンザ疑い重症者と魔獣被害重症者は、ポーションで復活したカリミナさんが10人ほど治癒魔法をかけて回った。
おかげで命の危機の人はいない。
危機はカリミナさんだけ、再び女神の如く美しいウェーブヘアとなって目を回してテントで気絶した様に眠ってる。
熱は高いが意識ある人は水分を取らせ、腋窩部に雪を詰めた袋を置き解熱を助けた。
テントはなるべく換気をしてウイルス滞留を減した。
風魔法使える人の魔法で簡単!
手洗いや消毒の仕方も教える。
水魔法使える人がどんどん水を出してくれる。
魔法って超便利!
そしてそれを指示してる私の姿は、超イけてない。
まずは顔、未だタオルマスク装着していて、見えるのは目だけ。
だってここで感染してないのは私だけなんだもん、あの高熱はできれば避けたい。
そして頭にはモップ様、ここの定位置も変わらない。
安定感も素晴らしい、暖かい帽子のようだ。
服は勝手に拝借してきた白衣、どうやらルンバール先生の予備着だったらしい。
ブカブカだが折れば着れる、ドレスは魔術師さんが回復したら魔法洗浄してくれる予定だ。
その姿は令嬢ではない、はっきり言って不審。
ルキアーナちゃんかわいいのにこんな恰好させてごめんねって思う。
けどまあ仕方ない、これも予防の為だ。
そしてこの出立ちで、これから私がするミッションは料理。
みんなのエネルギー摂取大事、お腹すいた。
みんなは心配と不安が入り混じった様子で私が料理をする事を止めたが、ルンバール先生は他の騎士達の容態をみるので手一杯だし、兄と団長さんと動けるようになった騎士は魔獣の討伐に向けて動いてるし、エーデル侯爵は結界内の環境を整えてる。
それぞれ仕事が忙しいから結局私は放置された。
だから自由にしたいようにする。
「ふんふふ〜ん。何作ろうかな〜。」
食料庫らしいテントから色んな物を物色して袋に野菜と干し肉、粉物を入れていく、籠を開けると乾燥ハーブに岩塩など調味料に使えそうな物があった。
「よし、これも一緒に。」
袋を担ぎ小脇に籠を挟んでテントを出ると、遠巻きに具合の悪そうな騎士たちがこちらを見ていた。
結界内はすっかり雪も撤去され、快適に目的地まで歩いていく。
騎士というのは良い人が多いのか、具合が悪い中手伝う為に近付こうとしているのがわかる。
けど、是非こっちに来ないでいただきたい!
うつりたくない。
まだ彼らの動きが鈍い事をいい事に、棒を持って屋外調理場を半径5メートルの円で囲い「立ち入り禁止」と書く。
もっさり王子の呪いの線を真似てみると、騎士たちはその線から立ち進めなくなった。
次期王太子妃の肩書き効果で誰も入れない。
うふふ、呪いがなくても同じ効果。
「待っていてくださいね。」
ご満悦で騎士たちに言うと、私は調理を開始した。
手を消毒して大きな鍋に水とワインと千切った干し肉を入れて、その辺にいる具合の悪い魔術師に魔法で火を飛ばしてもらって煮はじめる。
そして後ろからタオルの包みを取って、密かにゲットしていたナイフを取り出す。
これは団長さんに投げつけられたナイフだ。
綺麗な宝飾がついていて高そうだけど、テントの消毒清掃の際に、まだ布壁に刺さったままになっていたので、そのままにしておくのもなんなので抜いて保管していたのだ。
なんか包丁と形状が違うが、切れるでしょう。
野菜を前にナイフをかざすと、周りが「危ないです。」「どうやって取り上げる」「危険です。」色々聞こえてくるがマルッと無視する。
皮なんてむげたらいいのだ、サッサッと削ぎ切りしていく。
「おお〜。」
と歓声が上がる。
なんか料理番組みたいだ。
野菜をぶつ切りにダンダン切って鍋に投入、塩、ハーブも適当に入れる。
次は何を作ろう。
そして籠から取り出した塊を置く。
この塊は岩塩では無さそう、舐めてみると角砂糖のような味がした。
甘いのか、ふむ。
小麦粉っぽい粉を桶にたっぷり入れ、舞い上がった粉を手で仰ぐ。
そこに塩と角砂糖を削って入れ水を入れて混ぜる。
白いクリーム状になったきた。
ホットケーキみたいなのでいいよね。
卵が欲しいが見当たらなかった。
仕方ない、じゃがいもを擦って入れよう。
結構な量のじゃがいもを入れたので、だんだん色が茶色がかってきて粘りがでてきた。
大きな桶で見た目の悪い物体を、ぬっちゃぬっちゃ混ぜるから騎士達はすごく不安そうだ。
そんな騎士達にお構いなく鉄板を敷いて、また顔色の悪い魔術師に火を飛ばしてもらう。
一発で超いい火加減になる魔法便利!
熱くなった鉄板に、木尺で生地を掬ってホットケーキ風に焼いていく。
フライ返しがわからないのでナイフでひっくり返す、いい感じ。
いいわね、このナイフ!
見た目綺麗だし。
投げてよし、切ってよし、フライ返しよし!なんでも使える。
次々焼ける円盤の焼き物に騎士達は興味深々。
ホットケーキは山になり、煮込んだポトフに最後胡椒の粒を潰して擦って入れる。
出来上がり!と大満足で顔を上げると、みんな集まって来ていた。
兄も団長さんも周りの騎士も驚きで固まってるし、エーデル侯爵は興味深々に見てるし、ルンバール医師はニコニコお腹すいたと騒いでる。
「お兄様〜ご飯できましたよ。皆さんに分けてください!」
私がナイフを振って、そう言うと兄はハッとして興奮気味に駆けてきた。
「ルキアーナすごいじゃないか!お前は料理もできるのだな!いつの間に学んだんだ、なんでも出来て誇らしい事だ。でもナイフは危ないから、ここに置いておこうな。」
兄にナイフを取り上げられたが、えっへん‼︎と胸を張ってみた。
すごいでしょう!
大量に出来たわよ!
しかし頭に疑問がよぎる。
えっと、そういえば、ルキアーナちゃんって料理が出来たのだろうか?
私は出来る、当然自炊してたから。
ルキアーナちゃんって生粋のお嬢様よね。
それもまだ12歳。
もしかしなくても料理なんてした事ないんじゃない?
世のご令嬢は料理なんてしない?
オリビアさんやベラドンナさん、毒花達を思い浮かべてみるが、料理が出来そうな顔をしている人が思い当たらない。
もしかしてお嬢様って料理できない方が普通なんじゃないの⁈
これ、バレちゃわない?
さっきまで超楽しかったのに、嫌な考えがぐるぐる襲ってきて、顔が青くなる。
そんな私の変化に兄は、
「お、疲れたか?頑張ったもんな。あとは休んだらいい。料理ありがとう、皆でいただくよ。あとでお前の分も届けよう。」
にかっと笑って背中をさすった。
ははは、乾いた笑いしか出ないが、そうさせてもらおう。
現実逃避したい。
「カリミナさんにも届けてあげてください。」
それだけ言うと、私は後ろのテントに入って行った。
♢♢
「まずかったな〜。久しぶりの料理が楽しくて夢中になってしまった。」
外から歓声が聞こえる。
料理が美味しくできたようで喜んでいる声がして、良かったけど。
「私がしなくても良かったか………でも作れそうな人がいなかったしな〜。」
自分もお腹すいてたし………。
ま、いいか。
ルキアーナちゃんは賢いから料理くらいすぐ出来るようになるよね。
本で読んで実践したんだとかって言い訳したらいいか。
細かい事は気にしないでおこう、とりあえず今はみんなの体力回復が大事!
早く元気になってもらって帰らなくちゃ!
そうとなったら、私も食べなくちゃ。
「お兄様〜私にも早くお食事ください〜!」
慌ててテントを飛び出て、食事にありついたのだった。
閲覧ありがとうございます。
便利な団長ナイフ、なんでも使えるね(笑)
団長さんは見て青ざめたろうね。
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