59 モフのマーキング
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「それで、これが緑に光ってるのだが?」
そう静かに言ったのは、兄。
振り返ると胸の鉱石を振っていた。
初めて見た、あの石ころが緑に光ってる。
モフが危険物にマークしたんだ。
気付くとモフは私の肩に居たようだ。
触るとコソコソ動く。
「何にマークしたんだ?」
兄が首を傾げると、エーデル侯爵も石を取り出して空にかざしながら。
「魔獣ですかね?」
長い髪をサラリと垂らして首を傾げる。
「魔獣⁈ 襲われたのか⁈ ルキアーナ大丈夫なのか?」
ガシッと兄に再び両腕を掴まれる。
そして兄はモフに近付き、
「魔獣にマークしたのか?」
と真剣に話しかけた。
もちろん答える訳ない、ただの虫だから。
「魔獣でしょうね、かなり危険でしたから。しかし消えたので大丈夫ですよ。」
エーデル侯爵がニッコリ笑うと、兄はエーデル侯爵に向き直って跪いた。
「師団長様、ルキアーナをお守りくださり、ありがとうございます。」
「いえ、まあ、私では、……はい、どういたしまして。」
モップ様は秘密なのか、話さない事にしたらしくエーデル侯爵は歯切れ悪く苦笑いした。
カリミナさんだけは、私の抱くモップ様を見て遠い目をしてる。
ははは、こんな可愛い生き物が魔獣を吸い込んだ(食べた)なんて信じられないよね。
モップ様の背中を撫でて、頭に乗せる。
クルクル回って定位置に落ち着いたのか、モップ様はじっとしゃがんだ。
「あれ〜団長さま、何か食べましたか? 吐物なら色が良くないんですが気分悪くないですか?」
突然のルンバール医師の声に、みんな向く。
すると、団長の前に屈んで何かを覗き込んでいるルンバール医師がいた。
「大丈夫だが? 治癒魔法が効いている。先程まで意識が朦朧としていたから吐いたか覚えていないな。」
団長も顎に手を当てて思案してる。
皆で近づいていくと、団長の手の甲に緑の発光物が付着していた。
「「「……………。」」」
団長様が危険物‼︎
私と兄とエーデル侯爵が固まる。
そして3人顔を見合わせて微妙な空気。
やっぱりそう?
モフの危険物マークよね? 同じ色。
3人で目線だけで会話をする。
兄がおずおず団長の前に行って、
「団長、あのつかぬ事をお聞きしますが、ルキアーナに何かしましたか?」
その言葉に団長は目を見開き、申し訳なさそうに頭を掻いた。
「ルキアーナ様がテントに入って来た時、見知らぬ気配だったから敵の可能性も示唆して、咄嗟にナイフを投げて威嚇した。」
「⁈⁈⁈」
あれか、あれが危険物認定受けたの?
驚いてモフを撫でると、何故か嬉しそうにモゾモゾ這い出した。
兄とエーデル侯爵も固まっている。
確かにナイフ投げられて、びっくりしたけど。
これが敵だったらモフはいい判断よね。
でもせっかくマーク付けてくれても、兄とエーデル侯爵は熱でぶっ倒れてて、父遠くて、王子達は自ら結界張って入れない状況では誰も駆けつけれず、後からマーク見て、コイツが危険人物だったんだねーって言われても………。
きっと敵なら私すぐ死んでるな。うん、死んでる。
全然役に立たない国家レベルSP。
ほら、だから、メンバーが大物すぎると小回りがきかないでしょう。
そしてイマイチ使えるような使えるないようなモフの能力………。
かわいいよ、かわいいけどね。
ますます目が遠くなる。
なんなら、頭上のモップ様が1番最強SP。
1番可愛くて癒されて、すぐ動けて強くて安心!
モップ様がいればルキアーナちゃんは安全!
いやいや神獣様だった。
しかももっさり王子の。
どんどん気が遠くなる。
「はははは、団長がルキアーナの最初の危険人物認定。」
急におかしくなったのか、兄が笑い出した。
「それは、本当にすまなかった。ルキアーナ様にも謝罪はした。」
本当に参ったというような顔を団長がする。
「それでこの汚れはなんだ?」
団長が手の甲を見せる。
「それはルキアーナに危害を加える人物にマークするようになってるんで、それが発動した証です。消えないらしいですよ?」
兄がいたずらっ子のような顔で笑うと、団長が焦りと驚きの声を上げた。
「な! ま、危険に晒したが、私はお守りこそすれ、ルキアーナ様を害しはしない!」
「でもマークされてるんで、危険人物第一号ですね。」
兄が親指立ててウインクする。
「そのようですね、今後監視せねばなりませんね。」
エーデル侯爵までおかしそうに笑う。
「師団長殿、揶揄われては困ります。私は違います。」
団長はもうタジタジだ。
ふふふ、おかしくなって肩のモフに顔を寄せる。
「モフ?ありがとうね。でも団長様は危険人物ではないわ、あのマーク消せないのかしら?」
私がそう言うと、モフが肩でコソッと動くと同時にモップ様も動いて肩に体を伸ばした。
それは一瞬で、モフがブルっと震えると、団長様のマークが消えた。
「ああ?消えましたよ?」
団長の手をずっと観察していたルンバール医師が驚きの声を上げる。
団長とエーデル侯爵と兄も手を覗き込む。
「消えて良かったですね。」
団長はホッとした表情になった。
「ああ、本当に、危険人物とは流石にな。」
モップ様がモフに何かしてくれたんだろう、撫でてみる。
その間も後ろのカリミナさんはモップ様から目が離せずずっと見ていた。
疲れた顔の団長に、ニヤニヤ顔が隠せていない兄が
「では団長が危険人物ではなくなった所で、皆が無事か確認しに行ってこようかと思うのですが?」
伺いを立てる。
「そうだな。」
複雑そうな顔をして団長様は笑った。
お、それなら!
私は手を挙げる。
「その際、騎士の方の症状を確認してもらいたいです。治療の優先順位を立てたいので。ルンバール先生よろしいでしょうか?今日カリミナさんが治療可能なのはあと多くて10人なので、意識のない方と魔獣により重症の方を優先治癒したいです。」
「ええ!」
酷使されると思ってなかったカリミナさんが長い髪を揺らして驚く。
「そうですね、では副団長様お供いたします。」
ルンバール医師は兄の元に行く。
団長は頷くと、兄に手で行くように指示した。
兄は一礼して私をチラッと見ると、ニカっと笑って走って行った。
「では私はテントでポーション飲んで休んでおきます。」
ふらふらカリミナさんがテントに戻っていく。
「私は結界を張り直します。」
エーデル侯爵も後ろの山に歩いて行った。
私は団長さんと2人取り残された。
団長さんはこっちに向くと、
「無礼を承知で失礼致します。あなた様は次期王太子妃様です。お一人で恩自ら危険に飛び込まないでいただきたい。今回の状況ではなおの事お守りする者がおりませんでした。私共は捨て置くぐらいであって下さい。騎士の、私共の代わりはおりますが、あなたの代わりはおりません。」
と厳しい視線を送った。
ルキアーナちゃんの立場なら正論だ。普通ならね。
「団長様の言い分は分かりました。」
私が頷くと団長はホッとした顔をした。
でも今は私。
「その通りなのかもしれませんが、私には無理です。私であろうと団長様であろうと騎士の誰かであろうと、誰1人代わりとなる人はいないのですよ。ですので、誰1人理不尽に危険に晒されてよいという事はないので、危険であっても来て良かったと思っています。私も家族は特に守りたいですし。今日は無茶をしたという自覚はありますので、それは反省点ですが、でも危険拡大回避として、ここにいる人達を見捨てる王家のやり方が気に入りません。帰って殿下方を叱らないとと思っています。団長様の言い分は分かりましたので助言ありがとうございます。でも私はまたやると思いますので、その時はよろしくお願いしますね。」
思っている事を正直に話すと団長は目を見開いて、
「わはははははっ」
大きな声で笑い始めた。
今度はこっちがびっくりして固まる。
「殿下方を叱る、お叱りになるのですか?………くくくく、ルキアーナ様はよほど豪胆のようだ。潔さもザイナス同様。いいでしょう、お守り致しますよ。助けていただきましたしね。」
団長様は胸に手を当てて、騎士の礼を取った。
うふふ、良かった。
騎士団長様もルキアーナちゃんの味方になってくれそう。
私が微笑むと、
「では、私も様子を見に行きますので、テントでお休みください。」
そう言って去って行った。
……………え、嫌だけど。
だってめっちゃインフルエンザもどきで汚染してそうじゃん。
消毒清掃しないと入りたくない。
私まで熱出ちゃう。
うーん、でも寝床は大事…………、清掃しますか。
どうせ皆が動いているので、私もテント内を消毒してまわるのだった。
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SPバトル、勝者モップ様!
今回も面白いといいな。




