57 謎熱は冬に流行るやつ
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突然一歩足を踏み出したら、吹雪の中だった。
「寒い〜!寒い!寒い!」
カチカチ歯を鳴らしながら、震える手で袋を漁る。
毛布を探り当て、モップ様ごと上から被る。
「寒くないですか?モップ様!」
毛布を被ると寒さが全然違う。
しかも頭のモップ様のお腹が温かい。
「あったかい。」
少しホッとして周りを見る。
太い杉のような木々が生えて、雪に覆われた山?
吹雪いてるし、それしか見えない。
足が今度は雪で冷えてきた。
「やばいこのまま立っててもどうにもならん。誰か探さなくちゃ。」
とりあえずそのまま進んでみる。
ザックザック足が埋まり、ヒール靴に雪がわんさか入って靴がすぐ脱げる。
「もう、靴も探せばよかった。めっちゃ冷たい!」
足が凍傷になるかもしれないが、自分の治癒魔法でなんとかなるだろう。
靴を脱いで、タイツのみで歩く。
すると木々の間にテントらしき物が見えてきた。
ボヨン。
体を弾かれ、尻餅をつく。
「え、なんかに当たったんだけど……。」
見上げるが何もない。
…………これ知ってるよ?
あれでしょ?
私が見えないやつでしょ?
手を伸ばして探ってみる。
見えない何かがポヨンポヨン触れる。
「見えんが、絶対結界よね。」
って事はやっぱりこの中にみんながいる可能性があるわね。
手のひらを見つめ薄い膜を感じながら、ルキアーナちゃん通してね!
そう心で念じて目を閉じて結界に両手を突っ込む。
ゴムみたいに伸びてなかなか入れない。
もっと前のめりになって、足に力を入れて体を前に出すと、ツルンと急に抵抗がなくなり中に入れた。
「おとととっ!」
勢いあまって、バフンと雪に埋もれた。
「冷たい! 冷たい!」
あまりの冷たさに飛び起き、雪を払いながら立ち上がる。
払いながら周りを見ると、この中は雪はあれど吹雪を防いでいるようだった。
不思議な空間に感じた。
無音で時間が止まったようだった。
たまにピキ、パキっと氷が割れる様な音だけ響く。
誰もいない? それとも居てもぐったりしてる?
眉をひそめながら、袋を下ろして中から1枚タオルを取り出す。
そして「モップ様、一旦毛布外しますね。」そう言って毛布を下ろした。
「さむっ」
私が体を震わすと頭の上でモップ様が伸びをしている。
私はタオルで口と鼻を覆い後頭部で縛った。
そして毛布についた雪を払って、再びモップ様ごと頭から被った。
「よし。」
サンタ袋を背負うと、テントに近寄った。
テントは見える限り20以上はある。
奥に鎮座しているテントが大きい。
作りからいって役職上位者がいそうだ。
あそこならエーデル侯爵や兄がいるかも。
ザクザク歩くが誰も出てこない。
テント前にランプが点いてるから人はいるんだろう。
生きてるよね?
ふと、そんな嫌な考えが浮かぶが考えない事にした。
謎熱……魔獣による物なら治癒師だな。原因わからんし。
空気感染ものなら、このテントに結界はまずいな。
飛沫接触感染でも換気はしたいし、雪山で自然回復は1週間だな。
最初の人が倒れて何日目だろう……風邪ならそろそろ治る人がいるはず。
そんな事を考えてたら、少し広い空間に出た。
テーブルや火の跡、皿やスプーンが投げてある。
「ここで食事を………。」
周りを見ながら通り過ぎて目の前には大きなテント。
遊牧民のテントハウスみたいだ。
その隣にブルーラインの入った小ぶりのテント。
大きいのからだな。
入り口も布、一応ノックしてみるがぽすぽす音がするだけ。
下にチャックが見えたので、開けようとしゃがんだ時、横から
「誰?? 開けてはダメよー!」
奇声に近い声で叫ばれた。
振り向くと、やつれアフロのカリミナさんが立っていた。
「カリミナさん!」
タオル越しにくぐもった声で呼ぶと怪訝そうな顔をされた。
なんでそんな顔を?
首を傾げると
「応援隊が来たの?」
と聞かれた。
来てないので首を横に振ると、カリミナさんは目を吊り上げた。
「ここは高貴な方がいらっしゃいます。入る事は許されません。魔獣には見えないから人よね?」
その時になって自分の出立ちが怪しい事を思い出した。
確かに頭から毛布を被り、口も覆ってるから見えてるのは目だけ、そして足元はドレス、さらに頭上にモップ様がいるから、めっちゃ顔の長い生き物になってる!
慌てて、毛布を下ろして、タオルを下げる。
「失礼しました。ルキアーナです。」
そう笑うと、カリミナさんは目が飛び出るくらい驚いた顔をした。
「え、ど、どう、なん、る、ルキ、え?ええ?」
完全にパニックである。
ひとまず寒いので再びタオルと毛布を着用すると、
「お手伝いに来ました。状況はどうなのでしょう?兄は?エーデル侯爵は?」
一息に質問するが、カリミナさんはパニックのまま。
「は? え? 手伝いって? え、え? ルキアーナ様が?え、他には、どうやって?」
ダメだ、完全に混乱してるな。
「いいですか?カリミナさん、私は兄やエーデル侯爵様が倒れていると聞いて、ここへ1人できました。助けるお手伝いがしたいのです。状況を教えてもらえますか?」
冷静にいつもよりゆっくり耳に届くように話した。
カリミナさんは声が聞こえたのか目をぱちくりさせて、アフロヘアに触れながら頷いた。
「ひとまずルキアーナ様がどうしてここにおられるかは置いておきます。状況をご説明致します。」
ふうとカリミナさんは息を吐くと話し始めた。
「私共はこの地に狼種の魔獣が多数出現したため、近隣の領地から討伐要請を受けて来ました。討伐は順調で3日ほどで半数ほど打ち、後は結界で封じる事にしていたのですが、その頃から騎士が高熱を出して倒れ始め、最初は2人でしたが日を追う毎に4人、8人と増え、騎士が足りず応援を頼みました。応援が付いた頃には隊のほとんどは倒れており、到着した騎士までも倒れ始めて、この状態です。医師と私も同行しておりましたが、医師の判断で治癒師の私は原因のわからない病態の為近付く事が許されていません。隔離され1人この状況で近づく事も許されず、助ける事もできず。申し訳ない限りです。う、う、う。」
泣いてしまった。
治癒師は貴重だから、医師が守ったんだね。
「この熱は魔獣に噛まれたとか傷ついて起こりましたか? 原因は魔獣にあると思いますか?」
とりあえずカリミナさんが無事かもわからないので、近付かない。
「う、う、わ、私にっくぅ、わかりませんが、ううっ、違うと、思います。ヒック、傷ついた方は私の、っ所に来ましたが、すぐに治癒魔法で治してますから。ヒック」
「カリミナさんは症状はないですか?」
「ヒック、2日ほど前に頭痛と倦怠感がありっありましたが、ヒック、隔離もされていたので自分に治癒を施したので、いっ、今は大丈夫です。」
頭痛、倦怠感………何かの感染っぽいよね。
「倒れた方の症状わかりますか?」
カリミナさんはヒックヒック言いながら、
「うっく、と、とにかく高熱、ヒッ、鼻水、ず、頭痛、体の痛み。う、う、騎士達なのに熱が、た、高すぎて、う、う。」
顎元に手を持ってきて考える。
潜伏期間短い、広がり方からいって1〜2日、高熱、頭痛、関節痛などなど、鼻水で風邪に決まりだな。
しかも冬、前の世界で言うならインフルエンザだな。
薬があれば1番だけど、風邪なら1週間あれば自然治癒で治る。
対症療法でまずは解熱させる為に局所を冷そう、水分接種、寒いが換気、湿度は雪があるから大丈夫、そして消化の良い食べ物。
よし。
私はする事を脳内でまとめると、カリミナさんにテントを指差す。
「このテントは誰がいます?」
チラリとカリミナさんはテントを見て、肩を震わしながら。
「魔術師師団長様と第二騎士団団長様と副団長様と医師です。」
なるほど。
大物がみんな揃ってる。
揃ってるから仲良くうつったんだな。
なんか笑えてくる。
「カリミナさん、1日に使える治癒魔法は何人ですか?」
「一気に完全治癒は5人です。後は休みながら10人は可能かと。」
おおおおーすごい。
さすが王宮治癒師、神殿の治癒師より能力が高い。十分だ。
「では私が中に入って様子を確認してきます。」
私がそう言うと、カリミナさんは慌てた。
「とんでもないです。危険です。」
そんなカリミナさんに私は笑うと、口を指さした。
「大丈夫です。敵は大体分かりましたから、それにこのタオルがあるので。」
意味がわからないとカリミナさんが首を傾げるが、私はサンタ袋を下ろして中を漁った。
あるある、手に消毒薬を取り、また袋を担いだ。
とりあえずテントのチャックに消毒液をかけ、チャックを開けた。
「あっ!」
カリミナさんが制止の声を上げるが、
「行ってきます。待っていてください。」
そう言うとさっさと中に入ったのだった。
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カリミナさん、毛布に覆われたルキアーナちゃんが不審だったろうね(笑)
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