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52 王宮治癒師は……

閲覧してくれる方々に感謝です。

治癒室は医務室とは全然違う場所にあった。


この辺りにも連携の無さを感じた。


王宮医務室は病態と新薬の研究を兼ねている機関で、薬と自然治癒で治療するので治癒に時間を要する。

時間猶予のない治療が必要な場合のみを王宮治癒室が引き受けているとのこと。


時間の猶予があるかないかの違いで、全く独立した機関で存在している。

なんで今まで協力してこなかったのか不思議だ。

まあ、見解の違いは出てきそうだけどね。


そんな事を考えていると、ルンバール医師が治癒室のドアをノックした。


コンコンコン


「医務室から来ました、ルンバールです。」

「はーい、どうぞ〜。」

中から明るい女性の声。


「失礼します。」

ルンバール医師に続いて、医局長、私と入っていく。


「ま、医局長まで、どうされましたか?」

驚いた声がしたが、ルンバール医師と医局長で女性が見えない。


「少し治癒魔法について意見をいただこうと思いましてな。」

「今日はもう一方お連れしている人がいるのですよ。」

ニコニコなルンバール医師が場所をあけてくれた。


ギョッと目を見開く。


アフロ⁈

か、カツラ?

いや、カールがめっちゃキツいのか!


女性のものすごいクルクルボンバーヘアに驚いていると、ルンバール医師が首を傾げた。


「どうされましたか?ルキアーナ様。」


「い……え…あの、…だ、大丈夫…で…す。」


意表をつき過ぎていて、言葉がもっさり王子の様になってしまった。


え、普通なの? アフロ普通?


挙動不審になっていると、

「あはは、カリミナさんの髪型ですね。これね特殊なんですよ、びっくりな髪型ですけど仕方ないみたいですよ。僕も初めてお会いした時驚きましたから。」

ルンバール医師が苦笑いで女性の髪を見た。


「まあ、失礼ね。仕方ないでしょ、この髪は何故か魔力が満ちてるほどクルクルになるんだから。魔力を消費してくると巻きが緩くなって、いい感じのウェーブヘアになるのよ。」


女性は髪を摘むと引っ張って見せてくれる、けど指を離すと一瞬でクルクル巻きに戻った。


魔力量と髪の巻き具合が関係してるって事?

意味不明な説明に困惑するけど、女性は私に向き直って優しげな表情を浮かべ制服をつまんで膝を折った。


「宰相様の御息女ルキアーナ様ですね。ようこそお越しくださいました。私はここで治癒師をしております、カリミナ・サマーでございます。」


礼をしてくれた女性は艶やかな茶髪のアフロヘアに黄瞳、紺色シスター服を着ていた。

スレンダーで髪型が普通なら超美女、でもアフロヘアでなんか残念感が否めない。


「丁寧な挨拶ありがとうございます。ルキアーナ・ノア・ウィンテリアです。忙しい中、突然訪問してご迷惑をおかけします。」

アフロに気を取られ、令嬢忘れ普通に頭を下げる。


「まあ、そんな、頭をお上げください。」

頭を下げる私にカリミナさんの戸惑った声がした。


あ、違う部署に挨拶するように言ってしまった。


ルンバール医師や医局長がクスクス笑う。

「ルキアーナ様はみんなに気さくなのですよ。」


「まあ、そうなのですね。驚きましたわ。」

カリミナさんもホッとしたように黄瞳を細めた。


「それでどうされましたか?」


カリミナさんが医局長に首を傾げたので、私たちはソファに座り先程話していた医療の構想と治癒魔法のコントロールについて説明した。


話が進むにつれてカリミナさんの興奮はどんどん上昇した。

「素晴らしいお考えですわ!私も治癒魔法の効率をもっと上げれないかと常々考えていたのです。でもおっしゃる通り私達治癒師は患者の病態把握が得意ではありません。でも医師と協力できるのなら、これほど心強い事はありません。魔力をコントロールした事はないので、これから実証していかなければなりませんが、魔力消費が抑えれるのなら治癒師としてもありがたい事です。いざというときに魔法が使えなかったという苦い思い出は色々ありましたから。」


「では、コントロールの実験を、仕事の合間にでもやってみてもらえますかな?」

穏やかに医局長が言うと、カリミナさんはやる気に満ちて胸元に拳を握ると。

「何を悠長な事を! 合間と言わず今しましょう! 皆様も揃っている事ですし、これからすぐに!」

ガッと立ち上がった。


気合い十分なカリミナさんに周りはびっくり。


驚きで体がひいていると、カリミナさんは顎を引いて、急にものすごく悪い顔をした。


「さあ、誰を連れて来ましょうか? 色々試さないといけませんねぇ。切ったり折ったり、穴も開けて、ああ、毒も盛ってみましょうか。部分的に治すために、どれから試しましょうか?」


急に目つきが怪しくなり、私達を見回して、獲物を狙う魔女のように豹変した。


ひいぃぃ………怖!

切る⁈ 折る⁈ 穴⁈


か、か、カリミナさんが急に豹変して……。


医局長もルンバール医師も顔が真っ青に。


驚きで固まっていると、

「騎士がいいかしら、体力あって少々では死にませんから。治癒魔法で何度でも元通り!」

さっきの目つきと打って変わって、カリミナさんは口元に人差し指を当ててニコリと笑う。


「お、落ち着いてください!」

ルンバール医師は焦って立ち上がって動揺してる。


コンコンコン


こんなときにノック音。

そしてこちらの状況がわかってない1人の騎士が入ってきた。


「すみません。大した傷ではないのですが手のひらを切ってしまって、剣が握りにくいので治し………。」

状況を説明しながら手のひらから視線を上げた騎士が、歩みを止めて固まった。


ルンバール医師がカリミナさんを後ろから羽交締めにし、医局長もカリミナさんの肩を抑えている。


私は騎士に向かって歩み、ニコッと笑ってみる。


後ろ2人は今にも飛びつきそうなカリミナさんを抑えるのに必死だ。


「え、取り込み中ですか?治していただきたいのですが。」

怪訝そうに騎士が言うが、これはやばい!飛んで火に入る夏の虫とはこの事だ。


「い、今は取り込み中ですので、また後でお願いしますぅ〜。」


逃げて〜。


そういう思いを込めて騎士の腕を取り、入り口に向かって歩く。


「あ、待ちなさい!ちょうどいいモルモット〜!」

後ろでカリミナさんが何か言っているが聞こえないフリして、今度は騎士の背中を押す。


「え、え、え、」

騎士も戸惑いながらも入り口に向かう。


「今は危険なので一旦帰ってください!」

ドンと押して部屋から出すと、私はドアをピシャンと閉めた。


振り返ると、カリミナさんはまだ暴れていた。

きついカールのアフロヘアは一切乱れず細い体のどこに力があるのか、抑えるルンバール医師と医局長は髪がボサボサになっていた。


うわー……。


「ダメですよ、カリミナさん。わざと傷つけて治すのは無しです!まずは切り身の肉ブロックで試しましょう!それでうまく出来るか実験してからですよ。それが出来ないと人体実験はダメです!実験される側が可哀想です。そんな事をするなら、そもそもこの話はなかった事にしますよ?」

私が強めにそう言うと、ようやくカリミナさんが動きを止めた。


そして目をキョトンとさせると、眉を下げた。


「まあ、私ったら先走って。そうですね、そうですよね、先にコントロールの確認しなくては。あらあら、先生方どうされましたか?」

すっかり大人しくなったカリミナさんは、ボロボロになっている2人に首をを傾げた。


ボロボロ2人は大きくため息をついて肩を落とした。

「勘弁してください。」


それからルンバール医師はヨロヨロしながら調理場に向かったのだった。







閲覧していただき、ありがとうございます。


クルクルカールヘアのサディスト気味の治癒師カリミナさん登場。楽しくなりそうです。


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