51 医療改革がしたい訳では……
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治癒属性に気付いてから、また屋敷の図書室で再度治癒魔法について読書。
治癒魔法のやり方の記載は無いが、自分の手から魔法が出た時の事と神殿での治癒魔法の見学を思い出す限り、治るように思いを込めて魔力を放出しているだけだ。
全身にかけるから魔力消費量が多いのも頷ける。
神殿にいた治癒師1人あたり1分治癒魔法で5〜20人診れたらいいところ。
1分治癒魔法5人しか治療できない治癒師は、兄のような重症患者の完全治癒は1人を治すので魔力が限界になる。
20人診れる人で重症患者の完全治癒は3、4人、重体患者ならもっと少ないかもしれない。
神殿1つあたり治癒師は王都は10人だが王都を離れるにつれて人数が減る。
10人でも日に25〜30人完全治癒できたらいいとこという事か。
すごい能力だけど、有事の際や優先順位等もあり、いつでも安心というわけではないと感じる。
こっちの世界は外科のような切った貼ったがあまり無さそうだし。
治癒魔法は溜めておけないから日に治せる人数が急には増えない。
地道に魔力が増えていくしかない。
そうなってくると、やっぱり治癒魔法のやり方の効率の悪さが目立ってくる。
正常なところに治癒魔法をかける必要は無いのに、魔力を消費しているのが勿体無く感じる。
ピンポイントで病態がわかれば、そこに治癒魔法をかければいい。
魔法はイメージなのだから、全部治れ〜ではなく、ここ治れって魔力を放出したらいいと思うのよ。
そしてそれが出来るなら魔力消費削減に繋がって、もっと多くの人が簡単に治療できてくるはず。
そうなってくると聖女がいなくても、今いる治癒師でこの世界の医療が守れるようになって、ルキアーナちゃんが聖女を産む必要性も無くなるって訳よ!
考えはまとまった、後はどうやって実践して検証するかな。
私が治癒魔法が使えるとバレてもいけないし。
治癒魔法が使える知り合い……オリビアさんは苦手って言ってたし、先代の王妃のルキアーナちゃん祖母は会ったこともないしな。しかもなんか肩書きが畏れ多い。
やっぱり自分で検証か? でもそうそう病人や怪我人に出会わない………。
………いるんじゃないかしら? お兄様の側には。
王宮騎士団なら訓練とかで怪我人くらいは出そうよね。
そういえば王宮にも治癒師っているんじゃないのかな?
医局長かルンバールさんに聞いてみよう。
「モフ。」
机で這っていたモフを肩に乗せると、図書室を後にした。
♢♢
王宮までは公爵家の護衛付きで向かい、モフをポケットにしまうと医務室に向かった。
幸い医局長もルンバール医師もおり、先ほどの考察をお二人にしてみた。
ものすごく難しいお顔をしている。
ダメか、難しいか。
「ルキアーナ様の治癒魔法の効率が悪いという事は理解出来ました。そして問題箇所のみに魔法を当てて魔力消費量を抑えるという考えも。素晴らしい考察に舌を巻きますが、怪我には適応出来そうですが、病の治癒となると難しいかもしれません。お恥ずかしながら、治癒師は医師とは異なり治療法が1つで、何であろうとも全身に治癒魔法をかけるだけですから、あまり病態について詳しくないのですよ。治癒師よりは薬師の方がまだ病態の知識は豊富でしょう。症状に合わせて魔法薬の調合をしますから。それぞれが独立して存在しておりますから、情報のやり取りもあまりないですし。ですので治癒師の魔法コントロール力は、私共ではよくわかりません。今考えて魔法を当てている者がいかほどいましょうか。」
なるほど魔法さえかければ治るのだから、考えないよね。
大雑把な治療はこの間の見学で見た。
確かに全然病態を気にしてなかった。
なら適材適所だ、チーム医療でどうだ。
「ではこういう流れはどうでしょうか。診療所で医師が検査、診察をして症状を把握する、薬で治りそうな時は処方箋を作り薬師へ任せる。それで治りそうにない人は神殿に紹介状を書く。ここに何処が悪いか図でもいいからわかる様に記載して神殿へ依頼。紹介状を見た治癒師はそこに治癒魔法をかけて治す。ただこれには治癒師の魔法コントロールが必須ですが。この様な制度を作れば連携可能で患者情報も集まりやすいですし、多くの患者が適した治療が受けれると思います。」
現代で行われていた方法を提案してみる。
すると今度は2人の目が真ん丸になった。
これにはこっちもびっくりして一緒に目が丸くなる。
カーダス医局長が手を震えさせながら、
「も、もしそれが確立されたら、すごい事ですよ。医療制度が変わる。診療所も、薬屋も神殿も行く所を選ぶのは患者、そして来た患者を各々のやり方で診る。でもそうすると患者の病態の情報共有が難しい。また稚拙な医師、薬師に当たれば患者は治癒に時間と費用がかかる。神殿に至っては払う費用の桁が違うので、何度も通わなくて済むなら患者の負担も軽い!とにかくそれぞれが独立した機関と捉えておりましたが、患者を中心に皆で診る流れが作れたなら、一気に医療の効率化と患者の費用の軽減につながります。ああ、なんという事だ。ルキアーナ様、貴方様のさらなる改革恐れ入ります。」
ソファを降り片膝をついて頭を下げてきた。
慌てて自分もソファを降りる。
「ああ、やめてください。まだ何も出来てないですし、もしの仮定のお話をしただけですから。」
それに現代では普通の事なのよ〜。本当普通、普通なのよ。
ルンバール医師までが膝を付き。
「いえ、その思いつきを誰もなし得ていないのです。国民の事を考え、全体を見渡すその先見の明恐れ入ります。」
いやいや、私はルキアーナちゃんが王太子妃になるのを回避したくてしてるだけだから!
「いやいやルンバール先生まで!頭を上げてください!まだ治癒魔法がコントロールできるものかもわかりませんし!」
その後、床でしばらくこの応酬は続き、やっと冷静に話をして王宮治癒師の元に行く事になったのだった。
私はルキアーナちゃんに自由を求めてるだけだから〜!
閲覧ありがとうございます。
普通の事が、すぐ大事みたいになるね。
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