45 婚約回避の目論み
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兄はすっかり元気で、翌日寒い中お城に出勤して行った。
私も遅れて王宮教養の為にお城に向かった。
あそこの神殿にいた治癒師達は皆一様に金髪から橙色の髪に、同じような色合いの瞳だった。
でもバッチリ金髪金瞳の組み合わせはいなかった。
そして治療の過程を見ていると魔力量が少ないのも見てとれた。やはり聖女と呼ばれるレベルの人はいないのだなと思う。
だから王家が聖女を望むのもなんかわかった気がした。あの治癒魔法の能力はすごい。
あれが魔力量豊富で無尽蔵に使えるなら、全てを守ることができる。
王子達に含まれる治癒属性と属性を持たないルキアーナちゃんの魔力量を掛け合わせたら、聖女が産まれるかもと思うのも頷ける。
やばいな〜本格的に逃げれないのを実感してきた。それにネクス殿下にも執着を感じるし、利益一辺倒な感じが。
なんとか聖女と同じくらいの能力を何人かで分散して賄えないのか?
今は治癒魔法が使える女性が少ない。その上魔力も少ない。
男性は?治癒魔法は使えないけど、治癒属性持ちで魔力多い人はいる。ルンバール医師とか医局長、サンタール医師とか。
…………魔力の譲渡とかってできないんだろうか?
いやでも、治癒師の女性に魔力を譲渡するだけの勤務も面白くないだろうな、男性は。
うーんと腕を組んで講義室で唸っていると、上から声が降ってきた。
「相当考え込んでいますね。どうされましたか?」
顔を上げるとエーデル侯爵が立って顔を近くに寄せていた。
相変わらず麗しい出立だ。
ウッ、久々にイケメンビームに当たってしまった。
顔を両手で隠すとエーデル侯爵はクスクス笑って教壇へ移動した。
「昨日はルキアーナ様が突然お休みでしたので、第一王子殿下が怒ってらっしゃいましたよ。」
………ええー、なんでよ。
いないところでも、なんで怒られないといけないんだ。
理不尽。
意味がわからず腹が立ち、顔から手を離す。
「ふふふ、ルキアーナ様表情に出ておいでですよ。」
「すみません。理不尽だなと感じたもので。」
「それで、ルキアーナ様は何をお悩みで?まだ殿下もいらしてないですし、お聞きしますよ?」
エーデル侯爵が首を傾げる。
「では、昨日兄の付き添いで神殿に行ってまいりました。その際に治癒師の仕事を見せていただいたのですが、やはり魔力量が少ない事がネックになっていると感じたので、なんとか魔力量が増やせないかと思いまして。高位治癒師の増産はどうしたら良いかと。」
「なるほど、それは私達も考える永遠のテーマですね。」
当然というようにエーデル侯爵が頷く。
まぁ、みんな考えるよね。
「治癒師に魔力が譲渡出来たらいいんだけど。」
そう呟くと、エーデル侯爵が首を振った。
「できますが、それは魔力枯渇の対応と言いますか救命に係る事由以外で譲渡は禁止されています。以前いたのですよ、(森の中の聖女)と偽った者が。ある時森には聖女がいると噂が広がりました。そして同時期に王都では魔力の多い治癒属性持ちの貴族の誘拐が相次いでいました。この2つが結びついているとは思わず、元々低位治癒師だった者は能力が上がったのだと、その力を陛下の前でも披露して聖女誕生と騒ぎになりました。まあ、でも蓋を開けてみれば、誘拐された貴族達は洞窟で魔道具でつながれ、命の危機があるくらい日々魔力を奪われておりました。その集めた魔力を自身の治癒魔法に利用して聖女と偽っていたのです。結局その者は因果応報、魔力過多に耐えきれず肉体が先に悲鳴を上げてお亡くなりになりました。」
え、怖っ……治癒魔法って事は女? 女がしてたの? 怖すぎる。
「怖いですね、そういう悪用も考えれるのですね。魔力譲渡用の奴隷にしたという事ですか。」
「そうです。ですから、魔力譲渡は悪用される危険もあり、当人の命も危ない場合があるので法で禁止されました。」
うん、それは正しいと思う。
私は1つ頷いて、がっくり首を落とす。
無理かー、高位治癒師増産で婚約回避…………。
私の反応にエーデル侯爵が動揺する。
「え、まさか、魔力譲渡の悪用を考えてます?」
とんでもない事を言うので、頭の上で手を振る。
「考えておりません。考えているのは婚約者辞退の方法です。」
「ああ、なる」
「まだ、そんな事を考えているのか。逃がさないと言っただろう。」
突然毒クラゲの声がした。
出たな元凶、そりゃ考えるさ、ルキアーナちゃんの人生がかかってるんだから!
じんわり睨むように顔を起こすと、入り口にもたれかかったネクス殿下がいた。
相変わらずのキラキラぶりにイラッとする。
今日は赤、黒、シルバーが光ってる。スパンコールなの?スワロフスキーなの?
颯爽と殿下は歩いてくると、当然のように隣に着席した。
「いつまでも往生際が悪いな。」
ハンッと殿下に笑われるが無視。
私は忙しいんだ。考えるのに………。
「エーデル侯爵様、何故男性は治癒魔法が使えないのでしょう。治癒属性を有した貴族男性はそれなりにいそうですが。」
「それもまだわかっておりません。ですが治癒属性を持っていても男性では、治癒魔法を使う時に見られる金の光は出ません。せいぜい効果は体力回復くらいで、あとは薬に治癒効力を上げる魔法をかける程度です。どんなに努力しても男というだけで、治癒魔法は使えません。」
エーデル侯爵の言葉は以前屋敷で読んだ本と同じだった。
染色体由来なのか、ミトコンドリア由来なのか女性のみの特徴。
「うーん、遺伝子操作、クローン人間の作成……。」
……をすれば…………いやいやそれも犯罪。人の尊厳大事。
私が考え込んでいると、ネクス殿下が
「それは何だ、何を喋っている。一体なんの話をしているんだ?」
と首を傾げた。
「ルキアーナ様が治癒魔法の使える者もしくはその者の魔力が増やせないかと画策されているようです。」
エーデル侯爵が説明すると、ネクス殿下がこっちを見た。
「お前が私の妃となり聖女を誕生させれば解決だ。」
やっぱりか、やっぱり考えてた。
「………それを回避する為に考えているのですが? 当然のように言うのやめて下さい、何の解決にもなっていません。」
舌打ちしそうになるのを頑張って我慢した。
どうしても解決策を見つけたく、この日は殿下も巻き込んで私とエーデル侯爵で議論したが、結局いい案は浮かばなかった。
絶対解決策見つけてやるんだから!
………あれ?
今日、第二王子講義受けに来なかったね? どうしたんだろう?
こういう時こそ、その頭脳を生かしてほしかったと思うのだった。
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婚約回避がんばれ〜。
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