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37 婚約者候補の変化(第一王子視点)

閲覧ありがとうございます。

私はクルリスター王国の第一王子として生を受け、王太子となるべく努力していた。


私が8歳の時、宰相である公爵家に生まれた娘ルキアーナ嬢が婚約者候補となった。

そしてルキアーナ嬢が12歳になった時、ルキアーナ嬢の誘拐事件が発生した。誘拐の一報は執務室で書き物をしている時に入ってきた。


些細な嫌がらせを受けている事は影から報告は受けていた。

だんだんエスカレートしている事も。


それでも本人が飄々とし無表情を貫いている事もあり、手を貸すことはなかった。


とうとう誘拐まで起こしたか。

流石にやりすぎだと思ったが、それと同時に面倒くさく感じた。

何か指示を出さないといけないか、婚約者候補とはいえ、相手はまだ12歳だ、幼い。

このままでは今まで手を貸してこなかった事への批判があるかもしれない、と考えたら余計面倒くさく感じた。


宰相の抱える自衛団とザイナス副団長の元に第2騎士団を捜索に加える指示を出した。

私も必死に探していたというアピールくらいにはなるだろう。


御者は殺され、馬車も横転していたという。

連れ去られているし、捜索魔法に引っ掛からない事から最悪の事もあるかと想像する。


身分、魔力量、知性、器量も申し分なく、せっかくいい後継の産める令嬢だったんだがな。

この時の私の抱いた感情は、良いコマを失って残念という程度だった。


しかし深夜すぎて、ルキアーナ嬢が無事に保護されたと知らせが入った。

一応気にして眠らず過ごしていたが、これ以上手を煩わされる事にならず良かったと思った。


翌日登城してきた宰相を捕まえて状況を聞いた。

デアストロイ山崖で見つかったとき、頭部に外傷があり、髪が切断されていたという。

それ以外目立った傷は見当たらないが目を覚さないらしい。


ここは早くに見舞いにでも行って点数を稼ぐ事を算段するが、ルキアーナ嬢の父である宰相に阻まれた。

仕方ない、目覚めるまで待つ事にするか。


それから目覚めたルキアーナ嬢は記憶を全て失っていた。

好都合だと思った。以前は私の事を選ぶ事は全く考えていないようだった。上手く先導して王太子の座を確実にする為、宰相の目を盗み会いに行った。


ドアを開けて久しぶりに見たルキアーナ嬢は目をまん丸くして驚いた表情をしていた。

あんなに能面のように無表情だったのに。

少し会話をしただけだったが、感情のまま驚いたり怒ったり表情がコロコロ変わるのが面白いと思った。


また影から知らせが入った。ルキアーナ嬢が魔力を上手く扱えなくなっており、魔力を見ることもできなくなっていると。そんな事があるのか?あの魔力量だぞ?


元々魔力は多大なのに無属性が故に魔法が使えず、難儀だと思っていたのが余計に能力が後退したようで腹が立った。

そしてその原因が精神ショックという。


ならば私がお茶会に招待すれば喜びに溢れ、精神ショックが緩和するのではと考えた。早急にお茶会の招待状を送り、王宮の庭園を初めてお茶会用に可愛らしく飾らせた。


やってきたルキアーナ嬢は子供らしく跳ねて喜んでおり、予想通りの反応に後ろから見て初めて可愛らしいと思った。

けど可愛いと思ったのは初めだけで、席につきお茶会が開始すると目つきが鋭くなり、こちらと対等に会話をしてきて驚いた。


全く物怖じせず、年齢差を全く感じる事もなく対等に会話をしてくる。


言い聞かせるつもりが上手くいかず、どうなっているんだ?という戸惑いと、諭すような発言に苛立ちが募り、知り合いの令嬢が来た知らせも受けたので早々にお茶会を後にした。

年も近く色香もある令嬢と逢瀬をしているのに、「お互い分かり合って過ごせないのか」と諭された事が頭の中から離れないおかげで、全くその気にならず余計に苛立ちが募った。


思い通りに操り、王太子へ誘導しようと考えていたのに、以前にまして思い通りにならなくなったように感じた。

どうなっているのだ。思い返してはそんな疑問が浮かんだ。


そして今度は全く接点のなかった第二王子と共に王宮教養を受けるという。今更接点があったとて弟があの状態なら敵にもならない。陛下も余計な事をと呆れるが、気にも止めず普段通り過ごしていた。


すると今度は昔から呪いと言われていた事象が偽りではと問題提示をし、王宮医師を巻き込んで呪いを病と発表させ、特効薬の助言をして薬を完成させた。そして詐欺まがいの解呪師も一掃させ、世間にニキービは差別対象ではなく誰でもなるものと浸透させた。


聡明で能力が高い事は王太子妃教育で報告は受けていたが、12歳の小娘ができる事なのか?普通に疑問だった。誰もが疑わず、受け入れていた伝承を突然覆す。大人でもできることではないし、まして王宮医師でもないのにどこに知識があり発起人になれたのか。


その功績に王が褒賞を与える事に決めた。

もちろんこの好機を逃すはずもなく、褒賞式に贈るドレスも手配しお茶会に誘った。


次に会ったルキアーナ嬢はふわふわした感じが消え、素を隠さなくなっていた。

私を気に入らない感情は隠さない。会えば眩しそうで嫌そうな顔をする。そしてたまに射抜く様な視線。体つきは子供なのに、とても12歳とは思えなかった。


褒賞式の際のエスコートは了承してもらい、喜ぶと想像してドレスを贈る旨を伝えたら、即答で断られた。しかもキラキラドレスが目に悪いとまで言われ、贈り物を断られた経験もなく頭が真っ白になった。王子の私が贈る物に要らないという者がいたのか。こんな子供に断られるとは、驚きと共に信じられなかった。


そして数日後ドレスが出来上がり、確かにキラキラチカチカして目に悪いのかもと少し思ったが、豪華さがわからない貧乏性なのだと思う事にした。やはりキラキラは美しい。


いつか着る事があるだろうと王宮で保管する事にし、私もルキアーナ嬢は派手な装いで来ないと考え、影にルキアーナ嬢のドレスデザインを調べさせ、急遽対に見える様な正装を仕立て直した。


褒賞式で婚約者をアピールすべく馬車まで出向き、エスコートした。

ペアルックの様な装いに嫌悪感を露わにするルキアーナ嬢に、一泡吹かせたようで笑いそうになった。


私に対して悪態つくのにホールに入ると子供らしく萎縮してみせ、やはり12歳だったかと笑うと対抗心に火がつき、妃教育の賜物で堂々とした仕草で周りを魅了していった。

ずば抜けた聡明さと豪胆さを感じ、自分を引き立てるにふさわしいと感じた。


そして陛下からルキアーナ嬢の功績、褒賞内容が語られ、私の婚約者になる者として貴族達に紹介し周知させた。


もうこれだけの者がルキアーナ嬢の存在と立場を理解したのだから危険はなくなったと思っていたら、つまらぬ令嬢のやっかみによる拉致が起こった。

まさか自分の娘らが、そんな事をするほど稚拙と考えていない貴族達に辟易する。しっかり親なら子の手綱を握っておけと、睨みをきかせ2度と起こらないように釘をさして褒賞式は閉会した。


幸いルキアーナ嬢はドレスが破けただけで、大した怪我もなく自力で脱出していた。よく1対4で令嬢とはいえ年上に囲まれ脱出できたなと感心する。

あの度胸はどこからくるのか、以前の物静かな仮面の下に隠していたというのか?ルキアーナ嬢という人物像が最早分からなくなっていた。


そして理解不能な事が更に続く。

犯人の令嬢を捕縛する命が陛下から降りるも、何故が部屋のドアが開かないという不思議現象が起こった。


騎士が力づくで壊そうとしても、魔術師が魔法でドアを燃やしても凍らせても開かなかった。とうとう魔術師師団長まで呼び寄せ、多少怪我をしても部屋を壊して令嬢を捕まえる事にした。師団長は初めは緩い魔法から対応し始めたが、全くびくともしないので、周囲を結界で包むと大魔法を展開した。一気に別棟が消え更地になり、その部屋だけ無傷で残った。


更に師団長は転移で中の者達の救出を試みたが、何故か転移が遮断されて救助不能となった。


王族男児には特別な力がある。ここは王太子アピールで出番かと画策したが、陛下はお怒りになっていたので、私と弟に救済に手を貸すなと命じた為、私達は手出しができなかった。

無論アピール出来ないのなら手出しをする気もなくなったが、ルキアーナ嬢を囲った部屋が開かなくなった事が引っかかった。


事件で狙われたのはルキアーナ嬢だと聞いた師団長は、渋る宰相に掛け合いルキアーナ嬢を呼んだという。

何をさせる気なんだ。ドアは城の最高峰でも開かないのだぞ。それにルキアーナ嬢の魔法はからっきしの上に魔力操作ができなくなっている。なんの為に呼びつけたのか気になり現場に出向いた。


更地に置いたような部屋が滑稽に映った。閉じ込められている令嬢達の家族が泣き叫んでいるが、お前たちの娘がしでかした事であろうと冷めた目で見る。


登城したルキアーナ嬢は惨状に戸惑っているようだった。そして何故呼ばれたか師団長から説明があった。

は?弟の呪いや結界を弾くだと? 物凄く精度の高い物だぞ? 

そして師団長の束縛魔法が効かない?そんな事があるのか?

信じれない思いでルキアーナ嬢を見下ろす。


そして自分を監禁しようとした令嬢達の家族に、開けれなかったらごめんなさいと頭を下げたルキアーナ嬢が信じられなかった。自分が危険に晒されたのだぞ?怒り喚き、力を貸さないのが普通なのに、何故頭を下げる。理解できない。


そんなルキアーナ嬢がドアを開けてしまいそうな気がして、負ける気がして先にドアを開ける事にした。特別な能力を使うわけにはいかないが、私も魔力量は多い方だし、鍛えているから力もある。そう思いドアノブを握るが全く動く気配がない、ピッタリ張り付きドアは揺らぎもしなかった。


何故こんなにくっついているのか?誰がしたのか?もしこれが結界なら今までにないほどの頑丈さ。王国随一の師団長エーデル侯爵にも歯が立たないほどの結界。他国の魔術師が入り込んだか?様々な疑問が浮かんだ。


そしてルキアーナ嬢は自分の手のひらを見つめ、ドアノブを回した。

一瞬部屋が光った気がしたが、それよりも驚きが優った。


回したのだ、あれほど動かなかったドアノブが簡単に動き、普通に部屋に入るようにドアを開け広げた。信じられなかった。どうやって開けたのか魔法を使った形跡はなく、ただ開けたようだった。


そして開けると今度は倒れた令嬢に向かって、ルキアーナ嬢が宰相の制止を聞く前に走り出した。何をするのか私と宰相、師団長も飛び込んだ。

異臭がし、見えた令嬢達は酷い顔つきでぐったりしていた。王宮医を呼ぼうとしたが、ルキアーナ嬢の動きが目についた。


各々令嬢に近づき、瞳を覗き込み、手首を掴んだり、足を押したり、おでこに手を当てたり。まるで医師のように。

知識で知っていても、医師でもない12歳の能面のようだった令嬢が、こんなに迷いなく動ける物なのか?


もう限界だった。こいつは誰だ?


表情、言動、行動、知識量、明らかに前のルキアーナ嬢を圧倒的に凌駕し、別人としか思えない。


明らかに別人だろう?


そして私は本人を問い詰めるべく、部屋から逃げようとするルキアーナ嬢の腕を掴んだ。


逃げれるとは思うなよ。納得いくまで返さない。


仄暗い感情が湧き、ルキアーナ嬢を伴って部屋を後にしたのだった。









閲覧してくれて嬉しいです。


第一王子からめちゃくちゃ疑われてる!


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