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35 社交会は毒花ばかり

閲覧ありがとうございます。

褒賞式は無事に終わり、立食ダンスパーティーに変わった。


私の褒賞式なので夜会と違い、外はまだまだ明るい。


自分のやらかしに、ふらふらになり飲み物を取りに行く。

もう喉がカラカラだ。


なのに後少しでジュースという所で後ろから声がした。

「ご機嫌よう。ルキアーナ様、あなたが殿下の婚約者候補でしたのね。おっしゃってくださればよかったのに。」


振り返ると扇子を口元に当てたベラドンナさんが立っていた。


喋る機会を与えてもらえなかったよ?と思いながら、疲れたを隠して笑顔を作る。

「こんにちは、ベラドンナ様。」

「まだお若いのに随分なご活躍ですのね。わたくしには真似できませんわ。」


褒めてくれている気が全くしない。


今日もスパンコールでキラキラ、ミントグリーンがシャンデリアの光に反射して、魚の鱗のようだ。


「素晴らしいドレスですね。」

一応私が褒めると目を細めた。


そしてより近づいてくると、

「ルキアーナ様は殿下とお揃いのようで、妬けてしまいますわ。私も何処からかスミレ色が欲しくなりますわ。」


ウエストから裾へ伸びていたレースのグラデーションを踏まれる。


この人………破る気。


動けず固まっていると、扇子を口元に当てたまま耳元で囁く。

「いい気になるんじゃないわよ。小娘、子供と変わらない歳で殿下にふさわしいわけないでしょ。さっさと辞退しなさい。でないとどうなるかわからないわよ。」


めっちゃセリフが悪役、やっぱり悪役令嬢!こういうのはテレビアニメでしか見てこなかった。


でも若い、まだ18〜20歳ってところね。


私はニッコリ笑うと、

「どうぞどうぞ、熨斗つけてお渡し致します。ベラドンナ様の方がお似合いと思いますので。」

「のし、とは…?」

怪訝そうな顔をした。


あ、めっちゃ日本語だった。


「お気になさらず、殿下はラッピングしてお渡しします。」

言い換えたら嫌味と思ったのか、ヒールでギリッとレースを引っ張られ、


ビッ!

嫌な音が聞こえた。


下を向くとレースが裂けていた。


ああ、ルキアーナちゃんのお母さんが用意してくれたのに!


顔色の悪くなる私を見て、ベラドンナさんはうっそり笑って、

「遠慮なく殿下はいただきますから。では失礼致します。」

そう言って素晴らしいカーテシーを披露し去って行った。


あの子なんて子なの、人の服を破るかね。


オリビアさん悲しむだろうな。

レースを持ち上げ少しヒラヒラさせる。


あとで謝ろう。


そう思って気を取り直してジュースの方に向きを変えると、

「ルキアーナ公爵令嬢様にご挨拶申し上げます。」

と声をかけられた。


またかと振り向くと、手品のように現れた色とりどりのドレスに驚き、よく見ると9人の集団令嬢達が立っていた。


うわー囲まれてる。

真ん前の人がリーダーか? 1番立ち姿が美しい。


ハーフアップにした豊かな青紫色の髪に濃い紫に見える瞳、でもその表情は穏やか。

顔のパーツが小さめでスッキリ美人だ。着ているドレスも薄い水色で仕立て良くシンプルでよく似合っていた。


「先に紹介させていただきます。私はヒアキントス侯爵の娘ロベリア・ヒアキントスです。こちらがイソトマ・ブルースター伯爵令嬢。その隣がダチュラ・エンゼルトラン伯爵令嬢、そしてこちらがキングサリ・フジーロ男爵令嬢とサーフラン・コルヒチン男爵令嬢ですわ。」


…………え、後の4人の紹介はいいの?

ぐるっと全員の顔を見る。


特に皆ニコニコしていて気にしてなさそうだ。これが普通なんだね。


ひとまず納得して名前を思い返す。

ベラドンナさんに続き、ロベリアさん、イソトマさん………聞いた名前達に顔が引き攣る。


みんな毒花の名前………。

この世界は毒の名付けが流行ってるのか?


毒と付く名の人にいいイメージがない。


先入観はいけないのだが、こっちに来て毒の付く名の人で、良い人に出会ってきていない。


少し警戒しながら、ゆっくり膝をおり、挨拶をする。

「丁寧な挨拶ありがとうございます。ルキアーナ・ノア・ウィンテリアと申します。」


顔を上げると、皆が更に囲ってきた。


皆背も高く、さながら檻に閉じ込められてるようだった。


「貴方様がルキアーナ様ですのね。お姿を見ることができて嬉しいです。」

「素晴らしい銀髪ですわ。どちらの香油を使われてますの?」

「殿下にエスコートされて、とてもお似合いでした。」

「やはり第一王子殿下の婚約者になりますの?」

次々声をかけられて、全て把握できず戸惑うと、ロベリア様が一歩出た。


「皆様、ルキアーナ様が戸惑っておいでですよ。大きなお姉様方に寄られて怖がられてしまいますわよ。」


そうやんわり嗜められて、周りは「まあ、そんなつもりは。」と少し離れた。


「この度のご活躍と褒賞おめでとうございます。そのお年での聡明さ感服致しますわ。」

穏やかな微笑みと共に賞賛してもらい、嬉しくもあり恥ずかしくもなる。


「ありがとうございます。」

恥ずかしさを隠すように下を向く。


その瞬間に前5人が目配せしていたのは気付かなかった。


顔を上げたらロベリア様が少し驚いた声で、

「ルキアーナ様、レースが裂けて。」

と小声で言った。


あ〜さっきベラドンナさんに破かれたのよね。やっぱり気付くよね。


すると1番端の全く紹介もされていない女性が、

「ルキアーナ様、私の侍女が裁縫を得意としておりますので、目立たないよう手直し致しましょう。」

とにこやかに勧めてくれた。


え、どうしよう。オリビアさんも遠いし、離れてもいいのだろうか?

疑問が顔に出ていたんだと思う。


また今度は反対側の名を知らない女性が自分の胸に手を当てて、眉を下げた。

「大丈夫ですわ。かの侍女は腕がとてもよろしいんですの。すぐ直りますわ。私が自信を持って、おすすめします。それにせっかく準備していただいたドレスなのでしょう。傷ついているままでは、ご家族が悲しまれますわ。」

そう言われると、私も破れた罪悪感もあるので頷く。


「こちらです。」

侍女がいるという女性に付いて歩くと、名も知らない女性3名も付いてきた。


どちら様かわからない人に囲まれてはいたが、和やかに話しかけられ談笑しながらホールを出た。


庭園が見える廊下を進むと、いくつかのドアが見えてきた。


「こちらは当家が借りている部屋でございます。」

と言って笑って開けた部屋は真っ暗だった。


直感でこれはまずいと思ったが、前に1人、横に1人、後ろ2人。


小さい私は逃げる手立てなく、声を出す前に押し込まれた。


ドアの閉まった部屋は薄暗く彼女達の表情を隠した。

「これはどういう事ですか?」


するとピンクのドレスの彼女が笑った。

「もうパーティには戻れません。目立ちすぎたのよ。さっさと殿下方の婚約者を辞退しなさい。さもないと何度もこんな目に遭うわよ!」


目立ちたかったわけじゃないし、勝手に王様がしてるだけ。ルキアーナちゃんが望んだ事は一つもないよ。

じわじわ腹が立ってくる。


「それに殿下にエスコートされて、子供がいい気なもんよね。分不相応なのよ!」

どんと右肩を押されて、一歩出て踏み止まる。


「目立つ事されると困るのよ。こっちに面倒が回ってくるから、大人しく出てこなかったら良かったのにね〜。」

破れたレースを掴まれてヒラヒラさせられる。


1対4で分が悪いな。

けどこの世界の令嬢は基本ひ弱。魔法が使えなければ。


この年代だと高等科卒業前後、褒賞式に参加しているから貴族だし絶対魔力持ち、魔法が使えると思った方がいいだろう。


ごちゃごちゃ文句を言われながら、逃げ道を探す。


ドアは後ろ、後ろに令嬢2人、横はレース掴んでる、ここは王宮だから魔法は役付き以外禁止のはず。


ルキアーナちゃんに居候してから毎日している筋トレ、スクワット、どれだけ力が出るかわからないが、逃げ出そう。


エーデル侯爵にまだ転移魔法を教えてもらってないのが本当悔やまれる。


しかしよく喋る。ずっと文句言ってる。


指示を出したのは、あの5人の誰か。

やっぱり名前の通り、毒花だったな。


逃げるためにゆっくりヒール靴を脱いでいく。


柔らかなカーペットを足裏に感じて、レースを握る彼女の後ろに狙いを定め、私を指差す手首を掴んで思いっきり手前に引いた。

「キャ!」「ギャっ⁈」

レースを持つ人にぶつかり2人が倒れ込み、レースがブチっとちぎれた。

その反動で反対側の人に体当たりする。

「ああ!」

簡単に倒れて、すぐ走ってドアに手をかけ開ける!


「待ちなさい!」

先頭にいた彼女が追いかけるが倒れた人と、自身のドレスが邪魔で早く動けてない。


バン!

閉めて力一杯押した。

一瞬ドアがシルバーに光った気がしたが、気にしない。


裸足で走ってホールに戻った。

「はぁ、はぁ。」

ホールはさっきと変わらず優美な空気が流れていた。


オリビアさんを見つけて、駆け寄った。

「お母様。」


後ろから私が声をかけると、談笑しながら笑顔ですぐに振り返った。

私の姿を認めると、すぐに何かを悟ったように顔を顰めた。


「娘が来たようなので、ここで失礼致しますわ。」

優美に周りの人に微笑み、私の肩を掴んで歩き出した。


そして母は父を視線だけで呼び寄せると、

「王宮は大穴が開いてますわね。いつから無法地帯に変わったのかしら。」

にこやかに父に流し目を送り一言。


母怖い……いつもは儚いのに母の周りに冷気を感じ気温が下がった気がした。


その言葉に父はビシッと固まり、顔が青くなり、私のドレスを見て眉を顰めた。


父は私を優しく抱きしめてくれた。

父の腕の震えを感じながら、私は閉じ込められた部屋を伝え、4人の令嬢の特徴も伝えた。


父はすぐ陛下に私と母が帰る旨を伝えて、父が抱えて馬車まで運んでくれて私と母は早々に城を辞した。


馬車から遠くなる城を見ながら、ルキアーナちゃんはこんな危険にいつも遭っていたかもしれないと思ったら、ひどく胸が痛むのだった。








閲覧してもらえて嬉しいです。


美しい花も嫉妬で毒花に……。毒花に負けるな!


面白ければ、ブックマーク、評価をよろしくお願いします。

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