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26 解呪必要か?

閲覧ありがとうございます。

嬉しいです。

コンコンコン


迷いなく医務室をノックする。


「はい。どうぞ〜。」

ドアからルンバール医師が顔を見せた。


「こんにちは、ルキアーナです。ルンバール先生。」


膝を折って挨拶すると、

「これはこれは、さあ、どうぞ。」

医務室に招いてくれた。


「おや、ルキアーナ様、どうされましたかな?」

中に医局長もいて笑顔で迎えてくれた。


「はい、今日は体調不良ではなく、教えていただきたい事がありまして。」


椅子を勧められて、座る。

ルーラは医務室入り口に立って寄り道に不服そうだ。


医局長の椅子の後ろにルンバール医師が立つ。


「それで、教えてほしい事ですか?」

「はい、昨今の影響で私はまだ記憶喪失のままですので、覚えていない事がありまして教えてほしいのです。先生は顔の発疹の呪いについてご存じでしょうか?」


私のセリフに2人が顔を見合わせた。

「魔物の呪いによる発疹ですね、存じております。」


頷いたのを見て、

「それは本当に呪いなのですか?何の魔物の呪いなのでしょう?」


私が聞くと、医局長は片眉をあげて。

「魔物には死に際に呪いを放つものが一定数おります。昔からその呪いによって顔に赤い発疹が出る者がおります。呪いは突然かかり、解呪も早いものから時間のかかるものまで様々です。魔物の種類によるのでしょう。何故顔に発疹が出るのかは分かっておりません。呪いは医療の分野ではないので、魔術師に解呪してもらうのが1番早く治ります。」


「それは魔術師が解呪が必要と言っているのですか?医療界は顔の発疹の原因解明をしなかったのですか?」


私の質問に医局長は首を傾げる。


「そうですな、昔から呪いは解呪師の分野でしたし、呪いの研究は危険ですから迂闊に医師は近付いてきておりません。」


やっぱり、患者を診てきてないんだ。診れば分かるのに呪いの恐怖が優ってる。


「どうして、そのような事を聞かれるのですかな?」

「先ほど顔に発疹のある図書館司書の方が、ご令嬢に呪いがうつると忌み嫌われ罵倒されていたものですから。」


私が答えると、医局長もルンバール医師も気の毒そうな顔をした。


「呪いですから。人へうつらないと分かっていても気持ちの良いものではなかったのでしょう。」


「では、もし顔の発疹が呪いでなかったら、どうでしょう?」


私があまりに真剣に聞くからか、ルンバール医師が笑った。


「呪いでなかったのなら、解呪師は何を解呪していたのかという話になりますよ。」


1つ頷いて、右手の甲を指差す。


「では、手の傷の治りが悪く、傷口に黄白色の液体が溜まったり、赤く腫れたりした状態を何と言いますか?」


「………化膿、と言いますな。」

手を摩りながら、医局長が言う。


「もし顔の発疹も化膿が原因と言ったら?」


「「……………。」」

2人とも目を丸くして固まった。


だんだん眉間に皺が寄っていく。


「まさか、そんな事、いや…‥検証は。」

「もしそうであれば、忌み嫌われた者達が……。」

各々ブツクサ言い始めた。


今なら聞く耳を持っていそう。


私は1番言いたかった事を言う。

「私の仮説ですが、顔の発疹が呪いと言い始めたのはいつからか分かりませんが、医療が発達してない時に体調不良は祈祷だの解呪だのに頼っていた時代があったのでしょう。そしてそれを生業にしている者が一定数出てきた。しかし解呪師は呪いがないと生活は成り立ちません。そして顔の呪いは都合が良かった、治りが早かろうが時間がかかろうが、呪われたと思っている者は必ず来る。そして解呪師も治るためには解呪が必要と解いてきた。これは生業を成り立たすためと考えます。呪いという事になれば治癒魔法では効かないとなり、医師や薬師が関わってこない。より利権は解呪師一択となります。年月をかければ疑う者もいなくなり、今の状況が生まれる。」

「……………。」


先生方が何も言わないし、私も興奮して続ける。

「ここで一旦呪いを忘れて、1患者として見て下さい。症状は特に若者で出る発疹。これは若いが故に思春期特有の皮膚活性が激しい為、顔の脂、汚れ、菌増殖で化膿、発疹となっているのでは考えます。もしそうであれば治療法があるはずです。先ほど会ったポスターさんは男性なので顔は石鹸で洗わないと言っていました。この場合顔の汚れはしっかり落とし、清潔に保つ事が有効です。男女関係なく洗顔の必要性を推奨する必要があります。あとは菌増殖を抑える薬、例えば黄ばく、もしくはキハダ樹皮を使った軟膏が効果的だと思うのですが。これらを用いた薬があり………ま…すで………しょうか?」


ハッと気付くとすっかり夢中で話してしまって、医局長もルンバール医師もポカンと口を開けて放心していた。


まずい、まずい、検査技師の私が出過ぎて喋りすぎた!


こっちまで変な汗が出てきた。


小さく小さく萎縮するが、後の祭り。


ハッとした医局長が、

「ルキアーナ様、その知識はどこで……いえ、優秀でいらっしゃるのは周知しておりますが……。聞き慣れない言葉もあり。」

「ほ、本で、読んだ事と呪いについて聞いて、考え着きました。」

思わず被せるように答える。


「キハダ樹皮はありますが、おうばくでしたか、それはどのような、いや、それらをどのように使うのか。その本はどこにございますか?拝見したく思います。」


探りながら喋るつもりが興奮して一気に喋ったから困った。現代の知識とは言えない。

本なんかあるわけないし!


「ああ〜、何処でしたか? 昔の記憶なのか、ほほほ、記憶が混乱しておりよくわかりません。」


都合が悪くなったから、記憶喪失を発動する!


「そうですか。」

明らかにガッカリしてる。


ごめんなさい。教えれないんです。


都合が悪くなって俯くと、歩いてきたルンバール医師が腕を掴んできた。


「すごいですよ、ルキアーナ様!さすが次期王太子妃様、知識が半端ないです!私は顔の発疹は呪いと信じており、全く疑問にも思いませんでした!一理あります、違う視点から考える、医局長調べる価値はありますね。呪いがもしかしたら治療できる物だとしたら。」


めっちゃ興奮してる。

あはは、次期王太子妃様、さすがとか要らないんですが………。


「ルキアーナ様、そのポスターさんとはどなたでしょう?医局長、その方に協力を仰いで来ていただくのはどうでしょう?」

ルンバール医師の興奮が止まらない。


医局長も頷くと、

「そうだな、一度診察してみようかね。」

「ルキアーナ様、ポスターさんとは!」


ルンバール先生、ブンブン体を振らないでほしい。


「と、図書館司書をしていらっしゃる、オリバー・ポスターさんという方です。」

「迎えに行ってきます!」

聞くと同時にルンバール医師は出て行ってしまった。


「騒々しくて申し訳ありません。しかし、これはすごい発見になるかもしれませんよ。ルキアーナ様」

ドアの方を見ながら、医局長が笑う。


ちょっとニキビ治してあげれたらと思っただけだったのに、大事になりそうな予感に嫌な汗が流れるのだった。









閲覧していただき、ありがとうございました。


医療になると検査技師は熱くなるよね。


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