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25 顔のでき物は呪い?

閲覧ありがとうございます。

魔法学のない王宮内教養は概ね順調に受講できていた。


問題は魔法学。

もっさり王子とエーデル侯爵のタッグが濃い。


次回はもう魔法ロープ無しかと油断してたら、魔力を流してくれる人の都合が付かなかったとかで座学となり、「殿下が安心して受講できるよう配慮」をした結果、やっぱり身動きが取れない魔法をかけられてしまった。

しかも、口にも迂闊に喋れないよう札を貼られた。


酷い……。

現代なら体罰もんよ。


昨日を思い出しながら、本日の受講が終わり王宮内を歩く。


まあ、今日は普通で良かった。


やれやれ思って歩いていると、前方から女性の甲高い声が聞こえてきた。


「あなた、私に呪いがうつってしまったら、どう責任を取りますの?」

「いいえ、これは、」

「ああ、こっちへ寄らないでくださいまし!お父様にお願いして、あなたを辞めさせてもらいますわ!」

「そ、それは!」


渡り廊下で真っ赤なドレスの女性が口元に扇を当てて、文官らしき男性を威嚇しているようだった。


隣のミント色のドレスを着た女性も援護射撃をしている。

「そうよ、それがよろしいですわ。ベラドンナ様に何かあったらどうするの?あなた如きが近寄っていい方ではありませんのよ!」


おお〜めっちゃ悪役のお嬢様っぽい。

初めて見た。


けど、呪いって何よ?

文官の人縮こまってるじゃない。


「ね、ルーラ、呪いって何だと思う?」

後ろのルーラに振り返る。


ルーラはジッと文官を見て、合点がいったという表情をした。


私ももう一度男性を見る。

ケンケン女性方が怒って、文句を言いまくっている。


「あれは、確かに男性が呪いを受けているようですね。うつることは無いはずですが、危惧されて怒ってらっしゃるのでしょう。」

「呪いを受けてるの?」


見て分かるのか、すごいね。また魔力関係か?


え、でもルーラも魔力見えなかったよね?


コテンと首を傾げると、

「お嬢こちらへ」

ルーラが手を引いて廊下の端に身を寄せた。


「ここならあちらから見えにくでしょう。お嬢様、男性のお顔をご覧下さい。」

ルーラに言われた通り男性を見る。


薄茶色の髪に碧瞳の普通の男性に見える。完全に怯えた感じ。


「お顔です、赤い呪いが点在しております。」


赤い呪い……。


よく見ると、確かにおでこや頬を中心に赤いブツブツがある。


えっ、あれって、ニキビじゃないの?


はしかとか蕁麻疹でもなさそうに見える。離れてるから確かじゃないけど。


「あの顔のニキビ?」

ルーラに聞く。


「ニキビ? ニ…キビとは、お嬢様なんでしょうか?」

心底わからないという顔をされてしまった。


こっちではニキビって言わないのか。


「顔に出来るでき物ってなんて言うの?忘れてしまって。」

誤魔化しの笑顔で、記憶喪失設定を発動させる。


「そうでしたか、あの赤い発疹は魔物の呪いによる物です。死期を悟った低級の魔物が無作為に放った呪いによって起こります。若者が受けやすいのです。」

ものすごく真剣に教えてくれた。


え、そんな事あるの?ただのニキビではなくて?


魔物って死ぬ時、そんな呪うものなの? 怖いじゃない。


眉間に皺を寄せると、ルーラが焦って顔の前で手を振った。

「でも、大丈夫ですので、人にうつっていく物ではないですし。魔術師の中でも解呪専門を生業にしている者の元に行けば、すぐ治ります。」


「解呪専門……。」


「ですので、あれは完全に言いがかりですね。人から人へうつりませんから。」


ルーラと話していたら、2人の女性は男性に気が済んだのか。

「わかったら、さっさと消えなさい。」

と言って歩いて行ってしまった。


男性は端に端に追いやられて、ため息を吐いていた。


去り方も悪役。


「あ、お嬢様。」

ルーラの呼び止めも聞かず、男性に近付いて行く。


男性に近づくとドレスの裾が見えたようで、またビクッとなって顔を上げた。


私は驚かさないように精一杯の笑顔を貼り付ける。

「突然話しかけて、ごめんなさい。先ほどのやり取りを見てしまって、大丈夫ですか?」


思っていたより小さい子と分かって、男性は明らかにホッとしたようだった。

「ああ、大丈夫です。お目汚しをしてしまいました。」


苦笑いで気まずそうだ。


近くで顔を見上げる。

やっぱり、ぷつぷつとした赤い発疹、ただのニキビのようだ。


自分の目で見て、確信がほしかった。


「お嬢様、早く帰りませんと。」

ルーラが催促してくる。


男性はルーラを見て、目を見開いた。


「そのお着せ、では、こちらは宰相閣下の……、失礼しました!宰相閣下の御息女で………殿下の。」

一瞬で後方に飛び退き、90度に腰を折った。


飛んだ!ルーラのお着せが印籠のような効果!


「大丈夫そうで良かったです。文官の方ですか?」

私が話しかけると、恐縮しながら起き上がり答えてくれた。


「図書館司書をしております、オリバー・ポスターと申します。お気遣いありがとうございます。」

「図書館司書の方なんですね。私はルキアーナ・ノア・ウィンテリアです。先ほどの方。」


とさっきのやり取りを持ち出すと、ポスターさんは明らかに苦笑いになった。


「ああ、この顔が不快だったようで、その所為で職を辞すようにと…………少し横をすれ違っただけなのですが。」


高位貴族のお嬢様なのか、辞めさせるって息巻いてたね。

理不尽よね。


「解呪へは行かないのですか?」

私が聞くと、ポスターさんは頭を掻きながら、

「情け無い話ですが、まだ勤務して日が浅く、解呪は高額で……なかなか行く事もできず。」

とこぼした。


「そうなのですね。もしそれが治れば、辞めさせられる理由は無くなりますよね?」

ニッコリ私が笑うと、ポスターさんは曖昧に頷く。


「聞いてみるのですが、お顔は毎日石鹸で洗って保湿してますか?」


急な私の質問に意味がわからないという顔で首を傾げる。


「私は男ですので、女性のように顔をケアする事はあまりありません。顔は洗いますが。」


そうよね。


「ではだまされたと思って、毎日石鹸で顔を洗って保湿液を塗るようにして下さい。司書を辞めなくてもよくなるかもしれないですよ。」

「呪いですよ? 石鹸で解けるようなものではないですが?」


さっぱり意味がわからないと言う表情。


呪いと思ってるもんね。疑うのは当然。


でも。


より一層ニッコリ笑顔を浮かべ。

「図書館司書をされるくらいの方です。本はたくさん読んでこられていますよね。では昔から言われているからという事象に、真実はいかほどあるでしょう。実際真実は別にあったという事は少なからずあるものです。解呪に行かないのであれば、現状が良くなる可能性に進んで試してみるのも手ですよ。強要は致しません。」


「…………。助言、ありがとうございます。」

思案している表情だ。眉間に僅かに皺がよってる。


今日は高慢な令嬢に、小さいくせに口弁を垂れる令嬢に、なんて日だって思ってる顔だ。

これ以上は言っても仕方ない。


「それではこれで失礼致します。」

会釈をすると、ポスターさんを後にし、私は医務室に直行する事に決めた。


呪い、呪い、ニキビ、ニキビ、頭の中で連呼しながら早足になるのを抑えるのが大変。

もう頭の中はニキビ=呪いは間違いの立証をする事でいっぱいだ。

まずはニキビ治療が存在するのか確認しなくては。


「どちらへ行かれるのですか?」

非難の声を上げるルーラを横目に、ズンズン進んでいく私だった。







閲覧していただき、ありがとうございました。


ベラドンナ=毒草花


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