22 魔法学では身動きできません
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室内は前の世界同様、小さな講義室のようだった。
黒板のようなボードに教壇、長机が並んでいる。
後ろの方に座ろうとすると、エーデル侯爵が前の席を指さした。
「そちらは殿下が座られますので、ルキアーナ様はこちらの前へ。」
言われた通りの席に着く。
「本日予定されている科目全てに殿下方も参加されるのですか?」
「そうですね、殿下方は必要な単位の科目だけ参加されます。本日は第二王子殿下がこの魔法学のみ参加する事になっております。」
ずっと王子達がいるわけではないとわかって、安心する。
それに、もっと言ったら……キラキラ毒クラゲでなくてホッとしてしまった。
でも、もっさり王子か。この間の遭遇時のモジモジした姿を思い出す。
「…………。」
無言になった私に、エーデル侯爵が気まずそうに口を開く。
「殿下は病弱と伝えられておりますが、実は………。」
「存じております。」
エーデル侯爵が少し目を開き、頷いた。
「そうですね。婚約者候補の立場のお方だ。殿下方の事はお知りになられてますよね。」
あ〜まあ、そうですが、この間偶然殿下に会ったしね。
言うべきか思案していると、後ろからふわっと空気が流れた気がした。
少し振り返ると、後ろにもっさり王子が立っていた。
⁈⁈
どこから現れた?
ドア開いた音しなかったよね?
びっくりしていると、
「驚いた。よく殿下が来られた事に気が付きましたね。」
私よりエーデル侯爵の方が驚いている声を出した。
「え、空気がふわっと動いたんです。」
そう素直に答えると、エーデル侯爵が更に絶句してしまった。
え、何。
王子が現れたの気付いたらおかしいの?
後ろをもう一度振り返る。
……………王子がめっちゃ壁に向いて、小さく引っ付いていた。
片眉がピクリと上がり、げんなりする。
本日ももっさり髪に、全身黒で、安定のコミュ症。
背もヒョロ長いはずなのに、その後ろ姿は黒ウサギ、震える小動物そのものだ。
なんなの、王子よ。大丈夫か?そんな感じで王子をやっていけるの?
眉間に皺がよる。
「コホン」
エーデル侯爵のわざとらしい咳払いが聞こえて、前へ向き直る。
「殿下、お話していた通り、本日から宰相閣下の御息女で婚約者候補でもあるルキアーナ様も御一緒に講義を受けてもらいます。距離も設けますので、殿下はいつもの後ろの席にご着席ください。」
あ、それで私が1番前。
マンツーマンかってくらいの距離感におかしいなと思ってたのよ。
酷いコミュ症ね、距離遠い…………。
コトっ
すごく小さく、そっと椅子に座ったのがわかる音だった。
控えめすぎ。
毒クラゲ王子だったら、キラッキラで颯爽と座りそうよね、うん、対照的。
視線遠くしてフッと笑ってしまった。
ガタンッ‼︎ ドカッ!
急に大きく動きぶつかった音がした。
ビクッと振り返ろうとしたら、
「ルキアーナ様、そのままで!」
とエーデル侯爵に制止されてしまった。
そして小声で、
「あまり殿下を刺激しないようにしていただけると助かります。極力殿下の為に身動きを取られないようご協力をお願いしたいのですが。」
早口でお願いしてきた。
刺激って、さっきちょっと笑っただけの事に、反応したって事?
いや、殿下を笑ったわけでは、いや、笑ったのか?
「わかりました。」
姿勢をただして、同意を示す。
目に見えて、エーデル侯爵がホッとした顔をした。
けど、挨拶大事。
「先に殿下にご挨拶はしてもよろしいでしょうか?」
ガタン、ガガガ、ゴ…………。
後ろでどんな動きになってるの⁈
エーデル侯爵が引き攣った笑顔で固まってる。
ああ、うん、わかった。ごめんなさいね。
片手をあげて、エーデル侯爵に会釈する。
「挨拶は不要だそうです。どうかルキアーナ様はそのままで。」
とヒクヒク引き攣り笑顔で答えてくれた。
大変ね、殿下への対応。気を使うわね。
すみませんと心の中で手を合わす。
そしてやれやれと肩をすくめていると、
「では、ルキアーナ様、体の動きを封じさせてもらいます。」
ニッコリ笑顔のエーデル侯爵が不穏な発言をした。
はい?
首を傾げた途端、
「サウフーノ・キゴウノダラカ」
エーデル侯爵が何か言ったと思ったら、私の体が見えないロープでぐるぐる縛られた感じになった。
「⁈⁈⁈」
「すみません、ルキアーナ様。殿下に安心して受講していただく為ご協力ありがとうございます。」
ニッコリ笑って言うエーデル侯爵。
絶対悪いと思ってない顔。
いやいや、めっちゃ縛られてる。
「う、動けない……。」
もがく私を見てウッソリ笑う。
「ルキアーナ様、おしゃべりも無しでお願いしますね。でないと、口の動きも封じないといけなくなりますよ。」
ヒッ‼︎
ブンブン首を振る。
「ご理解いただき、ありがとうございます。」
艶やかな笑顔のエーデル侯爵に殺意を覚える。
これひどくない⁈
犯罪めいてる!
こっちは魔法使えないし、殿下の為とはいえ、拘束まで必要ないでしょ⁈
キッと睨むが、エーデル侯爵は一層ニコニコ笑顔だ。
「では初めての講義を始めましょう。」
全く動けない。
もがいていると、勝手に教科書が浮かび上がり、ページが開いていく。
驚いきすぎて、目が見開くばかりだ。
もがいてももがいても、動けそうにない。
くそ〜。
こちらが落ち着かない中で、後ろから教科書のページを捲る音がしてくる。
私がこんな事になっているのが安心なのか?
普通に授業受ける気になってるんじゃないよ、もっさり王子!
「ちょ…………。」
喋ろうとして、侯爵と目が合った途端に言葉が消える。
めっちゃ目が笑ってない。
言葉を飲み込んだ私を見てニッコリ笑う。
「よろしいですか?」
口塞ぐぞって言う声が聞こえた気がした。
コクコク頷くと、エーデル侯爵がニコッと笑って講義が始まった。
「本日は体内の魔力を感じる事です。」
おかしい、絶対おかしい、なんでこんな縛られて勉強しないといけないのよ〜。
盛大に心の中で叫ぶのだった。
閲覧していただき、ありがとうございます。
まさかの授業、縛られるとは……頑張って、ルキアーナちゃん。
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