19 王宮医務室に見覚えのある人
閲覧ありがとうございます。
嬉しく思います。
「行こうか。」
父は私の手を取り、王宮医のいる医務室に連れていってくれた。
謁見が終わって、肩の荷が降りたように足取りが軽くなる。
医務室は王様と会った場所より階下で、華美さのない奥まった場所にあった。
コンコンコン。
父がノックして、中に入る。
「失礼いたします。陛下より娘の診察を受けておくよう指示されたのですが、聞き仰せておりますかな?」
「宰相閣下、はい、聞いております。」
そう言って出てきたのは、ピンク色の短髪の青年。
ピンク髪!
今まで見てきた人の中で1番アニメカラー。
タレ目のオレンジの瞳が白い着衣と相俟って、優しそうな雰囲気だ。
「こちらの椅子に座ってお待ちください。」
そう言って私と視線を合わせてくれる。
私は椅子に、父は後ろのソファに座ると、
「私はここで医師をしております。マルクス・ルンバールと申します。医局長を呼んで参りますので、少々お待ちください。」
と挨拶をして、部屋の奥の扉に入っていった。
目が丸くなる。
骨髄検査:腰椎穿刺=マルク・ルンバール
なんて医療用語な名前。
あの奥には医局室があるのかしら?
待つ間部屋を見渡す。
あっちの奥はベッドが見えるから、点滴室かな。あの棚は処置物品。薬棚。
あ、あれはサンタール医師も持ってた金属探知機風検査機器。
心電計や顕微鏡、胃カメラっぽい物は無さそうだな〜。
ついつい検査技師目線で眺めていると、奥から誰か歩いてきた。
その姿にさっきより更に目が丸くなる。
白髪に黒縁メガネに白口髭………その特徴は、◯ーネル◯ンダース!
◯ンタッキー!
思わず立ち上がってしまった。
「こりゃ突然入ってきて驚かせてしまいましたかな。」
目を丸くした私を見て、申し訳ない顔で微笑んだ。
「い、いえ、大丈夫です。」
否定しながらも動揺が激しい、どう見てもケンタのおじさんだ。
似すぎじゃない⁈ 動いてるし。
「し、知っている人に似ている気がして。」
私がそう言うと、父がすごい勢いで私の肩を掴んだ。
「思い出したのか?サンネル・カーダス氏を!」
その剣幕に驚く。
え、え? サンネル?
「カーネル………いえ、わ、わかりません。ごめんなさい、お父様。」
思わず縮こまる。
「宰相殿、御令嬢が怖がっておいでです。」
やんわりカーダス医局長が父の手を離す。
「いや、しかし、ルキアーナ、記憶が戻ったのでは?」
さっきと違って、父の声色が優しく戸惑っている。
心配かけて申し訳なく思いながら、驚いただけと言えず黙って首を振る。
「そうか、驚かせて、すまなかった。」
優しい手つきで父が頭を撫でてくれた。
「カーダス医局長、診察をよろしくお願いします。」
父が向き直って、医局長に頭を下げる。
「いやいや、宰相殿、頭をお上げください。ご心配の事と理解しております。サンタール前医局長からも話は伺っておりますから。ルキアーナ様、私はこの王宮医師団の医局長を務めております、サンネル・カーダスと申します。登城の際、体調が芳しくない時は、いつでもお寄りください。これからその際に使用するカルテを作らせてもらいます。少々問診をさせていただきますが、よろしいかな?」
机を挟んで、目の前の椅子に医局長が座った。
横からルンバール医師が、新しいカルテを机に用意する。
「はい、よろしくお願いします。」
馴染み深い顔の医局長の前に座り直し、膝の上の手を握って神妙な顔をするので精一杯だった。
だって、動いてるし、喋ってる………決して笑ってはいけないやつ。
私の葛藤は長かった、ここに来てまさかの◯ーネル◯ンダースとご対面アンド診察。
以前と全然職が違うのですが………。
でもその出立がしっくりきており、白衣が似合ってる。
カーダス医局長の診察は問診から始まって、記憶喪失に相違ないかの確認、頭部外傷の治癒の状況、そして虫眼鏡の様な物を持ち瞳の確認。最後に魔力の確認が終了した。
概ね、サンタール医師と見解は同じ内容で、カルテは作成されていった。
けど、今は医局長の柔らかい手に、私は片手を取られている。
もうカーダス医局長を見ても笑わない、すっかり慣れてしまった。
今は私の手のひらを上にしたり、動かしたり、不思議そうだ。
それもそのはず、私の手をかざして、魔石の鍵の施錠と解錠を繰り返している。
これには父も初めて目の当たりにして、覗き込んで驚いている。
魔力の流れを見るには魔石を使うとわかりやすいらしく。
たくさん魔力を必要とする魔石を使えば、魔力の動きがよく見えるんだって。
魔力の少ない人は魔石に向かってチョロチョロ魔力が移動して、魔力の多い人は魔石にブワって包むように広がって魔力が移動するのが見えるらしい。
で、今、錠前の魔石の鍵が開くかっていう、この前のサンタール医師の報告の検証をしているのだ。
高魔力を必要とする錠前を用意して、父が手をかざすと数秒ののち、カチャっと音がして解錠する。この際父の手から多めの魔力が魔石に吸われているらしい、私には見えないけど。
で、父が手を離して、また数秒すると施錠する。
これを私がすると、錠前に手をかざしても魔力の流し方が分からないので、手をかざすのみになる。
当然解錠しないし、魔力が吸われている動きが見えないらしい。
流し方がわからないんだから、手から何も出ないだろうよ。
でも、手のひらをだんだん魔石に近付けていくと、触れるギリギリあたりで解錠する。
その際も魔力が吸われている形跡はないらしい。
当然、魔石に手が触れた時も解錠する。
その時も、
「魔力を吸われている感覚はないかな?」
医局長に聞かれるが、全くよくわからないので首を横に振る。
「まぁ、吸われている様には見えませんよね。この辺りに魔力が見えませんもんね。」
ルンバール医師も覗き込んで、手の周りを指さしている。
「大概、魔石に手をかざしている時、魔力を吸われている感覚がしますよね。だから魔力を流すって感じで。」
私以外皆うんうんと頷いている。
「吸われてないのですから、見えないし、感じないのは、そうなんでしょうけど。何故に吸われないのでしょう? もっと言えば吸われないのに何故解錠するのでしょう??」
皆が首を捻る。
今度は父がまた魔石に触れる。
「あー、吸われてますね。ほら、解錠しました。」
ルンバール医師の言葉に父が頷く。
魔力が魔石に吸われてるってどんな風に見えるもんなの?? 口頭で説明受けても見えないから実際よくわからない。
どんな風に感じるの?
眉間に皺を寄せていると、皆が私を見る。
え………。
「これはサンタール前医局長の言う通り、調べて解明する必要がありますな。錠前作成した魔道具師にも話を聞いてみましょう。」
椅子に座り直して、カルテに何か書きながら、医局長が言う。
いやだから魔力の移動が見えないのは私の魔力が少ないだけで、開くのはどういう原理かわからないけど、ルキアーナちゃんの薄い膜のせいだと思う。
確信しているが、口が裂けても言えない…………。
「よろしくお願いします。魔力の流し方については、エーデル侯爵に指導をお願いしようと思っています。何故こうなったのか、精神ショックが原因とするなら、他にもルキアーナの身体に不具合があるのではないかと心配になります。」
「ご心配はごもっともと思いますが、今のところは魔力に関する不可解な現象と記憶喪失のみで、他に異常は見当たりません。ご安心ください、王宮内教養を受ける事に関しては問題ないでしょう。」
「そうですか、ひとまずは様子見という事ですかね。これからお世話になりますが、よろしくお願いします。」
「未来の王太子妃様です。いずれ主治医となりましたでしょうから、構いません。ルキアーナ様の健康に尽力できて嬉しく思いますよ。」
ガッチリ父と医局長が握手して、ルンバール医師がうんうん頷いているけど、私は王太子妃を回避したいんですけれども?
心配はありがたいけど、外堀が埋まっていくのは困ります。
♢♢
コンコン
ノックがして、男性の声がした。
「宰相閣下はおられますか?急ぎの案件がたくさんあるのですが。」
あ、秘書の人の声。
いつも父を連れていく人が入ってきた。
父が逃げ腰に私の後ろに回る。
隠れれて無いよね。
だから当然、秘書の人は一直線に歩いてきて、父の腕を取り素早く立たせる。
「閣下、隠れてませんよ。もうどのくらい時間が過ぎているか分かっていらっしゃるでしょう。」
そして腕を捕まえたまま歩き出した。
「では皆さん、閣下を返していただきます。ルキアーナ様も失礼致します。」
「ああ、ルキアーナ〜、待て、待て、まっ、教育日程は聞いとくよ。先に馬車で帰っておきなさ〜い〜。」
父が連れて行かれてしまった。
残された3人は思わず笑い合い、落ち着いた頃、お礼を言って私は大人しく城を後にした。
は〜今日は肩凝ったけど、なかなかの出会いだったな〜王様に◯ンタッキー。
思わず笑ってしまうのだった。
閲覧していただき、ありがとうございました。
まさかの人物、医師だった(笑)
面白ければ、ブックマーク、評価をお願いします。




