16 瞳にコンタクト入れましょう
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父と第二王子の事で話が一息ついた時、
コンコン
ノック音が聞こえた。
「はい、どうぞ」
父が答えると、ドアが開いて、久しぶりにサンタール医師が顔を覗かせた。
「突然に申し訳ございません。王宮から戻りましたので、ご挨拶を。」
私とも目が合う。
「おかえりなさいませ、先生。」
「これはこれは、ルキアーナ様もいらしたのですな。ただいま戻りました。」
久しぶりのサンタクロース顔、落ち着くわ〜。
と、思っていたらサンタール医師の後ろから、もう1人入ってきた。
「エーデル侯爵様?」
「失礼致します、宰相閣下、ルキアーナ様。」
と胸に右手を置いて父に魅惑的な笑みで挨拶をした。
相変わらず、束ねた髪を肩に垂らし、涼やか眼鏡イケメンだ。
「これはこれは、エーデル侯爵殿、今日はいかがなされましたかな?」
「先程サンタール医師と王宮で会いましてね、ルキアーナ様は瞳にも障害が出ていると伺いました。何か手助けが出来ればと思いまして。」
と私に向かって目線を合わせる。
私を見るなり、途端にうっとり顔になり、
「ああ、なんて素晴らしい! やはり素晴らしい魔力を纏ってらっしゃる。まるで月の精霊のようです。」
と跪き、私に左手を差し出してきた。
ひいいいい、イケメン近い!
もう一度魔力に触れさせろ!という副音声が聞こえた気がした。
ロリコンなのか、魔力好きなのか?
やっぱり近づいたらいけない香りがする。
思わず父の方に移動する。
「魔力の純度が高いゆえに、流れる銀髪は発光の如く輝いている。」
眼鏡の奥でこっちを見る目が、妖しい色で光る。
「ゔうん、エーデル侯爵殿、ルキアーナは殿下方の婚約者候補です。その旨をお忘れなく。」
「本当にそうでなければ、是非私が立候補していた所です。」
えー、ルキアーナちゃんモテモテ!
でも、団長さんってどう見ても、父とあまり年齢変わらないよね⁈
ルキアーナちゃんは小6よ、ダメでしょう。
犯罪よ!
ジーッと私が睨んでると、
「エーデル侯爵殿、御冗談が過ぎますが。」
と父の低い声が響いた。
そんな父を見て、
「これは失礼致しました。でも私の持てる力が少しでも、ルキアーナ様の安寧に繋がればと思ったのは本当ですよ。」
さっきと打って変わり、ニコッと人の良さそうな笑顔を作り、エーデル侯爵は立ち上がった。
それを言われると、なんとも言い難しという様な表情で父が片眉を下げる。
そんな2人にサンタール医師が割り込んでくる。
「エーデル団長殿、暴走してもらっては困りますな。連れてきた私が怒られます。」
「申し訳ございません。」
嘘くさい笑顔のままエーデル侯爵が謝る。
絶対悪いと思ってない………。
「宰相閣下、王宮医師団とカンファレンスを繰り返した結果、ルキアーナ様の瞳はやはり今は何もせず様子を見たほうが良いという見解になりました。魔力の流れの件は、王宮図書でも今まで例がなくこれといった収穫がございませんでした。今後は王宮地下図書にも渡り、更に過去の文献をあたるべきかと思います。」
どこか歯切れの悪いサンタール医師が言う。
「そうか、では引き続き空いた時間に調べてほしい。」
「畏まりました。それで、今日エーデル団長殿に来ていただいたのは、瞳に魔力を流す目的ではなく、団長殿にルキアーナ様の鑑定をしてもらおうと思いまして。」
鑑定?
「ほう、鑑定とは、どういう事かな。」
父も私も首を傾げる。
「はい、まず先日、団長殿にルキアーナ様の魔力を循環していただいた時、団長殿は確か2種類の魔力があるように感じたとおっしゃられたので、今度は鑑定で今のルキアーナ様の属性を調べてもらおうと思います。」
え………。
「もしかしたら後発属性が生まれたのかもしれませんし。可能性は低いですが、本当に2種類の魔力が存在しているのかもしれませんし、いずれにしても何か手がかりになる事があるかと考えまして。」
まずいまずいまずい………
これはやばい気がする。
私バレるのでは?
なんとなく魔力が見えない原因も私のせいな気がしている。
どうしよう……どうしよう…
焦りが大暴走して、汗が吹き出そうだ。
そんな私をよそに、安心してくださいと言わんばかりにエーデル侯爵が明るく言う。
「そうです、何かわかる事があるかもしれません。この間のように不快になる事はありませんよ。」
いやいや、分かったら困るんですけど⁈ ルキアーナちゃんは無属性なんだから。
なんか私の属性を拾ってしまったら、どうするのよ〜。
「ふむ、それも一理あるな。どうだ、ルキアーナ鑑定を受けてみるか?」
考え込んでいた父が私の顔を覗き込む。
なんか3人に見つめられて、断りにくい。
「……………お、お願いします。」
渋々私が折れると、ぱあああっとエーデル侯爵の表情が明るくなる。
「では、近くに寄ります。」
そう言って跪いたエーデル侯爵の顔が、私のすぐ目の前に来た。
ひいいいい!
さっきよりもっと近い‼︎
体を反らせると、エーデル侯爵に腕を掴まれた。
「私は瞳を見て鑑定いたしますので、離れずじっとしていてください。一瞬眩しいかもしれませんが、目を閉じないように我慢してください。」
やばいやばい、どうしよう
完全に逃げ場が無く混乱する。
と、瞳にコンタクトを入れた時の様な感覚があった。
何か入った?
そう思った瞬間、エーデル侯爵の青瞳と視線が合い、彼の左目に黄色い魔法陣のような物が浮かんできた。
「イテンカ・ノイセクゾ。」
一瞬眩しく光り、思わず目を閉じてしまいそうになる。
眩しい、目を瞑るなって無理でしょ⁈
細目になりながら、瞳が閉じるのを我慢する。
しばらくすると光が弱まってきて、しっかり目を開いていく。
エーデル侯爵の瞳の魔法陣はゆっくり回転していた。
不思議で綺麗。
瞳の中に羅針盤か、いやゼンマイ時計のゼンマイが回っている様だった。
初めて見る不思議な瞳はいつまでも見つめていられた。
しばらくして魔法陣が消えると、エーデル侯爵は私を掴んでいた手をゆっくり離して立ち上がった。
「やはり属性は何も拾えませんでした。以前同様無属性のようです。」
「確かに瞳に濁りも混色も見えませんな。」
サンタール医師も私の瞳を覗き込む。
「そうか。では瞳に問題があるのではなく、精神的な影響が原因か?」
「おそらく」
3人は精神的な障害で、私が魔力を見る事が出来なくなっていると結論付けるようだ。
精神的要因で、視神経に影響出るか? なんでも精神障害でまかり通っていく。
けど私はなんとなく思っている事がある。
魔力で魔石扉が開かないのも、魔力が見えないのも、きっと私自身の魔力が少ない所為ではないかと。
ルキアーナちゃんに混じってるから多そうに見えるけど、実質少ないんだと思う。私の能力が低い、そう考えると辻褄が合うのだ。
そしてラルフが言っていたように、少ないけど私自身にも魔力があり、属性があるという事だ。
だから、そんな私を絶対ルキアーナちゃんが守ってくれたよね!
まさにエーデル侯爵の鑑定魔法を遮断しているような感覚だった。
ありがとう!ルキアーナちゃんバレないようにしてくれて!
と心で叫ぶと胸の辺りがじんわり温かくなった。
私の声もしっかり聞こえてる。
そう思うと嬉しくなる。
「しかし、いつ見てもルキアーナ様の瞳は、透き通る様なアメジスト色ですな。」
まじまじサンタール医師が言い、同意するようにエーデル侯爵も頷く。
「完全に色が融合して発色してますから、透明度が高く、美しい。」
2人に瞳を褒められて、恥ずかしくなる。
確かに、ルキアーナちゃんの瞳はめっちゃ綺麗だもんね。
初めて見た時、アメジストの宝石かと思ったもん。
「両親が相反する属性故に、子供が多属性を有して、瞳の色が混ざり合って見える事はたまにありますが、完全に色が融合して発色するのは稀ですからな。それ故の透明度なんでしょうな。」
「相反する属性が融合してしまった事で、互いの属性を相殺してしまい、属性が発現しないのだと考えます。」
なるほど〜と思わず2人の会話に聞き入る。
兄は父の瞳と同じルビー色。
母の瞳はアイスブルー色。
ルキアーナちゃんも本来なら、父か母どちらかの瞳に似るはずが、合体しちゃったのか〜突然変異ね。遺伝子の不思議よね。
しかし、ルキアーナちゃんに瞳を守ってもらったけど、守るって事はルキアーナちゃんは私に何か属性がある事が分かっているんだろうな〜。
何の属性なんだろ、いつか小さくてもいいから魔法が使える時がくるだろうか、楽しみだなぁ。
閲覧していただき、ありがとうございました。
守ってくれるルキアーナちゃんかわいい。
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