12 聖女と貴族女性の在り方
閲覧ありがとうございます。
翌朝、父は国王に掛け合ってみると言って張り切って出かけて行った。
わーい。
王命撤廃が上手くいけば、万々歳で家族がみんな一気に幸せに向かっていけることになる。
今日の朝食はみんなニコニコ明るく食べれて、美味しかったな〜。
どうか上手くいきますように。
さて、今日は何しよう。
今日も休養日。
私には休養、必要ないんだけどなぁ。
昨日は毒クラゲ王子の登場に、最悪だった。
地理も勉強しなきゃだけど、やっぱり魔法よね。魔法が知りたいよね。
図書室に調べに行こう!
♢♢
ルーラを連れて図書室へ、
「魔法の本は、1階だったかしら?」
私が聞くと、ルーラは頷いて案内してくれた。
こんなに広く大きい図書室に、何の本が何処にあるか把握してるなんて、凄すぎる。
メイドというのは、なかなか凄い仕事だな。
まじまじとルーラの背中を見つめながら付いていく。
降り始めてすぐ、私は案内板の医療・治癒という文字に惹かれた。
これでも検査技師だった人生があったのだ。
この世界の医療が気にならない訳がない、むしろ気になる!
「ルーラ、私ここの医療・治癒の書棚が見たいわ。」
ランランした瞳で言うと、ルーラは振り返り、その書棚を見て少し思案したように言った。
「魔法はよろしいのですか?ここは専門知識ですし、お嬢様には少し難しいかもしれません。」
そりゃ、そうだ。
12歳の子が読めるような本じゃない。
けど見てみたい私は、
「気になるの。どんな本なのか見てみたいだけ。」
そう言って胸の前で手を合わせ、お願いポーズを取る。
ルーラは頷き、
「色んなことに興味があり勤勉さは変わらないですね。好きなだけ、見ていただいて大丈夫です。」
と言って、テーブルの用意をしに行ってくれた。
わーい、どんな本があるかなぁ。
解剖学、生理学、病態学、魔法薬学、治癒魔法、医薬史以上。
「えー、これだけ??」
あまりに少ない蔵書に驚いた。
これなら割にすぐ読み終わりそう。
片っ端から本を取って読んでいく、昼は軽食をつまみながら、お茶も何杯おかわりしたか覚えてない。
昔から集中して読み出したら止まらない。
不思議とこちらの世界の文字を読むときは、文字の下に日本語が浮き上がって見えるので、内容が理解しやすい。
文字を書くには、文字を覚えないといけないから今は頑張り中。
だけど私には切り札があって、文字がわからない時は日本語でメモると、その下にこちらの文字が浮かんで見えるから、それを写してしまえば書けてしまう。
どういう原理なのか、めっちゃ便利。これも私とルキアーナちゃんが同時に存在している事によるものなのか、よくわからない。
そんな不思議能力で読み進めるが、こっちの医療は私がいた世界より遅れているようだ。
ざっくり説明すると、ちょっとした発熱、下痢、嘔吐、腰痛、捻挫、擦り傷は診療所で医師や薬師が治療する。
これらの治療は漢方の様に、薬草を組み合わせて飲んだり貼ったりして使用するので、安価でみんなが利用しやすい。
それでも悪化する様なら、神殿で治癒魔法をかけてもらう。
これはかなり高額になる上、治癒魔法は大量の魔力を消費する為、日に何人も治療できないらしい。
またそういった所に行かなくても、魔法と薬草を混合してポーションのような飲み薬も買えるらしい。飲めば、傷が治ったり病態が回復したり。これは効果の度合いによって値段がピンキリのようだ。
そして神殿で治らなかった病や生死に関わる怪我や病気の治癒は、聖女と呼ばれる人による治療一択。
心臓悪くても、手が千切れても、流行り病でも、癌でもとにかくなんでも治癒は聖女と書かれていた。
聖女の出番多い………なんて責任重大な。こちらの医者は切った貼ったをあまりしないんだね。
しかし、この聖女と言われる人に治療してもらったら、どんな死に目に遭っても治癒できるらしい。
魔法ってすごい。医者いらず。
聖女と呼ばれる人は守りや治癒に特化した属性を持ち、強大な魔力を有するんだそうだ。
凄いと感心するけど、聖女も万能な能力と引き換えに、稀有な存在の為に滅多に生まれてこない。
そういえばラルフが、今は治癒が使えて魔力多い人はいないとかなんとか言ってたような。
あの時は頭も混乱してたし、記憶が曖昧だ。
医薬史を見ると、この国にも歴史の中で聖女が何人かいたようで、ちゃんと名前と姿絵と存命期間等が記録されて載っていた。
聖女歴で1番近い人で、約200年前か。
また聖女と任命されないが、治癒能力の高い人は高位治癒師とされ、その方々も明記してあった。
今は先代の王妃様が1番聖女に近い存在みたいね、高位治癒師って載ってる。
ルキアーナちゃんの祖母って事か。
母の属性は水と治癒。水の進化系の氷が得意で、治癒魔法は少ししか使えないって言ってた。
母の姉たちも治癒魔法は多かれ少なかれ使えるみたいだ。
治癒師や薬師に名前が載ってる。
治癒師はその名の通り、人を直接魔法で治癒できる。
そして直接治癒する事は出来ないけど、治癒属性があり魔法薬を作れる人が薬師と言われていて、男性が割に多そうだ。
もしかしたら高位治癒師の娘だし、従姉妹で治癒の血をひいてるから、国王は母を側妃に欲しかったのかもね。生まれた男の子は賢王に、女の子なら聖女って。
本を読む限り、聖女って万能みたいだし、やっぱり遺伝が関係するのか、治癒師の血をひく家系に生まれた女の子は治癒魔法が使える確率が高いみたい。同じ家名をよく見る。
うーん、これは本当に王達は王族から聖女を誕生させようとしているのかもしれない。
1人聖女がいれば、どんな病も怪我も治せる、何があっても国や要人が、いや国民全てを守れるのだ。
王族の歴史からいくと、確か聖女は必ず王妃になっていたはず。遺伝的にいくと王子達は魔力が高いだけでなく治癒の要素も持っているのかもしれない。そこに治癒の使える伴侶、もしくは膨大な魔力持ちを迎えれば、子供は聖女となる率が上がるだろう。
現王妃も側妃も、治癒魔法が使えたから、王に嫁いだのではないだろうか。
しかし生まれてきた王女は聖女じゃない、そして王子が2人。
なるほど、だからルキアーナちゃんを王太子妃に望んだのか、第一王子と年齢が離れすぎじゃないかと思ってたけど、それをおしてでもルキアーナちゃんが子供を産んだら、男の子なら膨大な魔力持ちとなり、次の王の資質を持つ、女の子なら王子側の治癒属性を引き継いで聖女になる可能性がある。
生まれにくいと分かっている聖女の、誕生確率を上げるためか。
なんで生まれにくいのだろうか、遺伝子的に変異があるのか? 聖女の遺伝子配列ってどうなってるんだろう? XX因子にのみ関与してる?
何調べたら、めっちゃ楽しそう‼︎
うう、でもここに機器も道具もない………残念だ。
しかし、ルキアーナちゃんが赤ちゃんを産むのはまだまだ先と思うが? 聖女誕生をそんなに望んでるのか? 自然発生的に見つからないのかね。
聖女のページを更にめくる。
聖女の特徴。
聖女の証は黄金色の髪と金瞳。めっちゃ金キラ、生まれたらすぐ分かりそうね。
歴代の聖女の共通した特徴なんだね。
ルーラに聞いたら、やはり聖女の事は知っていて、歴代聖女の絵姿があるらしいけど、全員、黄金色の髪に金瞳らしい。聖女以外持ち合わせない色味なんだって。
しかし、生まれた瞬間から聖女と決まり、生きていくのは大変だと思う。
聖女、聖女と本人が望まなくても、期待されて、伴侶は王になる人。決まった人生を歩まないといけない、したい事も将来別の仕事に就くこともできないなんて、考えただけでウンザリする。
ルーラ曰く、この世界は聖女への期待度が高いので、貴族の女達は魔力が高いか、治癒魔法が使える事が良しとされ、結婚も優位に進む。そして治癒属性持ちや高魔力持ちの子を産む事ができたら更に素晴らしい女性として讃えられる。
反対に治癒属性を持たずに、多属性でもなく、低魔力の貴族女性はかなり肩身の狭い思いをして生活し、良縁にも恵まれる事が無いのだとか。更に貴族女性が職を持つ事は滅多にないみたい。
だから貴族出のルーラは魔力が少なかったことから、肩身の狭い思いをかなりしてきたそうだ。早くから良縁に恵まれないと分かっていたから、伝手を使って公爵家の使用人になったのだと言う。
ここの使用人になれて本当に良かったと嬉しそうに笑っている。
価値観の違いなんだろうけど、魔法ありきの世界だからかもしれないけど、かなり偏った概念に人生が縛られていると感じた。
女の子達の意思はガン無視だ。
いいドレスに、美味しい晩餐、お茶やお菓子はあっても、自由が無い。
この世界には当たり前なんだろうけど、この男尊女卑な感といい、女はしたい事や将来の夢が色々あっても否とされ、もしかしたらそれすら気付かないで生かされているのかもしれない感じが嫌だ。
検査技師として前の世界で、男女関係無く働いていた私には、受け入れがたい。いい結婚、優秀な子の出産、それだけが女の価値では無い。
女であっても男と同等にできる仕事はたくさんある。
息苦しい社会で生きていたんだねと、ルキアーナちゃんの胸に手を当てる。
私の思いに呼応した様に、胸が温かくなる。
私はルキアーナちゃんには楽しく元気に生きてほしいと思う。
この貴族社会を変えることはなかなか難しいかもしれないけど、ルキアーナちゃんは自由に色々出来ることを、したい事をしたらいいという事を、ルキアーナちゃんに知ってほしいと思う。
本に再度目を向ける。
光る黄金色の髪に、輝く金瞳、手から黄金色の光を放つ聖女の姿絵が描かれている。
聖女とは万能の神みたいで凄いけど、もう少し医療が進んだ方がいいと思う。
治療法の欄に聖女の2文字しかないの初めて見たよ。
病気も怪我も様々なのに、サンタール医者みたいな医師もいるんだし、もっと医師も活躍出来るのでは?
一体、治癒魔法ってどんな感じに効いて治るんだろうか?
不思議だ〜。
結局この日は、医療の棚を読み漁っただけで終わってしまった。
魔法はまた別の日に勉強しよう。
閲覧していただき、ありがとうございました。
聖女万能すぎる。
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