10 婚約者がいました⁈
閲覧ありがとうございます
あれからサンタール医師は王宮に向かったようだ。
ビックリだけど、サンタール医師は王宮医師団の医局長をしていた経歴のある人物で、それはそれはすごい人だったとルーラから教えてもらった。
サンタクロース似のせいで、ほんわかして威厳を感じてなかったわ〜。
どうやら私の症状の助言をもらいに現医局長の元に向かったんだって。
わざわざありがとうございます。
そして私は、サンタール医師の判断のもと、精神ショックが大きいという事になり、休養が必要という診断書が出来上がった。
全てのマナー講座、教養座学、ダンスレッスンが一時中止だ。
朝食を食べてから、自室のソファーで足をぶらぶら。
そうなると、めっちゃ暇だ〜。
刺繍?………肩凝るし、花が呪いの渦巻きの模様になるだけだ。
編み物?……やっぱり肩凝るし、目が飛んだり、均一に編めないのが目に浮かぶ。
チェス?……1人でさしてると、縁側のおじいちゃんみたいだし。意味もよくわからない。
そうなると、図書室に行くかな〜。
幸い知識を増やすのは、好きだ。
よし、図書室へ行こう!
「ルーラ、図書室へ行こう。」
そう言って、自室を出ると、なんだか下が騒がしい?
父も兄もお城へ向かったはず、サンタール医師も王宮から戻ってない。
お客さんか?
下を気にするように、階段前でルーラが前に出る。
「お嬢様、少し下が騒がしい様ですので、確認してまいります。私が戻るまで、こちらで少しお待ち下さい。決して動かれませんよう。」
ルーラが真剣なので、頷いて待つ事にした。
ルーラが去った後も下は一層騒がしく感じる。
この屋敷が騒がしかったことは、今まで一度も無い。
むしろ静かすぎて物音が立てにくいくらいだ。
誰かが来ていることは分かる。
今は無理ですとか。華がどうとか。用意とか。部分的に色んな人の声が聞こえる。
こうなってくると、何を揉めてるのか見たいよね〜野次馬根性ってやつよ。
と、私が一歩進もうとした時、ルーラが小走りに慌てた様子で戻ってきた。
「お嬢様、移動しようとしてましたね!」
一言目に怒られた。
そりゃね、気になったし。
「ごめんなさい。」
素直に謝る。
でもそんな私の肩を掴むと回れ右をして、背中を押して自室へ向かって走り出した。
「えっ、えっと、え?え?」
バタン。ガチャ。
鍵までかけたよ?
ルーラの動きに首を傾げていると、
「お嬢様には悪影響です。部屋が安全です。」
と言ってソファーへ誘導した。
一体どうした?
「下で揉め事でもあったの?」
私が聞くと、
「もう完全に記憶から抹殺したままで、かまいません。」
と怒り気味にお茶の準備をし始めた。
ルーラが嫌いな人が来たらしい。
けど貴族家勤務の使用人の知り合いが、正面玄関から訪ねて来ることは無い。
誰が来てるんだ?
無言でルーラを見つめ続ける。
その間も、ルーラは
「お嬢様の気持ちをなんだと…………物の様に‥‥選ぶ必要ございません!」
とぶつぶつ言ってる。
どうした?
いつも有能で穏やかなルーラが感情のままに怒ってるとか。
「どうぞ、これでお心を落ち着かせて下さい。」
そう言ってお茶を出してくれた。
いや、飲んで落ち着くのはルーラでは? 私は落ち着いてるよ?
と思いつつルーラの気を逆立てまいと、ニッコリ笑ってカップを持とうとした瞬間。
♢♢
バーン!バターン‼︎
盛大に扉が外れ、床に倒れた⁈
ビクーン‼︎
カップに手を伸ばしたまま、壊れて倒れた扉を見つめる………。
爆発⁈
ルーラと共に目が点になっていると、ややあって、1人の人物が散々な入り口から堂々と入ってきた。
「こんな所に篭っていたのかい? なんだ、座っているじゃないか。元気そうで、安心したよ。」
金髪に青い瞳の整った容姿の男性が眩しい笑顔で近づいてくる。
なんか髪も顔も服もやたらキラキラしていて、目がチカチカする。
そしてなんの許可もなく、私の向かいのソファーに当たり前の様に座った。
どちら様ですか?
やたら全身キラキラ様。
眉をひそめる私に、不快感を表すわけでもなく、
「へえ…」
と言ってニヤっと笑う。
なんだコイツ。見た目二十歳そこそこに見えるけど、嫌な視線。
私から目線を逸らすと、ルーラに向かって偉そうに言う。
「これからお茶だったみたいだね。ちょうど良かった、君、私にもお茶を。」
いやいや誰だよ!図々しいな。
イラッとして
「私の部屋のドアを破壊する人とは、お茶を飲みたくありません!」
思わず怒ると、ルーラが青い顔で動揺して、カップを落としかけた。
そんな私にさもおかしそうに男は笑う。
「この私にそんな口を叩くとは、本当に記憶喪失なんだね。」
ええ、ええ、記憶喪失設定だから、初めての人は知らないし!
私の不機嫌な顔を楽しそうに見るから、ますます苛立つ。
「どちら様ですか?」
そっぽ向きながら言う。
男性は長い足を組んで、尊大な態度でソファーにもたれた。
「君のそんな表情も態度も初めてだな、私はこの国の第一王子、キロネックス・コア・クルリスターだ。」
⁈
ええー⁈
急にとんでもなく大物登場で、ビックリ。
目が飛び出るくらい見開いて呆ける私に大笑いしてる。
なんで王子様が私の部屋のドア壊してまで押し入って、ソファーに座ってんの⁈
「え、な、どういう、どうして?」
動揺しすぎて何言ってるか自分でも分からない。
私の動きを面白そうに笑う。
「どうして? 婚約者が怪我をしたんだ。見舞いくらい来るだろう?そんな顔も初めてだなぁ。」
「婚約者⁉︎」
婚約者なんていたのかい?
驚きすぎて、パニックだ。
「そう心配してたんだよ。ここに来たくても、なかなか邪魔が入って会わせてもらえなくてね。」
と心配そうな顔に、ドキッとする。
無駄にキラキラしてるのは、王子様の特性か?
「心配してくれて、ありがとうございます。」
びっくりはしたが見舞いと聞いて私がそう言うと、フンと鼻で笑った。
「心配するでしょう、君は魔法はからっきしだけど、魔力量だけは貴族随一だもの。将来僕の為に魔力の高い子供を産んでもらわないといけないんだから。私の役に立つ前に、怪我とか死ぬとか役立たずになるのは勘弁してもらわないと。それで早く元気が出るように私が、見舞いに来てやったんだよ。喜ぶといい、花もたくさん持って来させたし、お菓子も下にたくさん渡してある。なんせ女は花や菓子が好きだからね。気兼ねなく受け取るといいよ。」
王子のセリフに、一気に沸点に達したが、酷すぎて一周回って冷静になる。
何言ってんだ、コイツ! 見た目キラキラのくせに中身クソだな。
仮にも婚約者に言うセリフか?
お茶を置くルーラも怒り浸透な顔をしてる。
そんな怒りを隠せないルーラを一瞥して、
「この侍女は使えないね、辞めさせるといい。」
と吐き捨てる。
マジで腹立つんですけど?本当にルキアーナちゃんの婚約者なの?
「殿下には申し訳ないですけど、辞めさせません。ルーラは大切なので!」
と言ってる側から聞いてないようで、王子は立ち上がりながら、
「記憶無いんだったら、宰相に私に決めたと言っておいて、そうすれば君も安泰だよ。」
「………は?」
人の話聞けよ、どういう意味だ?
「それだけ言いに来たんだ。またお菓子送るよ。他に欲しい物があったら言って、君の望む物なら何でも届けてあげるよ。」
ウインクされても全く響かない。
困惑な私を気にも止めず、じゃあと手を振って出て行った。
えーなんなの、あの王子……。
呆然と入り口を見つめて、壊れたドアが目に入った。
「壊れたドアどうするのよ⁈」
去った王子にキーッと地団駄を踏むのだった。
閲覧していただき、ありがとうございました。
今度はキラキラ王子登場。
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