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100 携帯電話?

閲覧ありがとうございます

ルキアーナちゃんのお兄さんは約束をしてから、黙ってくれてはいるが超不自然。


やはり兄に秘密は無理のようだ。


一緒に出かける父が兄を見て困惑しているのがわかる。


態度がおかしい……。


すぐにバレる気がしてならない。


しかし、そんな兄は父と私の困惑に気付くことなく、私に向けて親指を立ててグッとウインク付きでポーズしてくる。


ははは、本当に大丈夫か?

疑心暗鬼だ。


目を座らせたまま、兄が城へ向かうのを見送った。


  ♢♢


午後から語学。


先生が来るのを1人で待っている。


もっさり王子は今日は一緒に食べないのか、昼食前に廊下の途中で突然壁に穴あけて消えていった。


何か言って行けよと思ったけど、あの王子じゃそんな配慮は皆無だなと割り切った。


1人だととても静かで眠くなってくる、昼食後からじっと座学はきつい。

講義中に寝ないようにしなくては。


始まるまでまだ時間があるな、今のうちに仮眠しとく?


肘に顔を預け目を瞑る。

すぐに眠気がきて、ウトウト。


フワン……。


あ、後ろにもっさり王子が戻ってきた〜?


半分夢の中。


眠気に身を委ねたままジッとしていると、

「見つけた、兄上!待ってください。」

「お前、私にそれを付けろと言うのか⁈」

怒鳴る毒クラゲの声がした。


おや、何故?


「で…も…、会話できますよ?」


もっさり王子の声もする。


なんで魔法学でもないのに毒クラゲともっさりが……?


眠いから目が開かない。


「無理だ。他にないのか?」

「つけ心地はこの間と同じです。」

「この…間……、あの感触を思い出したではないか!」

「思い出していただけて、良かったです。」


なんの話なんだ。


だんだん気配がこっちに近づいてくる。

眠いのに邪魔しないでほしい。


「そういう事ではない。」

「ちゃんと声が聞こえるはずなんです。」


とうとう私を左右から挟み頭上で会話し始めた。


眠いのに邪魔されイライラする。


「だから、それは別のやつに試させろ!」

「兄上に使ってもらいたいのです!使ってくれるとおっしゃいました!」


バン‼︎

「うるさーい!」

勢いよく立ち上がった。


毒クラゲがのけぞり、もっさり王子が2メートルほど離れた。


なんなんだ一体。


順番に見て睨む。


「お前は突然驚くだろう!令嬢たる者が大声を出すんじゃない!」

赤い顔で毒クラゲが怒る。


いや、お前が悪いだろう。

睡眠を邪魔されて、こちとら機嫌が悪いんだよ!


殺人級にキッと睨むと、毒クラゲが怯んだ。


「あ…いや……。」


「あ…兄上…悪く…ない。」

遠くで小さい声ながら、文句を言ってくる。


そっちも見ると、より小さく背を向けてきた。


無言でイライラしていると、

「そ、そうだ。こいつが発案なんだ、こいつに試してもらえ!」

指をこっちにブンブン振りながら毒クラゲが何か言ってきた。


何の話なの?さっきから。


眉間に皺を寄せて見つめると、毒クラゲは嫌な笑い顔をした。


あ、この顔はいかん。

よくない事だ。


直感で理解して、

「結構です。私はこれから語学教養ですので時間がありません。」

手のひらを出し制止の意を示す。


「大丈夫だ。時間は取らせない。おい、ラト。」

ネクス殿下はもっさり王子に手招きした。


瞬間移動のような動きでもっさり王子が私の前に来る。


「ヒッ!」

今度は私がびっくり。


「あれを渡してやれ。」

ネクス殿下が顔で指示を出す。


「分かりました。手を……出し…て。」


「…………。」

嫌な予感しかしないのだが、手を出さないといけないかね。


上目遣いで見ると、もっさり王子がたじろいだ。


「こっち…見ない……手…出す……。」


半分諦めの境地で右手を差し出すと、もっさり王子が何かを乗せてきた。


毛の感触がして、

「モフ?……わっ!」

バランスが崩れそうになって左手で受け止めた。


ぬちょ……。

「ヒイッ。」

左手が生暖かく柔らかく粘ついた。


目線を落とす。


「うわあああああああ!」

見えた物に恐怖で慄いた。


だって手に乗っているのは、右手はモフが縦半分になって棒が突き刺った状態で、棒の反対に大きめなカタツムリのような生き物が刺さっていて、それを左手で支えていたのだ。


モフの縦割りもびっくりだし、ゆっくり蠢くカタツムリのデカさにも気が遠くなりそうだった。


「……こ……これは……なん……ですか?」

手を震わせて聞いてみる。


「君……が…言って…た……離れ……ても…会話………できる……もの。」

もっさり王子がもじもじする。


携帯?


携帯のつもりか⁈

携帯なのか??


………携帯を想像して言ったつもりだったのに。


「なんでこうなった⁈」


カッと目を見開くと、ネクス殿下が笑った。


「ご所望したんだろう?耳に当ててみろ。」


こいつ、これだから嫌がってたのか!


睨むと、

「カリタツムを耳に当てるとくっつくそうだ。」

と楽しそうに笑った。


「これを? 耳に?」

信じられない思いを込めてもっさり王子を見ると、もっさり髪が縦に動いた。


「ダシンゴムが声を拾って信号を鉱石に送るから、カリタツムの殻の中に鉱石と変換器を入れて声が聞こえるようにした。そのダシンゴムとこのダシンゴムは一体でできてるから共通鉱石が使えるからダシンゴムさえ同じだったら離れてもこれとそれは会話できるはず。」


もう一体取り出して説明してくれるけど、何を言ってるんか全く頭に入ってこない。


モフが真っ二つ……こればかり気になる。

伸びたり曲がったり動いてるから生きてるよね。


「これ、モフは半分になって大丈夫なんですか?」


「大丈夫。これはモフじゃない、別のダシンゴム。半分に見えるのは空間裂いてるだけだから、ダシンゴムは半分に別れている事に気付いてないと思う。」


……言ってる意味がわからない。


半分に裂かれてるのに気付かないの?


「痛みがないということですか?」


首を傾げると、もっさり王子も首を傾げた。


「傷を負ってないから、痛くない。一つのダシンゴムのままだから。」


もう理解不能。

半分になってるのに、一体のままって言う。


「深く考えるな、闇の力は異次元だ。理解なんてできない。」

ネクス殿下がため息をついた。


そうか、理解しようとする方が無理なのか。


「こう……つけ…る。」


もっさり王子がもっさり髪を耳にかけ、初めて耳が見えたと思ったら巨大カタツムリが耳にくっついた。


耳をカタツムリの軟体が蠢いて包んでる⁈

ええ……。


顔が引き攣る。


そして上手に口元にモフもどきがある。


あれに向かって喋るの?


更に顔が引き攣ってヒクヒクする。


「もしかして魔貝の魔力って言ってた貝って。」

「こ…れ……カリタツム。」

もっさり王子が指でカリタツムの殻をコンコン鳴らした。


「盗聴器………ダシンゴムと盗聴器の融合!」


「そう……ダシンゴム……と…カリタツム……の…融合。」


発想はわかった。

わかったけど、これを付けるのは勇気がいる。


めっちゃ耳で動いてるじゃん。


手で位置を直してる。

耳も粘性で光ってる。


バッとネクス殿下を見ると、勢いよく目を逸らされた。


こいつ……こういうの苦手だな⁈


私が作れって確かに言った。

それができたら持ってもいいと。


けど、これって想像できないよ。


「確認…した……い…はやく……付けて。」


もっさり王子の声がしたと思ったら、手の物を取られて耳につけられた。


「へひやああああ……。」

なんともいい難しな感触が耳にして変な声が出た。


そしてもっさり王子は慄く私をほっといて、空間を裂いて消えた。


『……き…こえ…る?』

くっついたカリタツムからもっさり王子の声がした。


『えええ、聞こえる。え〜。』


本当驚いた。


まさかこんなカタツムリとダンゴムシで電話する日が来るとは……。


『よく……聞こ…え…る。』


いや、でも電話じゃないな。


ダシンゴムが同じでないといけないから相手は1人。


あれだな、これはトランシーバーというやつだな。


そう思っていたら、目の前の空間が開いてもっさり王子が帰ってきた。


「どうだった?」

ネクス殿下が聞く。


「成功ですね。よく聞こえます。」


私の方も見る。

「よく……聞こえました。」


「そうか。」

満足そうにネクス殿下が頷く。


もう耳から外していいかね。

微妙な感触がそろそろ嫌だ。


カリタツムの殻を持って引っ張ると意外にすんなり取れた。


耳についた粘液で耳がすーすーする。

「……………。」


腕を組んだネクス殿下が、

「では採用だな。」

そう言うと、

「はい。では、兄上とルキアーナ嬢が持ち歩いてお使いください。」

左右に揺れながらもっさり王子が答えた。


「は? わ、私が持つのか⁈」


予測してなかったのか、顎が外れそうなくらい毒クラゲが口を開いた。

今まで見たことないくらい、いけない顔になってる。


「ブハっ。」

その顔がおかしくて吹いてしまった。


「殿下が使うなら使いますよ〜?」


便乗して揶揄うと、

「ば、な、そ、……も、もう少し検討だ! 相手から連絡があった時は、いつ分かるんだ? 突然喋り始めても困るぞ! それに、その、見た目、そう見た目ももう少し良くなってからだ!」


狼狽え、採用から打って変わって改良を要求してきた。


「え……改良ですか? 相手からの連絡……。 あと見た目……。見た目……?」

もっさり王子も指をモゾモゾさせ始めた。


そして何か閃いたのか、

「分かりました!」

いい返事をしてトランシーバー2体を持って消えた。


残された殿下は、

「は〜、無理だろう。あれを耳にとか……。」

としゃがみ込んで項垂れたのだった。


「見た目…大丈夫ですかね? 第二王子の感性で……。」


私の呟きにものすごく嫌そうな顔をした。


「あはははは。」


うんこ座りで心底嫌そうな顔する殿下がおかしくて笑いころげたのだった。








読んでもらえて嬉しいです


携帯第一号、ダシンゴムとカリタツムの融合(笑)


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