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99 妹思いの兄

読んでもらえて嬉しいです

家に帰って父と母から花贈りの花束をいただいた。


そして陛下からも届いた。


家中華麗な花が飾られ、私の部屋もさらに華やいだ。

たくさんの色とりどりの花に囲まれて癒される。


やっぱり花はこうでなくちゃ。


今日の食虫植物が思い出されて、手で頭上をかき消した。


  ♢♢


夜、兄が城から帰ってきた。


ちょうど出迎えとタイミングが合い顔を合わせた。


「お帰りなさいませ。お兄様。」


腰からサーベルを引き抜きながら兄が私を見て固まった。


そのまま喋りも動きもせず、時が止まっているようだった。

兄がお疲れなのは続いているようだ。


「お兄様?」


目の前で手を振ると、手首を掴まれた。


「ルキアーナ、どうしたんだ。」

「それは私のセリフです。」


掴まれたまま見上げると、兄は私の手首を掴んでいる自分の手を見て狼狽えた。


「おお、なんで掴んでいるんだ⁈」


何を言っているんだ、兄は。


首を傾げると、

「なんでもない。」

と首を振った。


「おかしなお兄様。」


ニコッと笑うと、また私を見たまま固まった。


本当にどうしたんだろう?


「お疲れですか?」


私の声に時が動き出したようで、

「ああ、そうかもしれない…。」

髪をかき上げた。


おお、なんかイケメンな仕草。

相変わらずルキアーナちゃんのお兄ちゃんワイルドイケメン。


そして急に何かに気付いたのか。

「ちょっと待っていてくれ。」

側の応接室に入って行き、すぐ出てきた。


「これをルキアーナに贈ろう。」


そう言って背後から薄紫、紫、ピンクのスイートピーのような花束を出してきた。


とても愛らしく可愛い。


「ふわ〜、素敵です。ルキアーナちゃんの……私の瞳みたいです〜。」


花束を受け取りながら笑うと、いつもみたいに頭をくしゃくしゃっと撫でてくれた。


「そうだろう。ルキアーナにピッタリだと思った。ルキアーナの作った菓子も美味しかったぞ。」

「良かったです。」


やっといつもの兄になったと思ったら、兄は目線を逸らしながら、

「あ〜、それでだ。その〜、なんだ。あ〜、魔法、魔法の勉強はどうだ?」


歯切れの悪い兄。


よくわからないが、

「今魔力を出来るだけ長く出す練習と、物を温める魔法陣を描く練習をしております。魔力を出すのはとても難しいです。」


ありのままを伝える。


「そうか魔力を出すのが難しいか。そうだよな、魔力出す事自体が難しいよな。うん、そうだな。」

納得するように何度も頷いている。


「お兄様は魔力出すのは難しくはないでしょうか?」


私が聞くと、

「そうだな。難しいな、誰でも難しいな。難しい。難しい。」

とよくわからない返答をした。


やっぱり変だ。


首を傾げると、セバスチャンがやってきて兄を連れていってしまった。


なんだかお疲れモードは続いているようだ。

ゆっくり休めるといいな。


そんな事を考えながら、花束を自室に持って行ったのだった。


  ♢♢


最近屋敷の中で、よく兄を見かける。


前まで兄が家にいてもほとんど食事以外出会わなかったのに。


最初はこの間馬車で襲われたから心配なのかなと思っていたけど、それだけじゃない気がしている。


図書室に行っても出会う。

部屋で刺繍していても様子を見にくる。

庭園を歩いていても突然現れる。

お茶していても気付くと近くで見ている。


もう、もっさり王子よりストーカーっぽい。


何をしているんだろう。


そうなってくると、こっそり治癒魔法の練習をしているのにやりにくい。


見つからないように注意して中庭に隠れたはずなのに、見つけてきた。


「ああ、ここにいたのか。」


これはもう意図して私を探してるよね。


「最近どうされたのですか? よく私をつけ歩いているようですが。」

腰に手を当てて立ち上がる。


「あ、いや、違うのだが……気になって、そうだな。すまない。」

狼狽えながら、最後は頭を下げてきた。


そんな兄の姿にため息をついた。


「お疲れなのですか? どうかされたのですか? 私に用事なのですよね?」


兄は片手で口元を押さえて目を彷徨わせる。


そして私を見つめると、

「俺は隠し事が苦手だ。」

何故か欠点を吐露し始めた。


「はい、そうですね。お兄様の良い所です。」

頷く。


「ああ、そうか、ありがとう。ではなくてな……。」


「はい。」

途切れた兄の言葉を待つ。


「あー、無理だ。遠回しにどう言ったらいいかわからないから、そのまま聞くぞ!」

ダンと足を打ちつけて、私の両肩を掴んだ。


ルビー瞳を揺らして、

「ルキアーナ、お前はもしかして治癒魔法が使えるようになったのか?」

真剣な声にヒュッと息を飲んだ。


どうして……。


ハッ!

あの時治した……。


目を見開くと、兄が眉を下げた。


「あの時治してくれたのはルキアーナだったんだろう? ありがとうな、いつから使えるんだ?」


今度は私が目を彷徨わせる番となった。


「ルキアーナを助けた後、騎士服を着替えたんだ。その時ガーゼが外れてしまって……傷がない事に気がついた。」


………これは誤魔化しが効かない。


いや、それはわかってたじゃない、分かっててしたんだ。

傷を受けたままにしておくなんてできなかった。


俯くと覚悟を決めた。


「はい、たくさんは使えませんが、4、5ヶ月前に気付きました。」


「知っている者は?」

首を横に振る。


「そうか。」


怖くて顔が上げれない。


「そうなってくると、ルキアーナの魔力量だ。全力で治癒魔法が使えるようになったら完全に聖女と言われてしまうな。」


困る!


思い切り顔を上げる。


「その顔は嬉しくなさそうだな。」


「……はい。王家に必ず入らないといけなくなります。」

尻すぼみになる。


「いやか。」


「はい、……進む道は…自分で…選びたいです。」


ルキアーナちゃんに選んで欲しい。


「そうか、王家から逃れるのはなかなか難しそうだが、そうか、道は自分で選びたいか。そうだな。だったら治癒魔法が使えるようになれば神殿で働く事もできるんじゃないか?。」


おお!


「神殿で……。」


目を見開いてみたが、今一度考える。


あのでっぷり神官長のいる神殿で将来働くのか?

いない神殿ならいいかも。


自活できる場所があるのは、いい。

将来の選択肢ができるのは嬉しい。


でも待って、自分は治癒魔法を使えてもルキアーナちゃんは使えないよね。

無属性だもんね。


自分がいなくなった時、ルキアーナちゃんが困ってしまう。


………やっぱり神殿で働けない。


それに神殿で働けるほど能力が……ない。


首を横に振る。


「ルキアーナ?」


しばらく様子を見てくれていた兄が首を傾げる。


しっかり兄の目を見て話す。

「神殿で働くのは無理です。私は治癒魔法が使えるうちに入りません。何故治癒魔法が使え始めたのか分かりませんが、やはり私は無属性なのでしょう。魔力が上手く扱えないのです。上手く治癒魔法を操作できません。こんな状態では治癒魔法が使えますと胸を張って言えません。ですので騒ぎになって、今よりさらに期待されても私は耐えれる気がしません。お兄様、どうか内緒にしてもらえませんか?」


ウルウルキュルンで、ちょっと子供のルキアーナちゃんの可愛さを存分に発揮する。


「う……そ、そうだな。まだ判明しただけだしな。しかし隠し通すのも大変だぞ? 頑張れるか? 俺は今までのルキアーナの頑張りを見てきたから、あんな無理をする必要はないと思っている。お前の考えも大切にしたい、心も生かしてやりたいと思っている。お前が隠したいなら、そうしよう。今後治癒魔法が十分に使えるようになって隠し通せなくなるまで、よし、黙っておこう。ルキアーナと俺の秘密だ。」

ニカっと兄らしい笑顔で小指を出してくる。


「良いのですか? お兄様も責を負ってしまいますよ?」

眉を下げてしまう。


ルキアーナちゃんのお兄さんの立場を危うくするつもりはないので、申し訳なかった。


「大丈夫だ。お前の秘密は守ってやる!」

兄は大きく頷く。


力強く兄の小指が私の小指を絡めて。

「約束だ!」


太陽のような笑顔に安心感は広がり、胸が温かくなった。

ルキアーナちゃんも喜んでいる。


そう思うと嬉しくてニコッと笑う。

「約束!」


「よし!」

わしゃわしゃわしゃ。


豪快に頭を撫でられ、すっかり髪がぐちゃぐちゃになった。


そんな私を見て、

「わはは、ぐちゃぐちゃになってしまったな。」

笑う兄に、頬を膨らませて笑いあったのだった。


お兄さんはルキアーナちゃん大好きなんだね。

ルキアーナちゃんもお兄さん大好き。


ルキアーナちゃんのために秘密を共有してくれる、いいお兄さんだ。


私がルキアーナちゃんの体から離れるまで、しっかり私を隠し通そう。

そう心に誓うのだった。












閲覧ありがとうございます


ルキアーナちゃんのお兄さん、隠し事超苦手


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