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漆黒の羽ペン 裏切りの夫に復讐を  作者: ミカン♬
トーマス編
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トーマス編 2-7 エヴリン

                           

 姉が昨日戻ってくるなり父に訴えていた。


『お父様もう一度指輪の〈おまじない〉を使ってよ!夫の態度が急に冷たくなったの』


『〈おまじない〉は1回だけだ。王太子はお前を愛する祝福を受けているんだ。気のせいだよ。次は長兄が家を継いだ時だ。今から楽しみだよ、ははは』



 やばいやばい、指輪はファーレンに渡したままだ。その代わりに高価なドレスと宝石を買って貰ったのよね。

 返して貰わないとお父様にバレたら叱られるわ。




 次の日、学園でファーレンを見つけて指輪の返還を求めた。


「紛失したですって!探してよ、失くしたら怒られちゃうわ」


「リアリスも紛失したってさ、諦めろ。代わりに高価な宝石を上げただろう。〈おまじない〉なんて嘘っぱちだ、俺とリアリスは婚約を解消されただろうが」


 そういう事じゃないのに、あれは〈家宝〉なのよ。どうしよう。


「似たような指輪を買って戻しておけよ。バレないよ」


「そ、そうね放課後に二人で街まで買いに行きましょう」


「あ、俺はデートがあるからダメだ。お前が一人で行って来いよ」


 リアリスと婚約を解消してからファーレンは素っ気なくなった。二人でイチャイチャする場面をあの女に見せつけて嫉妬させる必要が無くなったからだ。


 それだけじゃない、婚約を解消されると数多の令嬢がファーレンを狙って近づいて来る。


「私は貴方の恋人よね?」

「今は恋人の一人・・・かな?」

「何よそれ!」


 リアリスはコートバル侯爵家の令息と婚約しそうな雰囲気だし。なんで勝手に幸せになってるのよ!ファーレンの玩具だったくせに。どいつもこいつも許せないわ!




 放課後一人で宝石店で似たような赤い指輪を探した。でも赤い宝石が付いた指輪はあるけれど、指輪自体が赤い物は見つからなかった。


「どうしよう・・・」

 店を出て歩いていると「どうしましたお嬢さん」と声を掛けられた。

 公爵令嬢に声を掛けるなんて非常識な男だわ。


 でもその男は深紅の髪と瞳を持つ美しい容貌で、魅了されそうだ。


「赤い指輪を探しているの、貴方持ってない?」


「こういうのなら持ってますよ~」

 差し出された指輪は紛失した物にそっくりだった。


「それよ!私にそれを譲りなさい!」


「いいですよ。指を差し出して~、この指輪の名前は〈エナマード〉大切にしてね」


 男は私の指に深紅の指輪を填めた。


「そっちの指輪も寄こしなさい・・・え?・・あれ?あの男はどこ?」


「お嬢様どうされました?」

「あの男は?どっちに行ったのよ!」

「誰ですか?」


 侍女にも護衛達にも見えていなかった。でも指輪は私の指に残ったわ。

 どうして1個しかくれなかったのよ!





「エヴリン!」

 次の日ファーレンが声を掛けてきた。腕にはグラマラスな令嬢をぶら下げている。

「ふん、裏切者!」


「これ見ろよ。お前の指輪が戻ってきたんだ。気持ち悪いな・・・指から外れないんだ」


 それは私が望むもう片方の指輪だった。深紅の赤い指輪から目が離せない・・・

 なぜか急にファーレンが愛おしく思えてきた。そうよ私達は恋人なんだもの。


「きっと私達は赤い運命の指輪で結ばれているの、結婚してよファーレン」

「はぁ?王命でお前は俺の妃にはなれないんだよ。せいぜい愛妾だな」


「いやよ!貴方を誰にも渡さないわ」彼に触れたくて手を伸ばした。


「触るな気持ち悪い!何言ってんだ」

 ファーレンに突き飛ばされて尻もちをついても彼の足に縋りついて離さない、彼は私のもの!


「捨てないで。苦しいほど愛してるの・・・愛してる」

「うぜぇんだよ!」

 どんなに足蹴にされても離れないわ!ファーレンが欲しい。

「クソが!離れろよぉぉお!」

 



 お姉さまの離婚が秒読みですって。日頃の行いが悪過ぎたから、まるで魔法が解けたように王太子にすっかり嫌われたみたい。


 それとお父様の悪事が王太子によって摘発された。


 ファーレンも他国の王女との婚約の話が出ている。

 上手くいくわけが無いわ。彼には良心も無ければ、品性も備わってないんだから。


 罵られても、殴られて体中が痣だらけになっても、それでも私はファーレンを愛している。愛してる。愛してる。愛してるの!

 絶対に渡すものですか。彼を失うくらいならいっそ・・・・


 



 父と兄の争う声が聞こえてくる。


「カストル家を潰したのは父上です!」

「やかましい、全てお前に譲るから当主としてカストル公爵家を守るんだ!」

「父上、貴方とミネルバで責任を取って下さい。もう手遅れです」



「なぜだ?なぜ指輪が無い!アサセル、どういう事なんだ!」


 お兄様は父を裏切って王太子殿下と組んだらしい。それで我が家は爵位を伯爵に降格することで許されたわ。お兄様は嫌い、私をバカにしているんだもの。


 ファーレンと私が二人で天国に旅立ったらこの家はどうなるかしら、お兄様は困るでしょうね。


 次の夜会で愛するファーレンと最後のダンスを踊って、それから・・・


 生まれ変わっても何度も、何度でも結ばれましょうね、ファーレン。





 .:。+゜.:。†゜.:。+゜.:。†゜.:。+゜.:。†゜.:。



 アサセル「〈アサセルの指輪〉と〈エナマードの指輪〉は別物だからね。〈エナマード〉は正真正銘【魅了】の指輪だよ。〈誓い〉を破った公爵家には、いろいろペナルティーを与えないとね」


 ルシアン「お前を野放しにしなくて正解だったな」


【完結】




最後まで読んでいただいて有難うございました。


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