表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦鬼争闘  作者: 封
福島駅襲撃編
9/24

不安

不安を乗り越えた先に希望の頂きが見えるかもしれない。

狼鬼はぐるぐると唸り声を上げながらこちらを睨みつける。龍也は健太のそばに近寄り、上に乗っている荷台を退けようとするが、1人の力では退かすことが出来ない。第3部隊の隊員が一人駆け寄ってきた。

「あなたは…」

「第3の伊藤一等兵です。どかしましょう」

2人がかりで荷台をどかすことが出来た。健太は一見表面的な外傷は見られない。龍也は健太に声をかけた。

「健太、健太!?聞こえるか!?」

「うっ…かはっ!」

健太の口から血が吹き出した。内臓が破裂しているかもしれない。

「急いでグリーンを呼びましょう!」

「下にいるグリーンに連絡する!待ってろ!」

「龍也…俺はまだ戦える…」

「健太!?ダメだ!今は安静にしておかないと…!」

「だけど…みんなのために戦わないと…」

「偉いね…僕だったらそんなことしたくないな…」

龍也と伊藤一等兵が声が聞こえる方、目線を上げた。どかした荷台の上に静かに座っていた。その男はマッシュヘアーをした男で狼鬼と同じ黒いスーツ着ていた。龍也は重い口開けて声を出した。

「お前…どこから来た?」

「僕?僕は…下から来たよ…」

「下?…子供を連れたやつを見なかったのか?」

「子供を…あーいた…いたよ」

「そいつらはどうした…?」

「さぁ〜?…僕以外にももう1人…いたから」

伊藤一等兵がナイフでマッシュヘアーの男に斬り掛かる。マッシュヘアーの男はすんなりと避ける。

「伊藤さんはグリーンに連絡をしてください…あと影野二等兵にも…」

「わかりました…」

龍也はゆっくりとマッシュヘアーの男の前に出る。龍也はその場で持っていたアサルトライフルを置く。龍也は2ヶ月という少ない期間でわかり始めていた。鬼との対決は銃という武器は殺すものではなく牽制するものであると。確かなる死を鬼に与えるには刃物など近接武器が重要であることに気づき始めていた。龍也は腰に収めていたナイフを取り出す。

「へー…ナイフで僕とやり合うのか…いいよ…ちょっと…追いかけっこしようか…」

マッシュヘアーの男は地面を蹴り、走り出した。龍也はマッシュヘアーの男を追いかける。マッシュヘアーの男は速く、店の中へ消えていく。龍也は店の中で周りを見渡す。

(あの速さ…きっと鬼の能力だ…)

龍也の後ろで物音がする。風を切るような音。龍也はすかさずナイフを振り向き際に振りかぶる。しかし、そこにはさっきの男はいなかった。

「残念…ここだよ…」

上を見上げると商品棚の上にマッシュヘアーの男が乗っていた。そのマッシュヘアーの男は飛び蹴りを入れようとする。龍也は腕を目の前に掲げて蹴りを防ぐ。蹴りで少し後ろに仰け反る。

(こいつ…早すぎて目が追いつかない…)

「防ぐんだ…次は…鬼化して…蹴り飛ばしてやる…」

マッシュヘアーの鬼は黄色く黒い斑点をした皮膚となり猫のような見た目になる。足が細くなりまるで豹の足のようになる。

「僕は…豹鬼と…呼ばれている…人間はチーター?…って呼んでる動物に似てるのかな…」

豹鬼は床を蹴り出す。姿は見えない。だが、分かる。空気がきる感覚を。豹鬼を仕留めるには相手の動きが分からなくてはいけない。龍也はその場から走り出し、ある場所に向かう。この店は100円ショップなる場所。生活用品が売られている。そして、園芸用品も。

龍也は園芸用品のコーナーにつき、土が入った袋を破る。破り、その土を自分の周りに円になるように振りまく。そして、商品棚を蹴り倒す。龍也は音を聞く。土が蹴り、舞う音を。


ジャリ。


「そこかァ!!!!」


ナイフを後ろに向かって突き刺す。そこには豹鬼がいた。豹鬼の胸にナイフが突き刺さる。豹鬼の口から血が吹き出す。

「なに……」

「こっちは耳が少しいいんだよ!」

ナイフを深くまで突き刺さす。豹鬼が逃げないようにする。豹鬼は逃げようとする。必死に。

「ぜってぇ!にがすかよぉ!」

「…この…肉の塊ごときがァ…!」

横殴りの攻撃を龍也は即座に避ける。避けたと同時にナイフが抜ける。豹鬼は逃げようとする。龍也は豹鬼の右脚にナイフを突き刺す。突き刺した場所はアキレス腱。豹鬼はその場で倒れ込む。

「…お前ぇ!!!!あああ!」

豹鬼は回復を試みる。龍也はすかさず首を斬る。豹鬼の回復が止まる。

「いてぇ…!この…肉がぁ」

豹鬼は龍也に向かって叫ぶ。龍也は豹鬼が開いた口にハンドガンの銃口を入れる。豹鬼は銃口を咥える。

「でめぇ…」

「悪ぃけど…肉呼ばわりされる義理はないよ…」


パンっ。


銃声と同時に豹鬼の脳が吹き飛ぶ。豹鬼はその場に倒れ込む。龍也は初めて鬼を1人で殺した。

「はぁ…はぁ…やっぱり…嫌な感覚だわ…。早く…健太のところに…」

龍也は重い足で立ち上がり、歩み出す。



「和紀!!俺の後ろにいろ!!あいつは中々に厄介だ!」

「近藤中尉…!」

近藤は部下の命を守りながら戦うことに慣れていなかった。第2部隊は健太と和紀が来るまで2人空席となっていた。それは2人の隊員が殺されてしまったからだ。鬼の暴力団組織の報告があり、その対処を第2部隊が行っていた。作戦は順調だった。いや、順調すぎたのかもしれない。鬼が立て篭もっているであろうビルに入り、鬼を探していた。そのときの部下2人が一室を捜索した。1人の隊員がその部屋にあったロッカーを調べた。そこには自分の体を紙のようにして折り、隠れていた鬼がいた。その鬼は持っていたハンドガンで見つけた隊員を撃ち殺した。もう1人の隊員は気づいたと同時に撃ち殺された。第2の副隊長、神崎軍曹が銃声を聞き、部屋に入る。そして、近藤も。しかし、紙鬼は神崎軍曹の首に向かってハンドガンを発砲した。神崎軍曹はその場に倒れ込んでしまった。近藤はその後の記憶はなかった。ただ、気づいた時には紙鬼にまたがり、血まみれの拳を振りかざしていた。そして、神崎軍曹のまわりにグリーンの隊員が応急処置をしていた。その作戦で2人の隊員が死に、神崎軍曹は一命を取り留めた。だが、神崎軍曹は手を動かすことしか出来なくなってしまった。近藤はその時思った。近藤はもう目の前で部下を失いたくない。だが、また1人失ってしまうかもしれない。そして、恐怖と不安が襲いかかって来る。

「近藤!しっかりしろ!今回はお前だけじゃない!俺たちがいる!!」

海斗少尉が叱責する。近藤は正気に戻る。今は仲間がいる。そして、その時より強くなっている。

「狼鬼!!お前を潰してやる!!」

近藤は狼鬼の懐に入り込み、拳を叩き込む。そして、海斗少尉、木村隊長はすかさず射撃を行う。

「近藤!大丈夫か!」

「ああ…死にかけた…」

近藤は横に倒れ込んでいた。急いで逃げたのだろう。

「やべぇ…死んじまう…上に…行かなきゃ…」

狼鬼はボロボロになっていた。しかし、まだ生きていた。狼鬼は走り出し上の階に向かう。

「待て!!おい!!!」

「おい、あいつ!早いぞ!」

狼鬼はエスカレーターの空間を抜け、上の階に渡っていく。

「急いで向かおうぞ!」

「いや、上には第5の連中がいる」

「第5でも俺たちでやれば!」

近藤に近寄る海斗少尉は近藤の腹に布を当てる。布は赤く染まり出す。

「お前…さっき少し食われただろ?ここには負傷者も多い。ここでグリーンを待とう」

「でも…」

「気にすることはありませんよ。第5ということは…」



狼鬼は回復しながら上の階を歩く。

「くそ…回復しにくい…あいつらめ、弾に回復しにくい何かを混ぜ込んでるのか…」

狼鬼は角を曲がると通路の真ん中に女が立っていた。少し背の高い女が。

「なんだ…?」

「たく…第1、第2、第3は鬼を仕留めきれないのか?私の仕事が増える一方だ…」

狼鬼はその時何かを感じとった。死線をくぐり抜けたつもりでいた。しかし、目の前にいる女は死という言葉を背負っている。死が近づいてくる。

「喜べ、私みたいないい女にいたぶられることを」

少し裏設定というか

狩人の隊員は基本4月と10月の年2回入隊式があるように決まってるのですが10月の入隊式は別のチームや他県からの異動によるものです。

なぜ10月にあるのかは夏にかけて隊員数が激減するからです。その空きが起きてしまった時の補充という形で異動するため、入隊式が行われるのです。

ハリー軍曹は1ヶ月だけ異動したのですがあまりにも任務へのやる気が福島と違うため戻されたという過去があります。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ