凶器
お久しぶりです
日辻の片腕に両刃刀が刺さっていた。日辻はすぐさま抜き、回復に集中する。龍也は両刃刀を拾い上げようとする。だが、呉島と呼ばれた隊員が龍也に斬り掛かる。龍也は仰け反り回避する。だが、黒木が斧を振り上げる。そこを威吹が近くに落ちていた椅子の端切れで止める。
「…そんな端切れじゃ止められないぞ」
威吹は少し体勢を崩す。これはわざとではない。徐々に膝が折れ、体が潰れていく。
「なんだよ…これ!」
「威吹!」
龍也にすぐさま斬り掛かる呉島。龍也はナイフで応戦し、呉島に蹴りを入れる。蹴りははいり、呉島が少しよろめく。龍也はそのまま黒木に向かって走り出す。だが、威吹が少しずつ立ち上がり始めた。黒木は驚いた顔をしている。
「…君、本当に人間か?」
黒木は斧を威吹から離す。離した瞬間、威吹の体は驚いたかのように上に上がる。そして、黒木は威吹の腹に向かって蹴りを強く入れる。威吹は1m以上吹き飛ばされる。
「クソ…!」
威吹はそのまま倒れ込んでしまう。龍也は足を止める。今やるべき事は日辻の護衛。龍也は日辻の方に向き直す。だが、自分の背中に蝉のように張り付いていた呉島に気づかなかった。呉島は持っていた両刃刀で龍也の背中を斬る。背中から血が吹き出しその場に倒れ込む龍也。痛みや恐怖といった感情が一気に溢れ出る。龍也の視界の端では黒木が驚いて呉島に何かを言っている。何を言ってるのかどうでもよかった。龍也は日辻の方に向かって力を振り絞って叫ぶ。
「そのままドアに向かって走れ!!4番隊に合流してくれ!」
日辻は走り出す。黒木と呉島は急いで日辻に向かう。龍也は痛い体を起こそうとする。上半身だけ立たせ、胸ポケットからハンドガンを取り出す。対人用麻酔弾に変えていない。実弾だ。だが、そんなこと気にしてる暇は無い。龍也は引き金を引き、銃弾が呉島の頬をかすめる。呉島が睨みつけながらこちらを向き、近づいてくる。1人だけなら日辻も逃げれる。ドアが空く。これで助かる。そう思った。空いたドアの先にはドローンがいた。日辻はドローンに体を突き飛ばされる。後ろによろめく。黒木は斧を高く振り上げる。日辻は鬼化し、能力を発動させた。だが、黒木の斧は無情にも日辻の体を切り裂いた。日辻から大量の血が流れ出す。龍也は目の前の光景を見て、口から何も考えらない言葉が出てくる。
「ひ、日辻さん…?」
倒れ込んだ日辻の髪の毛を掴み取る黒木。黒木の瞳には光はなく、ただ日辻を見つめる。日辻は龍也の方を向き、口を動かす。聞き取れないか細い声。だが、口の動きで分かる「ありがとう」という言葉。その瞬間、日辻の頭と首がわかれていた。頭だけを持った黒木が呆然と立ち尽くす。龍也は叫ぼうとする。だが、呉島が後ろで両刃刀を振りかざそうとする。
こいつらは自分たちの中にある物差しででしか鬼の善悪を区別してるのかと思った。だが、違う。こいつらは鬼は全て悪だと思ってるんだ。それは日辻さんと会うまでの俺と同じだ。でも、起きている出来事があまりにも非道すぎて笑ってしまうほど怒りが初めてだと思うくらい湧き上がってくる。
龍也は呉島に向かって回し蹴りをする。蹴りは呉島の顎にあたり、倒れ込む。龍也はナイフを再度持ち直し、黒木に向かう。黒木はこちらに気づき、持っていた日辻の頭を地面に落とす。斧を持ち直し、戦闘態勢に入る。龍也のナイフと黒木の斧が擦れ、火花が散る。黒木はこのまま斧とナイフの押し合いになると思った。だが、龍也のナイフは斧を素通りし黒木の顔に向かっていく。黒木は咄嗟に仰け反り避ける。龍也の目には光すら入っていなかった。ただ、黒木という人物に怒りをぶつけていた。ナイフと斧が衝突し、火花が散る。何度も何度も。
「なんで…なんでぇ!!!」
「叫ぶんじゃねぇよ!みっともねぇだろ!」
ハリーは自分の体に穴が空いていることに気づいた。ドローンから撃たれたのであろう銃弾のせいだろう。口から大量の血が流れ出ている。
『相変わらず戦い方が荒っぽいし、単著すぎる…大人しく倒れてたらどう?』
ハリーはニッコリと笑う。ドローンに向かってただただ笑顔を見せる。
「あんたの事だから忘れてないと思ったけど…私が本気だすのはここからだよ?」
ハリーはポケットから注射器を取り出す。そのまま傷に向かって注射する。空いていた穴がみるみるとふさがっていく。
『…!テメェ回復促進剤を打ったな!?』
ハリーの特異体質として、DNAの一部に鬼のDNAが刻まれている。本来、鬼のDNAが少しでも刻まれていると多くが鬼に変化する。また、ほかの一部は死亡してしまう。しかし、ハリーは違う。鬼のDNAが刻まれていても鬼にならず死ぬこともない。ハリーは自分の体を対象とし、色んな実験を施した。その1つが傷に対して強制させる治癒である。回復促進剤を使うことが少しの傷なら即座に回復することが出来る。
(これで2回目…さっきの吹き飛ばされた時に打った…あと2回だ…)
ハリーはドローンの動きを目で追う。ドローンの相手側はこっちが回復することができることを分かった上で攻撃してくる。なら、全てを受け止めてやる。ハリーはドローンに向かい走り出す。ドローンは急いで機関銃を出す。だが、ドローンの視界にはハリーは居なくなっていた。
『どこに…』
その瞬間、ドローンは真っ二つに潰されていた。ハリーは空中に飛んでいた。そのまま拳だけでドローンを潰した。ハリーは回復促進剤を打つと約62秒、鬼にはならないが鬼と同様の筋力、跳躍力などの力を得る。
「第3部隊に連絡!ビル、屋上にドローンを操作している者がいる!麻酔弾で狙撃できますか?」
『こちら、第3部隊の伊藤です。既に鎮圧済みだ。幸せそうに寝てるよ』
「応援感謝する」
ハリーは無線を切るとその場に座り込む。海斗の方に向かって大声で叫ぶ。
「海斗ー!疲れたぁ!ちょっと寝るね!」
そういうとハリーはその場で倒れ込み眠り出す。
「さすが、ハリーくんですね。回復促進剤を打つことで鬼の力に近いものを引き出す。だが、打ったあとはしばらく睡眠を取らなければいけない」
「そうですよ。灰川さん…悪いけど下に行って続きをしますか」
海斗は手榴弾のピンを抜き、床を爆破させる。そのまま海斗と灰川は1階に降りる。そこには黒木と龍也が対峙していた。




