葛藤
お久しぶりです。
また空いてしまいました。
「赤城くんの心を潰せ?何が言いたいんだ?君」
日辻は目の前にいる得体の知れないものに恐怖を覚え始めた。生物の生存本能が言っている。逃げろと。日辻はボイドの方へ走り出す。ここは1度、海斗たちと合流した方がいい。
「逃げるなよ」
後ろにいたと思った男が目の前にいた。男は拳をふりかざす。日辻は殴りられる直後、腕だけを鬼化させガードする。だが、後ろに吹き飛ばされる。
「へぇー、やるねぇ。腕持っていけないんなんて」
ここは完全に鬼化して殴り合うか。いや、殴り合うのはまずいのでは?
「そんなことウジウジ考えたって仕方ない…」
戦おう。自分が人間であることを証明して。また、家族に会えることを期待するために。
日辻は体を鬼に変化させる。そこから体の一部が羊のようになっていく。
「無闇に鬼化しない方がいいぞ?俺はブレーキ効かねぇからな」
日辻は地面を蹴る。だが、数秒後下半身が地面の中に沈んでいた。まるで落とし穴のように。
「今、この時間は最大限能力を発揮できる。暗すぎて穴の場所が分からなかったらしいな」
「くっ!」
「俺の…いや俺たちと手を組めば両親に会わせてやるよ」
「…そんなことで引っかからないぞ?!」
「強気でいていいのか?俺たちはあんたの両親の場所を知ってる。殺せることだってできるだぜ?」
「…この外道が!」
「初めて言われたよ、その言葉。両親を殺してもいいならいいぜ。ボイドの方へ行きな」
「…っ!!」
日辻は考えた。どうすればいいのか。赤城と会話をして自分に対して嫌悪感を一切抱かなった赤城に…。だが、ずーと出てくる。両親との平和な日常が。
「…私はどうしたらいい…」
「さすがだよ、羊鬼…」
龍也はボイドの中にある病院にいた。毒鬼の事件で毒を盛られてしまった白葉が退院すると聞いたのだ。他の人達は直ぐに退院したが、白葉だけ体が元々弱いことから長く入院していた。
「よ!白葉!元気か!?」
「龍也くん!元気だよ!」
白葉は明るい声で龍也に言う。少し龍也と白葉が話していると男性が近づいてきた。その男性は龍也たちが聞いている隊服と似ているが色が赤になっている。
「あれは…黒木おじさん!」
白葉は黒木という男に対して手を振った。
黒木は気づくと少し小走りで近づいてくる。
「唯華、元気そうでよかった…隣の方は?」
「この人は同級生の龍也くんです!」
「龍也?」
「初めまして、ブルーチーム第1部隊所属の赤城龍也一等兵です」
さっきは龍也と名前を聞いても何も顔色を変えなかった。しかし、赤城と聞いた瞬間、目尻がピクピクとなりだす。
「…赤城…だと?…君のお父さんの名前は…?」
「え、父さんの名前はもも…」
「赤城くん!」
呼ばれた方を見ると黒いローブを身にまとった日辻がいた。昨日のようなおちゃらけ様子が一切ない。目の奥に悲しい何かが見える。
「日辻さん!こんにちは!どうしたんです?」
「…ごめん」
日辻はその瞬間、体が鬼に変貌する。黒木と龍也は身構える。龍也は白葉を自分の後ろに来るように腕を回す。
日辻はこちらに走り出す。黒木は腰にあったナイフを抜き、斬り掛かる。だが、ナイフは当たる感触はなく、ワタのようなものが残った。
「なに?!」
日辻は龍也に殴り掛かる。龍也は攻撃を防ぐ。
「…日辻さん、なんのつもりですか!?」
「私は…私の欲望のために動く…悪いけど私のために…」
龍也は首を捕まれ、吹き飛ばされる。黒木は後ろから斬り掛かるもまたワタに変わり、斬った感触がしない。日辻は回し蹴りを黒木の腹にあたる。黒木はよろめく。日辻はすかさず白葉を気絶させ、肩に担ぐ。
「待て、クソ野郎」
日辻は走り出し、近くにあった車を使い逃げ出す。黒木をハンドガンを取り出すが車は視界から無くなってしまった。
「…あの車の番号は覚えたか?」
「あの車は狩人の装甲車です…GPSがついてます…あなたも隊員でしょ?」
「…俺はお前らと違う。ブルーじゃない」
ボイドのブルーチームの司令室では龍也と黒木が呼び出されていた。犬島リーダーは少し目を丸くし驚いていた。
「まさか…日辻が…なぜ…」
「やはり鬼を協力者として位置づけるのは良くなかったのですよ。犬島リーダー」
「…ハリー軍曹、日辻奪った装甲車の位置は分かるか?」
「はい、旧曽根田駅付近にあります。しかし、ここから別の方法で移動した可能性があります」
「近くに彼女が逃げ込まそうなところがあるか探してくれ」
「了解です」
ハリーは急いでパソコンを操作して検索を始める。黒木は少し悪態をつきながら口を開ける。
「…我々レッドがこの件引き受けましょうか?あなたたちブルーでは情が入ってしまうのでは?」
「ここはレッドの管轄では無い。私たちブルーがケリをつける。それに貴様は可愛い従姉妹が捕まったことに腹を立てているのだろう?情に流されてるのは貴様の方だぞ童」
「灰川さんみたいな説教は要らねぇよ」
犬島リーダーと黒木がお互いを罵りあっている時に司令室に2人入ってきた。赤い隊服を来た少し猿のような顔つきの男と海斗隊長だった。
「猿山!」
「犬島!すまない!うちの隊員が!」
「猿山リーダー、俺たちで今回の事件を解決させてください」
「ダメだ!管轄はブルーだ!貴様らはボイドで待機だ!」
「…」
黒木は少し不服そうな顔をしていた。その時、ハリーが居場所を突き止めたのか犬島リーダーの方を振り向く。
「旧曽根田駅近くに廃墟となったビルがあります」
「よし、旧曽根田駅周辺に交通規制を出そう。第1部隊、第3部隊、第4部隊を出動させる。第1部隊はビルの中で制圧、第3部隊はバックアップ、第4部隊は連絡係として外で待機。5分で支度しろ!」
「了解!」
「龍也!海斗に連絡して!」
「分かりました!」
日辻は白葉を椅子に縛り、周りを警戒していた。自分のした事があまりにも大事のように感じた。ましてや自分の能力を無意識にっていた。
「あ、あの…」
「…なに?」
「ごめんなさい…もし、もしですけど…あなたは優しい人ですよね?」
白葉は涙目になりながら日辻に問いかける。日辻は少しポカンとした。この歳になって優しい人と言われたのは久々だった。
「私が優しい?…あなたを攫ったのに?」
「攫ったとしても…叔父さんと龍也くんを殺さなかった…あなたなら出来たはずなのに…」
「それは…合理性よ!!殺すより攫う方がこっちの要求を受け入れてくれるでしょ?!」
「そ、それじゃあ…要求ってなんですか?」
日辻は少し口を尖らせる。言いづらい。こんなことをいうのは恥ずかしいかもしれない。
「私の両親の保護です…私はある鬼たちと手を組んだ…でもやっぱり人間を皆殺しなんか出来ない…どうしたらいいの…」
扉がギィィと音を立てて開く。扉から見慣れた部隊が見えた。赤城が困惑しながら日辻の方を見る。
「白葉!…日辻さん…!」
「赤城…!」
少し裏設定
この世界の東京は福島と違ってインフラが少なからず動いています。しかし、鬼による被害は少なからずあります。狩人は名古屋から隊員を1部、東京に駐屯させています。本拠地と違うので正直装備は古かったりします…。それでも十分に戦えてます。




