涙
早いですけど毒鬼編もそろそろと終わりに差し掛かってます
紫色の液体が柴田の拳に蛇のように絡み合う。和紀は避け続けた。明らかに紫色の液体に触れたらまずいことが分かる。威吹も同じように避け続ける。周りでうめき声を上げている同級生たちがいる。できれば彼らを巻き込みたくない。
「久々だよぉこんなに楽しいの!あの日以来だ!」
「あの日?」
「そうさ!中学の時にいじめてたクズ共が泣きながら僕に助けを乞うんだ!それを1回了承したと思った次の瞬間に殺すんだ!希望から絶望へ落とすのがとても楽しかった!今それに近い!その時の快楽のようなものが迫ってきてるんだよ!」
和紀は柴田に対して一気に嫌悪感を抱いた。ここにいる柴田という鬼はここで倒さなければいけない。和紀は思いっきり拳を振る。柴田はそれを避けると和紀の顔に向かって横蹴りをくらわせる。
「おぉー僕って体やわらかーい」
「なめんなよ…柴田ァ!!」
和紀はすかさず右の拳を柴田の顔面に打ち込む。次に左の拳、右、左と交互に顔面に打ち込む。ジャブのように拳をたたきこむ。痛いはずだ。だが、柴田は笑顔のままだ。
「いいね!いいね!最高だよ!でも、酷いと思わないのか?毎月チョコをみんなに配っていた僕にひどいことして?」
「今っ!みんなに毒を盛ってるやつが何言ってんだよっ!」
柴田はケラケラと笑い、和紀の攻撃を避け出す。そのまま続けて蹴りを入れようとする。 だが、柴田は何かにあたってぐらつきだす。
「くっ…ああい??」
よく見ると柴田の目にナイフのようなものが刺さっていた。ナイフが飛んできた方を見ると汗をかいた龍也が最初の位置から離れてナイフやフォークが入った箱が置いてある机にまで移動していた。柴田は龍也の方向に気づき、今までとは違う殺意のようなものをぶつけていた。
「赤城ぃ!お前はァ僕があげたチョコを食べていたかァ!?」
「お前が…くれてたチョコ…中3の時から始めたやつだろ…?食べてたよ…美味かったよ…」
「嘘をつくなぁ!!!!」
柴田は倒れている同級生を踏みながら龍也の方に走っていく。龍也はよろよろしながら立ち上がる。右手にはフォークを強く握りしめている。だが、柴田が何かに気づき倒れている人を立ち上がらせる。立ち上がらせたのはあとから毒がまわって倒れた白葉だった。
「白葉…!」
「赤城!僕はお前が憎い!正義感を振りかざして僕を惨めにさせる!殺してやりたかったよ!中学の頃から!さぁ選べ!この女を殺されたくなかったらフォークを捨てろ!」
龍也はその場でフォークを捨てる。威吹と和紀は後ろから柴田を捕らえようとする。
「動くなよ、川島と氷河!お前らと違ってこの女は毒に耐性がなくなってる!いつでも殺せるぞ!」
「やめろ…」
「赤城…僕に近づけ…近づけ!!!!」
龍也は毒で麻痺している足を力を振り絞って歩み出す。1歩、2歩と。ある程度近づいた時柴田は龍也の腹に拳を入れる。その拳には柴田の毒がまとわりついていない。龍也は少しよろめく。
「僕は…お前がぐちゃぐちゃに泣き叫んで恐怖する姿を見たいんだよ…お前をなぁ!」
「…悪ぃけど…泣くのは…ごめんだ…よっ!」
龍也は左腕を柴田の顔に叩きつけた。柴田はよろめき、白葉を離す。龍也は急いで白葉をキャッチして床に倒れる。
「…!てめぇ!」
和紀と威吹は柴田に向かって走り出し、威吹は足をかけて転ばし、和紀は勢いよく拳を振るう。柴田は咳き込みだしその場に転げ出す。
「あああ…まだ…まだだぁ!」
柴田はまた口から紫色の液体を吐き出そうとする。その時、液体に少し赤みがかる。柴田の腹から赤い液体が流れ出す。
「は?なんで…」
振り向くと部屋の入口に狩人の隊員がいた。撃ったのは銃を構えていたハリーだった。そして、海斗、近藤もいた。
「川島!生きてるかぁ!!」
「近藤隊長!」
近藤は瞬きする速さで柴田に拳をたたきこむ。和紀の時とは違い、柴田は気を失いかける。
「…逃げなきゃ!」
「させるかよ」
海斗が蹴りを入れる。柴田はその場に倒れた。
・・・
柴田を鬼の力を押させる手錠をつけ、グリーンが解毒を始めた。幸いにも倒れていた人達の毒はそんなに強くないことがわかった。
「よくやったなァお前ら!」
「和紀が頑張って柴田を毒にやられた人達の方に行かせなかったのが死者を出さなくてすんだんよ」
「やめろよ…威吹も凄かったよ、ウエイトレスの奴をワンパンでダウンさせるんだもん」
「ガハハ!良かった良かった!」
近藤が大声で笑っている。龍也は白葉と陽菜の解毒が終わった後に自分も処置をしてもらおうと思った。龍也は何かまだ感じに何かを忘れている気がした。龍也たちが倒れた原因は飲み物に入っていた毒物だった。だが、和紀や威吹はその毒にやられなかった。でも、その後にも毒が二種類出た。それはどうなる?一緒なのか?別なのか?グリーンの隊員に話しかける。
「あの…毒をもう2種類使っていました」
「え!?それはどれだ?!」
「あそこに倒れているウエイトレスの付近とあの鬼が出した毒です…」
「その毒にかかった人は?」
「確か…」
龍也は急いで和紀と威吹の方を振り返る。振り向いた時には青白くなった和紀が倒れ始めていた。
「和紀!!」
龍也は和紀に向かって走り出そうとする。だが、力が入らずその場に倒れ込む。威吹が倒れた和紀に声をかけている。
「おい、和紀…和紀!?大丈夫かよ、おい!!」
近藤も駆け寄り和紀に呼びかける。
「川島、しっかりしろ!グリーン!誰か来てくれ!川島?川島!」
和紀の顔はどんどんと青白くなっていく。唇も青くなっていく。ケラケラと笑い声が聞こえる。手錠をかけられて足の裏でぱちぱちと拍手のようにしていた柴田だった。
「やっぱり僕の仮説は正しかった!遅発性の強力な毒を作れた!素晴らしい!!」
柴田は大声で笑い出す。ハリーが襟を掴み、壁に叩きつける。
「解毒方法は?!」
「無理だよ!教えても結局彼は死ぬ!これ以上ない最高傑作だ!やっぱり自分自身から作り出した毒は素晴らしいなぁ!」
龍也は夢では無いのかと思い始める。威吹は大粒の涙を流しながら和紀の名前を呼び続ける。近藤はグリーンの隊員に懇願するように声を出す。その中でも和紀の声がかすかに聞こえた。
「龍也…威吹…隊長…みんな…俺…楽しかっ…たよ…短かっ…たけど…。あー…最後に…母ちゃんと父ちゃんが…仲良く…ご飯…作ってる姿…見たかっ…たな…」
そこから和紀の口は二度と動かなかった。威吹は泣きながら柴田の方に足を動かそうとする。それを近藤が必死に止める。柴田はケラケラと笑いながらご満悦な顔をする。
怒声と泣き声、笑い声が入り交じった空間が疲れ切るまで続いた。
和紀の設定。
和紀はラーメン屋を営む父親と母親の間に産まれました。和紀はラーメン屋の跡を継ぐことを夢みていましたが、世界規模の不景気によってラーメン屋は赤字になり始めてしまいました。やんちゃをして怪我をして帰ってきた和紀を優しく叱り手当をし、頭を撫でてくれた母親と美味しいラーメンを作ってくれた父親に親孝行をしたいと思い、高校には行かず狩人に入隊しました。




