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エピローグ


 私の朝は一杯のコーヒーから始まる……。

 MIB東京本部異星人犯罪対策課の課長、それが私の肩書きだ。

 窓のサッシから覗く朝日が今年中老を迎えたばかりの目に染みる。

 歳はとりたくないものだ……。

 体が思うように動かなくなり現場を引退し管理職になり早3年。

 けたたましい異星人との抗争から一線を引き、穏やかな内職をしていると、あの騒々しい現場が懐かしく思う……


「おい、クソジジイ、どうなってやがる!!」


 事があると思っていた時期が私にもありました……。

 昨日現場勤務だったはずの本田と剛田が事務所のドアを蹴破り怒鳴り込んできた。

 コイツらのせいでやっと現場から離れたのに全く気が休まらない……。


「せめてドアは手で開けろ。」


 毎日毎日飽きもせず、出勤すれば私に怨みでもあるのかと思うくらい問題を持ってくる……。


「横浜のYCAT星人の件だよ!!」


「その件なら解決したのだろう。報告書は上がってきていたぞ。」


 人質も無傷で奪還。上々の結果だ。

 現在人質だった王子は検査のため医療施設に送られているが時期返還されるはず。

 仕事はできるんだよなぁ、こいつら……。


「馬鹿野郎!作戦やら装備やら敵に筒抜けだったんだよ!!危うくこっちがやられるとこだったんだぞ!」


 まさかの報告に飲んでいたコーヒーを落としそうになる。


「まさか、サクラが裏切ったのか!?」


「課長の検索履歴さらしま〜す。」


「やめろ!!」


 やはりこの人工知能は危険だと総務に報告書を出しておこう……。


「何でみんな私の事疑うんですか!」


「「「日頃の行い。」」」


「ひどい!…………うわぁ時間停止ものだ……。」


「やめろ!そういう事するから疑われるのだ貴様は!!」


「ジジイの性癖なんて興味ねえよ!とにかく漏洩箇所を特定して即刻対処しやがれ!!」


「ま、まて、本当に内部に裏切り者がいると言うのか?何かの勘違いではないのか?」


 MIBを裏切るという事がどういう事か職員ならば誰でもその意味は分かっているはずだ。

 そんな命知らずの馬鹿が出ないようにMIBの適性検査は何重にも行われている。

 正式採用されたとしても常に監視の目があり、少しでも不穏な動きをとれば記憶を消され放逐されるか最悪その場で射殺だ。

 そんなリスクを負ってまで裏切るものが出るとは……。


「少なくとも俺と本田はそう判断している。本部から持って行った装備も突撃タイミングもバレていた。内通者がいたと思って間違いない。」


「ネット経由は私の方でも負っていますので課長は怪しいものがいなかったか人伝で追ってください。」


「分かった。すぐに対応しよう。お前たち、ご苦労だった。夜勤明けで疲れているとは思うが報告書だけ提出してくれ。」


 私はこの非常事態を報告すべく電話を取った。

 何故こいつらはこうも厄介ごとを持って来るのか……。

 あー、私の穏やかな日常はまだ遠そうだ……。


△▲▽▼


「ごっさんこれからどうすんの?」


 俺は眠たい目を擦りながら缶コーヒーを開け中身を一気に流し込む。


「報告書だけ書いて帰宅だ。流石に牛との戦闘で体が動かん。」


 そう言ったごっさんはスーツのシャツを少し捲る。

 血の滲んだ包帯ぐるぐる巻きの胴体が痛々しく戦闘の激しさを物語っていた。


「俺もそうするか……。流石に出勤から34時間経ったし眠い……ふぁ……。」


 車内で少し寝たがそろそろ体も限界のようだ。

 

「人間は眠らないといけないの大変ですね。二人もこちら側にきますか?24時間働けますよ?」

「「お断りだ。」」


 何が悲しくて人間辞めて24時間働くAIにならなきゃならんのだ……。


 そろそろ馬鹿猫が起きてこっちに向かっているだろうし来たら引き継いで俺も帰るか……。

 密度の濃い一日だった……。

 眠気がピークの回らない頭で報告書に書く内容をまとめながら空になった缶をゴミ箱に放り投げる。

 缶は宙を舞い目標のゴミ箱に届かず乾いた音を立てて転がった。

 その姿をデスクに帰ろうとしていたゴリラとAIに見られ


「「ヘタクソ」」


 と煽られる。

 バツが悪い俺は転がった缶をゴミ箱に押し込み、馬鹿にした二人をしばきにデスクへと戻るのだった。

 

第一部完!

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