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M・I・B

202302月より初めて投稿します。

毎週金曜18時に更新かけれるように頑張ります。

 仕事帰りのサラリーマンやキャッチで溢れかえり、吐く息も白い真冬に肩を出した水商売の女が客引きをしている繁華街。

 深夜に差し掛かろうというのに店の明かりがまるで昼間のようにあたりを照している。

 クリスマスが終わり街中は新年を迎えるため至る所に門松やしめ縄が飾られ、気の早い店には2011年新春初売りとかかれたセール告知で賑わう。そんな騒がしい表通りから若者がひとり裏通りへと入っていく。

 歳は20半ばくらいであろうか。

 中肉中背の身体に黒のトレンチコートを羽織、その下に着ている黒のスーツのポケットに手を突っ込んでぼてぼてと歩く猫背からはやる気の無さが滲み出ていた。


 裏通りは表通りの喧騒からは考えられないほど静まり返り、灯はほとんど見られない。

 偶に見かけるいかにもな雰囲気の店から漏れる光で辛うじで足元が見える程度であった。


「突き当たりのお店です」


 スマートフォンから無機質な女性の声が聞こえてくる。


「回収班は待機済みか?」


 こちらが聞き返すと短くYESと反応があった。

 薄暗い路地の先に、これまたいかにも怪しげな風貌の飯店が見えてくる。


 店の前に掲げられているボロボロの赤い暖簾に目を凝らすと「中華料理」と掠れた文字が浮かび上がる事でより一層怪しさを際立たせていた。

 店内も薄暗く、部屋の角には蜘蛛の巣が張っており、清潔とは言い難いテーブル席に訳ありそうな客が数人座って安酒を煽っている。


 若い男が埃が着いた暖簾を手で払いながら店内に入ると一斉に視線が集まるのを感じた。


「瓶ビールをくれ、麒麟で頼む。」


 カウンターの破れた丸椅子に腰を下ろしながら厨房の隅に座っている店主に話しかけるが、新聞の隙間からちらりと一瞥しただけで反応はない。

 代わりに後ろの席の男がカチャリと音を立てて若い男の後頭部に拳銃を突きつけた。


「にいちゃん、悪いがこの店は一見さんはお断りなんだ

大人しく出て・・・」


 男が言い終わる前に拳銃を持った手を掴み床に組み伏せる。

ドンと音を立てて男の顔が床に着くなり、店内にいた他の客も一斉に立ち上がりこちらに近づいて来た。


「にいちゃん何者だ、ここでそんな真似してタダで帰れると思ってねえだろうな」


 声を掛けても無反応だった店主が読んでた新聞を畳みながら立ち上がる。

 いつの間にかその手はまるで大きなカマキリのような腕に変化し、若い男を切り裂かんとギチギチ音を立てて威嚇している。


「なに、不法滞在の異星人がやってる店があるってタレコミがあったもんでね、入国許可書と営業許可証見せてもらおうか?」


 平和的な解決を願うも大鎌に変化した店主の腕が的確に若い男の首を狙って振り下ろされる。

 組み伏せていた男の拘束を解き、間一髪でその一撃を避けるが鉄でできたカウンターが無惨にも切り裂かれる。

 当たっていたら無事では済まなかっただろうその一撃を放った店主は今や完全に巨大なカマキリの姿に変貌していた。


「カマキリ型異星人マンティクスと断定、敵対行動を確認しました、防衛のため銃器の使用が認められます。」


「了解、回収班に店を包囲を要請」


 スマートフォンからYESと短い返答。

 気づけば店内にいた客たちも巨大なカマキリに変貌し、自慢の鎌を振りかざしながら若い男を中心に円を描くよう取り囲んでいる。


「一応規則だから言うが、MIBだ、全員人体スーツを着用して入国書を提示しろ。指示に従わない場合不法滞在の異星人と見なし実力にて排除する。」


 忠告虚しくギラリと光る鎌が一斉に振り下ろされる。

 若い男は裂けたカウンターに飛び乗り、襲いくる鎌を避けながら素早く銃を取出すと、2発の銃弾を馬鹿でかいカマキリの頭に命中させる。

 緑色のグロイ汁を飛ばしながら先ほどまで店主の姿をしていたカマキリの頭が跡形もなく吹き飛んだ。


「もう一度言う、最後の通告だ、こうなりたくなかったら全員人体スーツを着けて入国書出せ!」



△▲▽▼



 1970年、人類は未知との遭遇を果たすこととなる。

 アメリカネバダ州、エリア51にて軍事用長距離通信の研究を行っていた職員達が発信元が不明な謎の通信電波を受信した。


 職員達はその未知なる信号に胸を踊らせ、寝る間も惜しみ内容の解析を行いそれが単なる自然現象では無く人類以外の知的生命体からのメッセージである事を突き止める。

 その時解析された信号「イマカライクヨ」これが地球人類と宇宙人との最初のコンタクトであった。


 信号解析から地球時間で二日後、突如空から飛来した宇宙船には4人の宇宙人が乗っていた。

 見た目は地球人に似ているが頭の形が細長く大きな目が特徴的な、いわゆるグレイと呼ばれるタイプの宇宙人である。


 グレイ型宇宙人はとても友好的で、地球が宇宙の中ではまだまだ発展途上であるが1969年、アポロ11号にて月面への着陸を果たした事で宇宙連邦の保護惑星条件を満たした事を告げに来たと言う。


 宇宙連邦とは、自分たちの星から他の惑星へと移動することができる科学力を持った高度知的生命体が存在する星が加入できる宇宙の組織であること。地球はまだ衛星の月にしか到達していないが自分たちの星を抜け宇宙に進出したことから、保護惑星として登録された事を教えてくれた。


 知的生命体が他の知的生命体に出会った場合高確率で他の星々を巻き込む戦いになるらしく、毎度そんなことをされてはたまったものでは無いため、宇宙進出した星は保護惑星として登録し、宇宙連邦が管理しているとのことだった。


 保護惑星はまだ未開の惑星であるため、他の悪意ある知的生命体が移り住んでしまうと一瞬で滅んでしまうこともあるらしく、正式に宇宙連邦に登録されるまでは宇宙連邦の定めた知的生命体以外は干渉することができない決まりだという。


 そこで先ずは友好的な種を送り込み、未開惑星のうちから少しずつ異星人に慣れさせ、本格的に宇宙進出した時に諍いを起こさないように教育することで宇宙の均衡を保っているらしい。

 そのため宇宙連邦が定めた幾人かの宇宙人を地球に受け入れる用意をして欲しいと告げ、グレイ型宇宙人は宇宙へと帰っていった。


 こうして地球人と宇宙人の交流が始まることとなる。

 しかし、突然宇宙人が襲来したことを世界に発表すれば、世界中でバケツをひっくり返した様なパニックになる事は想像に難くない。


 地球の過激派な連中がやって来た友好的な宇宙人に攻撃を仕掛け、宇宙連邦との関係を悪化させることも考えられる。そうなれば地球は宇宙連邦に敵対したとみなされ滅ぼされる可能性も考えられるし、そうでなくても保護惑星を取り消され悪質な異星人が地球に乗り込んできた時、連邦の保護を受けられ無いかもしれない。


 困ったエリア51職員は各国の重鎮にこの事を報告し、次の提案を行った。


 先ずはやって来る友好的宇宙人の存在は世界に発表せず秘密裏に受け入れること。


 彼らとの交流を行いながら、もしも彼らの存在が世間にバレそうになった時、来る日までその存在を守り、世界中がパニックに陥る事を防ぐこと。

 宇宙連邦加入までに異星人対策、対応を確立し、地球が宇宙進出した時に異星人とのクッション役になれる人材の育成。

 これらを行う世界機関の設立。

 最初は馬鹿馬鹿しいと笑っていた各国の重鎮達だったが数日後再びやって来た宇宙人達を見て満場一致で設立を承認することとなった。


 こうして地球外生命体対策局が設立された。

 彼らは身につけている衣服の色からこう呼ばれる事となる。



 M・I・B(メン・イン・ブラック)と。


次回は翌週金曜日18時になります。

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