2-12
「アイオス」
『はい。すべて聴こえていましたので、状況は把握しております』
サヴェロは準備を整える為、間借りしている倉庫にアイオスを取りに行った。電波を傍受していたアイオスは、先程のサヴェロ達のやり取りを聴いていた。
「悪い、成り行きでメリダも連れていく事になっちまった」
『メリダ様の性格です。そうなる事はわかっていました。ですが、我々がお守りすればよいだけの事。違いますか?』
「ああ、その通りだ」
サヴェロは自分の服に着替えると、アイオスを携えて甲板に向かう。
「なあ、アイオス。あの連中って何なんだ?」
『おそらくですが、私やメリダ様の様なカーボニアの生き残りである可能性が高いです』
「じゃあ、奴らも二千年生き続けていたのか?」
『どのように長い時間を経て今に至ったかはわかりませんが、あの戦艦はこの時代の技術で造られたものではありません。まず間違いなくカーボニアが関係しています』
「そうか。だけど、何者であれ、俺達の邪魔をするなら力ずくでもどいてもらうしかないな」
サヴェロはドアを開け、甲板に出る。そこには準備万端のメリダとビアンカの姿があった。
「待たせたな。行くぞ二人とも」
三人は副船長の用意した小型のボートに乗り込む。海は気味の悪い程静かで、波風はほぼ無く、サヴェロ達が乗り込んだボートにほとんど揺れは無かった。
エンジンをかけ、貨物船から離れ戦艦へと向かう一行。暗い海に浮かぶ不気味な戦艦に少しずつ近付いていく。サヴェロはあちらから何か仕掛けてくる可能性を考慮して、すぐに対応できるようにアイオスを構えていたが、ボートは何事もなく戦艦の横に着いた。
「こうして近付ていみると本当におっきいね。っていうか、これどうやって中に入るの?」
メリダはキョロキョロと辺りを見回し、戦艦に入る為の場所を探すが乗船できそうな場所は見当たらない。サヴェロやビアンカ、副船長も探すがそれらしい場所は見つからなかった。
「うーん。乗り込むときの事を考えてなかったな。仕方ない、どうにかしてこの船体を登って行くか」
「えー! めっちゃ高いよこの船……あっでも私にはこのロータスがあるから登れるか」
メリダには、凹凸の少ない壁なら張り付いて移動できるロータスがあるが、サヴェロとビアンカは自力で登らなければならない。「どうしよう」と頭をひねる三人に副船長はあるものを取り出す。
「おい、コイツを使え」
副船長が取りだしたのは長いロープであった。
「先に嬢ちゃんがこのロープを持って上まで登って、ロープをどこかに結び付けて下ろすんだ」
「そっか、それならサヴェロ達も登って来られるね」
その提案に賛成するメリダだが、
「ちょっと待った。メリダ一人を先に行かせるのは危険だ」とサヴェロは反対した。
「大丈夫だよ。ちょっと行ってロープ結んで下ろすだけだし」
「でも……」
「いーから! こんな所でウダウダやってるわけにいかないでしょ」
メリダはサヴェロの制止を無視すると、ロープを握り、湾曲した船体にロータスで張り付くと、そのままスーッと登って行く。
「あっ! ちょっ……」
あっという間にメリダは数十メートルの高さを登り切り、戦艦の甲板に降り立った。
甲板に登った後も警戒を怠らず、銃を構えて辺りを確認する。戦艦だけあってか、何門もの巨大な砲台が設置されてはいるが、そこに人の気配は無い。ある程度辺りを確認したメリダは近くにあった適当な手すりにロープを結び付けると、反対側を下に投げおろした。
「おっ、ロープが落ちてきた」
サヴェロが上を見上げると、メリダが大きく手を振って合図をしているのがわかった。サヴェロとビアンカは降りて来たロープを掴むとそれを手繰り寄せる様に船体を登って行く。
「お前ら気を付けて行けよ。俺はここで待ってるからな。必ず戻って来い」
「ああ、行ってくるよ」
「ありがとね。いってきます」
サヴェロとビアンカはスルスルとロープを使い船体を登って行く。途中、奇襲を受ける危険性も考慮して、アイオスに警戒させていたが、特に何事もなく上まで登り切った。
「おつかれー」
「はぁ、あんまり無茶するなよ。一人で戦えるって言ったって、相手はどんな奴なんだかわかんねぇんだ。これからは一人で勝手に行動するのは禁止、リーダー命令だ。わかったか?」
「はーい」
わかったかわかってないんだか、メリダは気の抜けた返事を返す。一方、サヴェロは敵地に踏み込んでいるという事を再認識しより一層警戒を強めると、船内への入口を目指した。
「隊長、メリダ様と思しき人物が船内に侵入しました。ただ、他に正体不明の者が二人着いてきています。いかがいたしますか?」
「メリダ様とその他二名を分断しろ。ただし、メリダ様には傷一つつけるな」
「はっ! して、他の二名は」
「その他の者は生死は問わん。この船から放り出せ」
「御意」
隊長の命令を聴いた部下達はサヴェロ達を向かい打つべく、各員持ち場へと移動していった。そして、隊長の男はどしっと椅子に座り、部下達の報告を待つのであった。
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