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「へっくしょん!」
大きなくしゃみをして、サヴェロは目を覚ました。
「寒っ」
体を震わせるサヴェロ。自分の身体を見てみると、被っていた毛布はメリダに剥ぎ取られ、代わりにビアンカがサヴェロの身体に抱き着いていた。
「どういう寝相だコイツ等」
二人の寝相の悪さに呆れながらも、体を起こす。
『おはようございます。マスター。お時間までまだ少しあります。それまでお休みになられては?』
アイオスにそう促されるが、サヴェロは立ち上がり準備を始める。
「おはようアイオス。朝食の準備があるから俺は先に行ってるよ。それより、時間になったらそこの寝相の悪い二人を起こしてやって」
『了解しました。それでは今日もお気をつけて』
サヴェロは手を振ってアイオスに応えると、寝室として使わせてもらっている倉庫を出る。外は日の出前でまだ薄暗い。そんな時間から厨房ではその日の食事の仕込みが始まっていた。
「おはようおやっさん」
「おお、来たか。早速で悪いが野菜のカットを頼む」
こうして二日目の船上での仕事が始まった。
サヴェロが働き始めてから少し経ち、二人もアイオスに起こされる。
ビアンカはすぐに目を覚まし支度をするが、案の定、メリダは中々起きず、結局ビアンカが半分寝ているメリダを引っ張って連れて行った。
この日の仕事も順調に進んでいった。
メリダとビアンカは一日目と同じようにその日の仕事をすぐに終わらせ手持ち無沙汰になる。そして、暇な二人は厨房にいるサヴェロの手伝いにやって来るが、調理では役に立たないので、サヴェロは二人に船員達の邪魔にならないように大人しくしていてくれと頼んだ。
それでも配膳の時には活躍してくれたので、サヴェロの仕事も少しは楽になった。
夕食も終わり、三人で食器の片付けをして二日目も無事終了する。
「ふぅ~今日も疲れた」
仕事が終わり軽く伸びをするサヴェロ。
「今日もお疲れさまでした~。ねぇ二人とも、さっき船長さんから言われたんだけどさ。私達シャワー浴びていいって」
三人が自分たちの部屋(倉庫)に戻る前、メリダが二人に向けて言う。
「水は貴重だから毎日はダメだけど、今日はいいって」
「そういえば、何日もシャワー浴びてなかったな。流石にちょっと匂うか」
(それに、料理作ってる奴が不潔なのもよくないよな)
サヴェロは自分の身体の匂いを嗅ぐ。肉体労働で汗をかく為、匂いがキツくなっていた。
「じゃあメリダ、一緒にシャワー浴びよう」
「ちょっと、ビアンカは男でしょ? サヴェロと入りなよ」
全く悪気なく、ナチュラルにそんな提案をするビアンカに、メリダは即却下する。
「私先にシャワー浴びるから二人は誰も入って来ないように見張っててよね。っていうか、アンタ達も覗かないでよ」
「覗かねえから早く入ってくれ」
呆れた様にサヴェロが言うや否や、アイオスが、
『ご安心くださいメリダ様。私が見張っていますので、心置きなく一日の汚れを落としてください』
と、サヴェロの言葉に被せる。
メリダは「お願いね」とだけ言い、シャワー室に入る。サヴェロとビアンカはシャワー室が空くまで外で待ちつつ見張りをしていた。
「お先~」
数分後、シャワーを浴びてスッキリしたメリダが出てくる。
「よし、じゃあサヴェロ、一緒に入ろ!」
「おお、いいけど、お前何でそんなにテンション高いんだ?」
妙にテンションの高いビアンカに困惑しながら狭いシャワー室に入っていく二人。シャワー室には浴槽等は無く、シャワーヘッドが三つ並んであるだけの質素なものだった。
脱衣室で服を脱ぎ、裸になったサヴェロとビアンカはシャワーを浴び始める。
「サヴェロ、背中流してあげる」
「え? ああ、頼む」
そう言って、ビアンカは石鹼を使って泡立てたタオルでサヴェロの背中をゴシゴシと擦っていく。終始笑顔で嬉しそうなビアンカにサヴェロが質問する。
「何でさっきからそんなに嬉しそうなんだ?」
「ん~だってこうやって誰かとお風呂に入るのって初めてだから。つい嬉しくなっちゃって。そりゃあ、まあ、僕だって男だから? どっちかっていえば、メリダと一緒の方が良かったけどね」
どっちかといえばという言葉が少し引っかかったが、サヴェロはあえてツッコミは入れず、黙ってビアンカの話を聴いていた。
「まだ二、三日しか経ってないけど、サヴェロ達に着いてきて本当に良かった。家に居たら知らない事ばかりだし、それに、何だかお兄ちゃんとお姉ちゃんができたみたいで楽しいよ」
ビアンカは満面の笑みでそう言い、サヴェロの背中を擦り続ける。一方、そんなビアンカの話を聴いて、サヴェロの表情はどこか浮かばなかった。
皇族に生まれたビアンカの生活がどんなものだったのか、今の話からサヴェロは何となく想像できたからだ。
「……ほら、次はビアンカの番。後ろ向けよ」
サヴェロは背中を洗い流すと、ビアンカに背中を向けさせた。石鹸で泡立てたタオルで、白く汚れの無い背中を擦っていく。
「……まあ、何だ……ビアンカには色々事情があるんだろうけど、俺達はもう仲間なんだから、困った時はいつでも言えよ。すぐに助けてやる」
その言葉を聴いたビアンカはパッと表情を明るくすると、振り返ってサヴェロに抱き着いた。
「ありがとうサヴェロ! 大好き!」
「おわっ! バカ! 抱き着くな!」
バタバタと大騒ぎしながらも、サヴェロとビアンカは身体の汚れを落としてシャワー室を出た。
「悪ぃメリダ。遅くなった……って、あれ?」
シャワー室を出ると、扉の横に座り込んで眠ってしまっているメリダの姿があった。
『お疲れの様で、すぐに眠ってしまいました』
「しょうがねえな」
サヴェロは眠っているメリダを背負うと、自分達の部屋(倉庫)に運んでいった。メリダを起こさないようにそっと移動していたが、熟睡しているメリダに起きる気配は全く無かった。
メリダを横にして、サヴェロとビアンカも横になる。二日目を終え、サヴェロとビアンカの疲労も溜まりだしたのか、二人もすぐに眠りに落ちていった。
ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。
大変勝手なのですが、次回から後進の頻度が遅れます。
いつも読んでくれている皆様には申し訳ありません。
気長に待っていただけると幸いです。




