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レジェンドオブカーボニア  作者: 天水覚理
第二章
35/48

2-7

 途中、アクシデントはあったものの、サヴェロ達は無事に貨物船へと運ばれ、暫くしてボォーっという汽笛が鳴り響くとコンテナが揺れ始めた。


 無事出港した事を確信したサヴェロ達三人は緊張が緩む。そして、気の抜けていた三人のいるコンテナの扉が開かれた。


「出ろお前達」


 白髭の男がサヴェロ達に命令する。息が詰まる思いをしていた三人はそう言われずともぎゅうぎゅう詰めのコンテナから這い出てきた。


「あ~身体が痛い」


「大変でしたね」


 メリダとビアンカはコンテナから出てくると伸びをする。サヴェロはコンテナの外に出ると自分達のいる船内をぐるりと見渡した。


 サヴェロ達が詰め込まれた倉庫内と同様、船内も薄暗く、他の荷物が積まれていた。


「ミルーアまでは約十日かかる」


 コンテナから出てきたばかりのサヴェロ達に白髭の男がそう告げる。


「十日かぁ、結構かかるね。向こうに着くまで何してようか?」


 メリダは船旅中、どうやって暇を潰そうか考える。すると、


「何を勘違いしている?」


 と、白髭の男が口を挟んだ。


「お前達には明日からミルーアに着くまでの間この船で働いてもらうぞ」


「はあ? 何でだよ」


 白髭の男の言葉にサヴェロは詰め寄る。


「お前達メシ代は持っているのか? タダメシはできないぞ」


「ちょっと待て! 俺達はちゃんと金を払っただろ?」


「ああ、情報屋から密航する為の運賃は貰っているが、そこにメシ代は含まれていない」


「なんだそれ! ふざけんな!」


 サヴェロ達は全財産の殆どを支払ってしまった為、手持ちは無い。


「別に何もしなくてもいいが、その代わりメシは出さないぞ。十日間飲まず食わずは辛いんじゃないか?」


 そう言って白髭の男は踵を返し貨物室から出ていく。そして、貨物室のドアに手を掛けると振り返り、


「そうそう、明日は朝五時から仕事だ。早く寝ろよ」


 そう言い残し出ていき、残されたサヴェロ達は呆然とするしかできなかった。


「マジか、クソッ! あのハゲ野郎、やってくれたな」


「どうするの? サヴェロ」


「追加料金を払おうにも、宝石は全部渡しちゃったからもう無いよ」


 メリダとビアンカは不安そうにサヴェロを見つめる。そんな二人を見てサヴェロは「はぁ」と諦めた様にため息を吐いた。


「仕方ない。言う通りにしよう。さすがに、十日間飲まず食わずは無理だ」


「うわ~朝早くから仕事かあ」


 メリダはそう言って項垂れる。


「もう寝ましょうか。今日は一日いろいろありましたし」


 ビアンカの提案に二人は頷くと寝るための準備をする。


 メリダが虚球から寝具を引っ張り出すと、それを見たビアンカが驚く。メリダはカーボニアの古代兵器である虚球を自慢気に披露していた。それを皮切りに、キャッキャッと騒ぎ出す二人。


「おい、もう寝るぞ」


 サヴェロはいつまでも駄弁っている二人を注意し、メリダとビアンカは「はーい」と大人しく従って、三人は眠りについた。


 三人とも疲れていたのか、ぐっすりと深い眠りにつく。一行の乗る船は多少揺れながらも、一路ミルーアを目指して月明かりが照らす大海原を進んでいった。



『マスター午前四時五十分です』


 翌日の朝。アイオスの声でサヴェロは目を覚ました。サヴェロは寝惚けまなこをこすり、伸びをすると、隣で熟睡している二人を起こす。


「おい、二人とも起きろ。時間だぞ」


 ビアンカはサヴェロに起こされると、スッと上体を起こす。


「おはよう。サヴェロ」


 ビアンカは目をパッチリと開き、ニコニコと笑顔で挨拶をする。


「おお、おはよう。何かテンション高いな。どうした?」


「いやあ、僕労働するのって初めてで、すっごく楽しみなの」


「そうか、まあ、一国の皇子様だもんな。でも無理はするなよ。この先十日もあるんだからな」


 ビアンカは「うん」と言って立ち上がると機嫌良く支度を整える。一方、毛布にくるまり爆睡しているメリダをサヴェロは揺すって起こす。


「おいメリダ。起きろ。時間だぞ」


「う~んまだもうちょっと……」


 メリダは起きるどころか、毛布を巻き込んで丸まってしまう。サヴェロは埒が明かないと思い、寝ているメリダから毛布をはぎ取った。


「ああ~何すんの」


「何すんのじゃねえ。早く起きろ」


 サヴェロは半分寝ているメリダを引っ張り、とっくに準備を終えているビアンカと共に白髭の男がいる艦橋へと向かった。


「遅いぞお前ら」


 艦橋に着くと、遅刻してきたサヴェロ達を白髭の男が睨みつける。


「船長、こいつらが『荷物』ですか?」


 そして、その他にも数名の船員の姿があった。皆ガラは悪いが、ガタイの良い大きな水夫達であった。


「へへ、可愛いのが二人もいるな」


「こいつは俺達の下の世話でもしてもらうかぁ?」


 下品な会話で盛り上がる船員達だったが、


「うるせぇ! 静かにしろ!」


 という白髭の男の一喝に皆黙り込む。


「おい、お前達は料理、掃除、力仕事どれが出来る?」


 白髭の男はサヴェロ達にそう質問してきた。その問いにサヴェロは


「料理、掃除、力仕事何でもできるよ。アンタらの下の世話は出来ないけどな」


 と、ぶっきらぼうに答える。そして、隣にいるビアンカは


「僕料理は出来ないなぁ」


 と答えると、


「あっ、私も料理は出来ない。無理」


 と、まるで他人事のようにメリダも答えた。それを聴いたサヴェロは、


「じゃあ、俺が料理するか。残りは二人で決めて」


 と提案する。この提案にビアンカとメリダは「そうだね、どうしようか」と何の不平不満も言わず話を勧めようとする。それを見ていた白髭の男は、


「おい、待て待て」


 と、止めに入った。


「男のお前が力仕事やらねえでどうするんだ?」


「え? だって、この二人料理出来ないって言ってんだから俺がやるしかねえじゃん」


 サヴェロはさも当然といった表情で答える。


「そっちの嬢ちゃん達はそれで良いのか? 力仕事は相当きついぞ?」


「うん。別にいいよ」


 メリダもあっけらかんとした表情でそう答える。


「じゃあ力仕事は僕がやるよ。メリダは女の子なんだから僕に任せて」


「さっすが皇子様。カッコいい~」


 ビアンカとメリダはワイワイとはしゃぎながら自分が担当する仕事を決める。一応、それぞれの担当は決まり、サヴェロが料理。ビアンカが船倉内の整理。メリダは船内の掃除をする事になった。この決定に、白髭の男は不安そうな表情を浮かべる。


「言っとくが、お前ら、ノルマがこなせねぇ奴にはメシは出さないからな。女子供だからって言い訳は聞かねえぞ」


「大丈夫大丈夫サボらずにちゃんとやるからさ、おじさん」


 メリダは白髭の男が言っている事をちゃんと理解していないのか、自信満々に答える。


「……ならいいが、それと俺の事は船長と呼べ」


「アイアイサー船長!」


 笑顔で元気よく返事をするメリダと呆れ気味の白髭の男もとい船長。その後、三人はそれぞれの持ち場に移動する為に担当の船員に付いて行く。


 メリダとビアンカが艦橋を出て行ったところで、サヴェロは残っていた船員に話しかけた。


「なあアンタ船長の次に偉い人?」


「ああ、そうだが、何だ? 小僧」


「ならアンタから他の船員に伝えておいて欲しいんだけど、あの二人にちょっかいを出さない方が良いぞ」


「ハッ、何だ? 自分の女の心配か?」


「いやいや、そうじゃなくて、アンタ達の心配をしてるんだよ」


「ああ? どういう意味だ?」


 最初はサヴェロの言葉を聴いて失笑していた船員だったが、今の言葉で怪訝な表情をする。


「言っておくけど、あの二人相当強いからな。ここに居る船員全員とあの二人が本気で戦ったら、あの二人は無傷で勝つぞ」


 それを聴いて船員の顔は益々険しくなる。


「そのガキの言っている事はあながち嘘じゃねぇ」


 横で二人の会話を聴いていた船長が口を挟む。


「情報屋の話じゃ、白髪のガキは一人でチンピラ二人をボコボコにしたらしい。まあ、ウチの船員には余計な事はするなとキツく言ってあるから大丈夫だとは思うが、念の為周知しておけ」


「わかりました船長」


 船員の男はそう言って艦橋を出て行く。


「ほら、お前も持ち場に行け」


「あいあいさー船長」


 サヴェロも気の抜けた返事をして、自分の持ち場である調理室へと向かって行った。

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