2-6
陽が落ち辺りが暗くなったころ。人気の無い、静まり返った港を等間隔に並んだ街灯が照らしている。そこに、隠れるように物陰から辺りを伺うサヴェロ達の姿があった。
「よし。誰もいない。行くぞ」
サヴェロは辺りの安全を確認すると、後ろにいたメリダとビアンカに付いてくるよう指示する。慎重に辺りを伺いながら、指定された倉庫に向かっていた。すると、
「あった。5番倉庫。ここだ」
サヴェロは壁に大きく5と書かれた倉庫に辿り着いた。
「あれ? ここでいいんだよね? 誰もいなくない?」
人気の無い倉庫前でメリダがキョロキョロと周りを見渡し、
「もしかして騙された?」
メリダがそう言った時だった。
「お待ちしておりましたよ」
突然、物陰から酒場にいた男が現れた。三人は少し驚き、男の方に向き直る。
「約束の場所はまだ先です。案内致しますから付いてきてください。……と、その前にお代の方を」
男はニヤつきながらそう言って手を揉む。サヴェロはビアンカに目配せし、ビアンカは頷くと懐から宝石を取り出しサヴェロに渡した。
「ほら、残りのお代だ」
サヴェロはそう言って男に宝石を差し出す。
「ありがとうございます。それでは……」
男は差し出された宝石に手を伸ばし、受け取ろうとする。しかし、その瞬間、サヴェロはもう片方の手で男の手首を素早く掴んだ。
「まだ完全にアンタの事を信じた訳じゃない。もし、俺達を騙そうとした時はアンタをボコボコにするからそのつもりでいろ」
サヴェロは男にそう言って釘を刺す。
「も、もちろんでさぁ。アタシはお代を貰ったらキッチリ仕事をしますよ」
その言葉を聴いたサヴェロは掴んでいた手を離すと、宝石を男に手渡した。
「確かに。では皆さんアタシに付いてきてください」
対価を受け取った男は嬉々として目的地へと歩いていく。サヴェロ達も男の後に付いていった。男の後に続き、倉庫街を進むと大きな倉庫の前に着いた。その倉庫の入口の前にはガラの悪い大男が立っている。
サヴェロ達を先導していた情報屋の男はその大男に近づき話し掛ける。サヴェロ達には聞こえないが、少し会話をするとすぐに戻って来た。
「さあ皆さん。後はあの男に付いていってください。話はついてますから」
そう言って情報屋の男は不気味な笑みを浮かべながら去って行った。サヴェロは情報屋の男に言われた通り入口の前に立つ大男の所に行く。
「お前らが客だな? 料金は貰っている。入れ」
大男はそう言うと入口のドアを開け、サヴェロ達は恐る恐る大男の横を通り過ぎて、倉庫の中へと入って行った。
倉庫の中は必要最低限の明かりが点いているだけなので薄暗い。そして、積み荷が倉庫一杯に置かれていた。
「積み荷はお前達だな?」
突然、暗闇から声を掛けられた。サヴェロ達は声が聞こえてきた方に素早く振り向く。すると、暗闇から白い髭をたくわえ帽子を被った中年の男が現れた。
「ああ、そうだ。話は聞いてると思うが、俺達をミルーアまでつれていってほしい」
サヴェロは現れた白髭の男にそう伝える。サヴェロの言葉を聴いた白髭の男はおもむろに、すぐ横にあったコンテナを開ける。
「この中に入って待て。お前達は積み荷として船に載せる。出航するまでは絶対に出るな。静かにしていろ」
そう言われ、サヴェロ達は互いに顔を見合わせる。
「グズグズするな。早く中に入れ」
急かしてくる白髭の男に従い、サヴェロ達は急いでコンテナの中へと入っていく。コンテナは外見の割に中は狭く三人がギリギリ入れる大きさであった。最後のビアンカが入ると箱の中はぎゅうぎゅう詰めになっていた。
「きつい~苦しい~」
「もうちょっと寄って。入れない」
「あっサヴェロ、どさくさに紛れて変なトコ触っちゃダメだかんね」
好き勝手言い放題のメリダとビアンカにげんなりするサヴェロ。
「何度も言うが、静かにしていろよ。密航がバレたらお前らだけじゃなく、俺達も危ない目に遭うんだからな」
白髭の男は騒がしいサヴェロ達を睨み付け警告すると、コンテナを閉じた。閉ざされたコンテナの中は真っ暗になり、すぐ横にいる仲間の顔も見えない。
暫くすると、サヴェロ達が入った箱がガタガタと揺れ始めた。船に載せる為に機械で運搬している為だ。急に動き出し、中で押された為、メリダが思わず「ぐえ」と声を出す。すぐに口を押さえるメリダだったが、
『大丈夫ですよメリダ様。多少の音ならば私の能力で防音できます』
と、サヴェロが持っていたアイオスがそう語り掛ける。
「ありがとアイオス」
「まあ、アイオスが音を遮断してくれても、船に乗るまでは騒がない方がいいだろう。二人ともまだ気は抜くなよ」
運搬されている箱の中で、サヴェロは二人に注意を促す――と、その時だった。
「おい! お前! ちょっと待て!」
サヴェロ達が入った箱を運搬していた白髭の男が呼び止められる。銃を装備した帝国兵だった。コンテナの中にいるサヴェロ達に緊張が走る。
「何ですか? 兵隊さん。私ゃあ今忙しいんですけどね」
白髭の男は惚けた様子で帝国兵に話し掛ける。
「こんな時間に荷積みか?」
「ええ、そうですよ。依頼主がメチャクチャな野郎でね、こっちの都合も考えずに仕事をふってくるんですよ」
白髭の男の言い分を聴いた帝国兵は、運ばれている積み荷に疑いの視線を送る。
「この積荷の中身はなんだ?」
この帝国兵の質問に、サヴェロの心臓はドクンと大きく脈打つ。
「中身ですか? 機械部品ですよ。高価な物だから慎重に扱えってお達しです」
「中身を確認させろ」
この言葉にサヴェロ達は戦闘を覚悟する。アイオスを握り、サヴェロは臨戦態勢に入っていた。
「ちょっとちょっと、兵隊さん話聞いてました? 急いでるんですよこっちは」
「これだけだ。これを確認したら引き上げる」
帝国兵は鋭い目つきで白髭の男を見る。断れば、持っている銃で撃たれそうな雰囲気に、白髭の男は「やれやれ」と諦めた様にフォークリフトを降りる。そして、運んでいた積み荷に手をかけ、開くとそこには、
「この小さい箱が機械部品か?」
開かれた積み荷には小さな箱がみっちりと詰められていた。
「ええ、そうですよ。どうします? この中も見ますか?」
「……いや、いい。邪魔をしたな」
帝国もリーピン国内ではあまり無茶を出来ない。帝国兵は不満げな表情を見せると、その場を去って行った。
『どうやら帝国兵は行ったみたいです』
外の状況を確認したアイオスがサヴェロ達にそう告げる。それを聴いた三人は「ふぅ」と胸を撫で下ろした。
「何か見つかんなかったね。どうして?」
メリダが疑問を口にすると、その答えは外から聞こえてきた。
「このコンテナの三分の一にはダミーの積荷を積んで、カムフラージュしている。こういう時の為にな」
白髭の男はコンテナを閉じると再びフォークリフトに乗り、運転を始めた。
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