2-5
「お困りの様ですねぇ、お三方」
サヴェロとメリダが、ビアンカを男と認識し、正気に戻ってすぐ、何者かに突然声を掛けられた。サヴェロが声のする方を向くと、そこには怪しげな男が一人。男はスキンヘッドで、薄汚い上着を羽織り、いやらしい笑みを浮かべている。
「何だアンタは?」
怪しげな風貌に、サヴェロは警戒しつつ質問する。
「ああ、これは失礼。アタシはここらで情報屋をやっている者でして、ちょっとお兄さん達の話を聞かせてもらいました」
サヴェロの隣で談笑していたメリダとビアンカも、その怪しげな男の存在に気が付き、視線を向ける。
「お兄さん達、密航したいんですってね? ならイイ話が――」
怪しげな男がそこまで話したところで、サヴェロは持っていたアイオスの切っ先を男の喉元に突き付ける。
「おい、俺らの話を聞いてたならさっき何があったか知ってて言ってるんだよな? また俺らをカモろうってのか?」
「ま、待ってくだせぇ、アタシをあんなチンピラ共と一緒にしないでほしいなぁ。アタシは本当に有益な情報を持ってるんですよ?」
男は刃を突きつけられても笑顔を崩さず、そう言い張る。その余裕に、サヴェロはただのチンピラじゃないと判断し、アイオスを下ろした。
「ふぅ~まあ確かに、今さっき騙された貴方達にこうやって話しかけるアタシも悪いんですが、こうして情報を売らなきゃあおまんまを食えねえ」
「……わかったよ。話は聞いてやる。それで、その情報ってのは何だ?」
サヴェロがそう言うと、男は嬉々としてサヴェロの隣のカウンター席に座った。
「へへっ、ありがとうございます。では早速ですが、お兄さん達は密航の手段を探してるんですよね? ミルーアまでの」
「ああ、そうだ。出来れば帝国に見つからないようにしたい」
「でしたらイイ話があるんですよぉ。アタシの知り合いに貨物船の船長がいまして、表向きは貨物を運んでるんですが、裏では貴方達の様に脛にキズのある連中の運搬もやってましてね」
男はニコニコと笑顔を浮かべ手を擦りながらそう話す。
「なるほど、アンタが間に立って話を通してくれるって訳か?」
「そのとーり。アタシがそいつに話を通せばお兄さん達を『荷物』として運んでもらえるって事です」
それを聴いて、サヴェロはメリダとビアンカの方を向く。ビアンカは先程の件があったせいか、あまりいい顔はしない。
「どうです? 悪い話じゃあないと思いますがね」
ヘラヘラと笑いながら提案を出す男。サヴェロは男の方に振り向くと同時に、再びアイオスを男の胸に突き付けた。
「そ、そんなぁ~信じてくださいよ~」
「もう一度訊く。その話は『本当』だろうな?」
「もちろんでさぁ~」
このスラム街で生き抜いてきた経験か、それともサヴェロが自分を殺さないと高をくくっているのか、あくまでも男は笑顔を崩さない。
一方、アイオスを突き付けているサヴェロは男に聞こえないようにボソボソとアイオスに話しかける。
「アイオス、こいつの言っている事は本当か?」
『はい。マスターの質問に答えた時、その心音に乱れはありませんでした。おそらく本当の事を言っているのでしょう』
サヴェロがアイオスを男に突き付けたのは脅しの為ではない。アイオスの能力で男の心臓のリズムを読み取り、嘘発見器の様に男の心理を把握したのだ。アイオスの答えを聴き、サヴェロは改めてアイオスを下ろす。
「わかった。アンタを信じよう」
「いいの? サヴェロ。まあ、騙された僕が言うのもアレだけど」
「とりあえず嘘は言ってないようだ。コイツの話に乗ってみよう」
サヴェロはビアンカとの話を終えると、男の方に向き直る。
「じゃあ、その情報をくれ」
「ええ、ええ、もちろんです。ですが、その前にお代の方を」
ニコニコと笑みを浮かべ、手を擦りながら男はそう言う。サヴェロは代金を要求されると、再びビアンカの方を向いた。
「ゴメン、ビアンカ。お金出してもらえる?」
「もちろん。なんたって僕はサヴェロ達の旅の仲間なんだから」
ビアンカはニッと笑うと、懐に隠していた大小二つの宝石を取り出す。
「情報屋さん。現金は無いけど、これでもいい?」
「ええ、ええ、大丈夫ですよぉ。それでは――」
男は情報料である宝石を受け取ろうと手を伸ばす。すると、ビアンカは持っていた宝石の内、小さい方の宝石を男の手のひらに落とした。
「あ、あの~これではちょっと足りませんなぁ。そっちの大きい方も貰わないと割に合いません」
「これは前金。貴方の情報が正しかったら後で残りも渡す」
そう言うと、ビアンカは懐から別の宝石を見せつける。対して、男は一瞬渋い顔を見せるも、すぐにニコリと笑顔を作った。
「やれやれ、お上手な方だ。いいでしょう。それでは今夜午後九時に港にある五番倉庫にいらしてください。倉庫に大きく『5』と書いてありますのですぐわかります」
「そこに行くだけでいいのか?」
「ええ、大丈夫です。アタシが話を通しておきますので。くれぐれもお代はお忘れなく。アタシがいなければ船には乗れませんよぉ?」
男はいやらしい笑みを浮かべながら酒場を出て行った。
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